症例4

問診

Dr:はじめまして。お年と仕事を伺います。
Pt:50歳です。高速道路で橋を架ける工事をしています。
Dr:今日はどうされましたか。
Pt:前から目が黄色いねって人にいわれていたのだけど、今日はみんなが顔色も青白いって。それにちょっと、頭がふらふらで、橋脚に立ったら危なそうなのです。外は風も強いのだけど・・・。普段なら、酒を引っ掛けて仕事に出れば体もピシッとすんだけど、今日はおっかしいんだな。酒?・・・20歳の頃から4合、飲まなきゃやれないですよこの仕事。でも、このふらつきはいつもの酔った感じとちょっと違うのだね。

身体所見

身長:160cm、体重:60kg。
体温:36.5℃、血圧:100/64mmHg、脈拍:100/分・整、呼吸:12/分。
眼瞼結膜:貧血を認める。球結膜:黄疸を認める。
胸部:心音は清、呼吸音に異常を認めない。
腹部:腹壁は膨隆して軟。肝を正中で3横指、右鎖骨中線で1横指触知する。肝の辺縁は鈍で、表面は小結節状、硬度は弾性硬、圧痛を認める。右季肋部に脾を1横指触知するが、腎は触知しない。打診にて波動を認める。
四肢:両側下腿に著明な浮腫を認める。チアノーゼは認めない。
神経学的検査:異常を認めない。

検査成績


尿所見:pH5、蛋白−、糖+、ケトン体+、ビリルビン+、ウロビリノーゲン+。

血液所見:赤血球303万、Hb 11.5 g/dl、Ht 34%、白血球9,500、血小板10万。

血清生化学所見:Na 132 mEq/L、K 4.5 mEq/L、BUN 60 mg/dl、Cr 1.2 mg/dl。総蛋白6.5g/dl、アルブミン2.5g/dl、総ビリルビン3.5 mg/dl、直接ビリルビン2.5 mg/dl、AST 350 IU/L(基準40以下)、ALT 250 IU/L(基準45以下)、アミラーゼ80単位(基準180以下)、アルカリフォスファターゼ500単位(基準260以下)、γ−GTP 360単位(基準8〜50)、TTT 15単位(基準0.6〜9.4)、ZTT 18単位(基準4.0〜14.5)、コリンエステラーゼ350単位(基準400〜800)、空腹時血糖値 250mg/dl、総コレステロール260mg/dl、中性脂肪750mg/dl、プロトロンビン時間 50%。

IgM型HA抗体 陰性、HBs抗原 陰性、HCV抗体 陰性。

腹部X線撮影

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上部消化管内視鏡検査

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腹部超音波検査

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問題

1.会話の中から問題点をリストアップし、問診で確認すべきことはなんでしょう。

2.身体所見をどう解釈しますか。
1)血圧:100/64mmHg、脈拍:100/分:

2)肝の触診所見:

3)肝の圧痛:

3.肝に圧痛を認めた時に考える疾患は何でしょう。

4. 血液検査所見をどう理解したらいいのでしょう。
貧血の原因:@                    A                   

好中球増多の理由:@                    A                   

5.この症例で低アルブミン血症をきたす原因はどう推定されるでしょう。

6.中性脂肪はなぜ高いのでしょう。

7.高血糖は今後どのように推移すると考えられますか(ちょっと難しい)

8.この症例の肝組織生検所見はどうなっているのでしょう。(できれば図示)

9.腹水について説明しましょう。
1)身体所見は?

2)画像診断では・・・腹部X線撮影および腹部超音波検査所見は?

3)腹水貯留のメカニズムはどうなっているんでしょう?

4)治療はどうしますか?

10. 内視鏡検査について
1)内視鏡検査で何がわかったのでしょう。

2)どのような処置を行ったのでしょう。

11. この症例で・・・緊急に是正する必要があるデータはどれでしょう。

    @Hb 11.5 g/dl

    A血小板10万

    BNa 132 mEq/L

    Cアルブミン2.5 g/dl

    D空腹時血糖値 250 mg/dl

 

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        メール: hiromu@kanazawa-med.ac.jp

症例4解説