症例6

問診

Dr:はじめまして。お年と仕事を伺います。
Pt: 60歳です。自分でやる気を引き出す介護用ベッドの販売をしています。
Dr:ところで今日はどうされましたか。
Pt:先週くらいから食後に、右のお腹が刺しこむように痛くなって、3日前からずっと痛いのよ・・・昨日からは熱も出るし、これは普通じゃないと思って来ました。実は前の主人と去年離婚したのだけど、お母様の介護の問題でちょっとした行き違いが生じて・・・。こう見えても結婚前は細い体で有名だったのに、結婚してから体重が20kg増えて、しかも離婚でしょう。やけ食いしてあっという間に30kg増えてしまいました。

身体所見

身長:160cm、体重:75kg。
体温:38.0℃、血圧:130/74mmHg、脈拍:74/分・整、呼吸:14/分。
眼瞼結膜:貧血を認めない。球結膜:黄疸を認める。
胸部:心音は清、呼吸音に異常を認めない。
腹部:腹壁は平坦で、右季肋部に圧痛と抵抗を認める。右季肋部に振り子様に移動する臓器を触知する。肝・脾・腎は触知しない。腹水の貯留は認めない。
四肢:浮腫・チアノーゼは認めない。
神経学的検査:異常を認めない。

検査成績

尿所見:pH5、蛋白−、糖−、ケトン体−、ビリルビン+、ウロビリノーゲン±。

血液所見:赤血球400万、Hb 12.5 g/dl、Ht 39%、白血球15,500 (好中球95%)、血小板10万。

血清生化学所見:Na 142 mEq/L、K 4.5 mEq/L、BUN 18 mg/dl、Cr 1.0 mg/dl。総蛋白7.0g/dl、アルブミン4.0g/dl、総ビリルビン10.5 mg/dl、直接ビリルビン8.5 mg/dl、AST 100 IU/L(基準40以下)、ALT 150 IU/L(基準45以下)、アミラーゼ500単位(基準180以下)、アルカリフォスファターゼ500単位(基準260以下)、γ−GTP 360単位(基準8〜50)、TTT 5.0単位(基準0.6〜9.4)、ZTT 13単位(基準4.0〜14.5)、コリンエステラーゼ400単位(基準400〜800)、総コレステロール240mg/dl、中性脂肪150mg/dl。

プロトロンビン時間 50%、活性化部分トロンボプラスチン時間50%、血漿フィブリノーゲン80 mg/dl(基準170〜426)、血清FDP 35μg/ml(基準2〜8)。

赤沈:10mm/時間、CRP:50mg/dl(基準0.5以下)。
IgM型HA抗体 陰性、HBs抗原 陰性、HCV抗体 陰性。

腹部超音波検査

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問題

1.会話の中から問題点をリストアップし、業界用語で表現しましょう。

2.身体所見について
@振り子様に移動する臓器はなんでしょう。

A右季肋部痛、発熱、黄疸から考える徴候はなんでしょう。

3.問診と身体所見をとった時点で行わなければならない検査はなんでしょう。

4.腹部超音波検査の所見を説明しましょう。

5.血液検査所見をどう理解したらいいのでしょう。
@黄疸のタイプは?

A赤沈亢進とCRP陽性の違いは?

Bこの症例で赤沈とCRPに乖離がある理由はなんでしょう。

6.この症例で高アミラーゼ血症をきたす原因・機序はどう推定されるでしょう。

7.血液凝固検査から考えられる病態を説明しなさい。

8.この症例の治療方針について説明しなさい。

 

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