お知らせ

金沢医科大学 教えて!ドクター 第4回

 

腹七分目で若返ろう  

カロリー制限が長寿遺伝子活性化 

 

腹七分目の食生活を続ければ健康寿命を延ばせることが分かってきました。日々の摂取カロリーを25%ほど減らすと、眠っていたサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)が活性化し、さまざまな老化要因を抑えてくれるのです。先駆的に長寿遺伝子の研究に取り組む古家大祐金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学教授に夢の若返り法を教えていただきました。

 

【今月の回答者】

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古家 大祐(こや だいすけ)

金沢医科大学糖尿病・内分泌内科学教授
(金沢医科大学病院内分泌・代謝科教授・科長)


健康寿命を延ばす夢の遺伝子

「長寿遺伝子」「若返り遺伝子」とも呼ばれるサーチュイン遺伝子は2000年に米国・マサチューセッツ工科大のレオナルド・ガランテ教授が酵母の中から発見しました。その後の研究で、ヒトなら誰でも持っていることが分かっています。

この遺伝子が活性化すると、細胞内でエネルギー源を作り出す小器官「ミトコンドリア」が増えるとともに、細胞内の異常なたんぱく質や古くなったミトコンドリアが除去されて、新しく生まれ変わる「オートファジー(自食作用)」という機構が働きます。工場の機械装置を更新するのと同じように細胞を若返らせるのです。

それに伴い、細胞を傷つける活性酸素の除去、細胞の修復、脂肪の燃焼、シミやシワの防止、動脈硬化や糖尿病の予防、さらには認知症、難聴などの予防といったさまざまな好影響がもたらされます。人体の健康度を測るバロメーターは70~100項目あるのですが、そのほとんどを改善するともいわれています。

まさに体を若返らせ、健康寿命を延ばす夢の遺伝子というわけです。

 

25%制限3週間で活性化を実証

ところが、長寿遺伝子はいつも働いてくれるわけではありません。通常は眠っていて、ある条件が満たされたときにだけスイッチがオンになるのです。

その条件とは空腹です。人類の歴史は飢餓との戦いでした。飢餓状態がしばらく続いても生命を保つ装置として長寿遺伝子が働く生体メカニズムが備わってきたのだと考えられています。

空腹、つまりカロリー摂取の制限が長寿遺伝子を活性化させることは、さまざまな研究によって実証されてきました。

私たちの研究グループも、カロリー制限した生後24カ月の高齢マウスが生後3カ月と同じ腎臓の機能や組織を保っていることを確かめました。2011年には人間でもカロリー制限が長寿遺伝子を活性化することを世界に先駆けて立証しました。

この研究では、30代から60代の男性4人に1日に必要なエネルギー量からカロリーを25%制限した食生活を7週間続けてもらい、長寿遺伝子の活動状況を調べました。その結果、わずか3週間でも長寿遺伝子が作るサーチュイン酵素の量が1・4~4・6倍に増加し、7週間後では4・2~10倍も増加することが裏付けられたのです。実験の模様はNHKスペシャル「あなたの寿命は延ばせる~発見!長寿遺伝子」でも紹介され、大きな反響を呼びました。

 

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3週間のカロリー制限によるミトコンドリア数の変化(63歳の男性の場合)

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実験前(左)に比べミトコンドリア(黄色で囲まれた部分)が31%増加


間食や夜食は×。運動も効果あり

1日の中でも長寿遺伝子が活性化したり、眠ったりするサイクルがあると考えられています。食事をすると血糖の上昇を抑えるためにインスリンが分泌されますが、インスリンが働くと長寿遺伝子や自食作用の機構がシャットダウンされることも分かってきました。

つまり、小腹がすいたときのおやつは、せっかく長寿遺伝子のスイッチが入ろうとしているのを妨げる行為ということになります。特に缶コーヒー、ケーキ、アメ、果物などに含まれる単純糖質は、インスリンの急激な分泌を促しますので注意しましょう。食間が長い睡眠中は最も長寿遺伝子が働きやすい時間帯ですので、夜食は最悪のパターンと言えます。基本的に飽食は長寿遺伝子の敵だと考えるべきなのです。

運動をすると長寿遺伝子が活性化することも明らかになっています。米国の研究では、食事制限でカロリーを12・5%カットし、運動で消費カロリーを12・5%増やすと、カロリーを25%制限したのと同じ効果があることが確かめられています。

私たちの研究では少なくとも25%のカロリー制限で効果があることが裏付けられましたが、どの程度のカロリー制限がベストなのか、高齢者にも適応するのかなどは、これからの研究課題です。

 

注目されるレスベラトロール

長寿遺伝子の発見以来、この領域の研究・開発は世界的に大きな関心を集めています。欧米のベンチャー企業では長寿遺伝子を活性化させる創薬研究が活発に行われており、治験段階に入っている例もあるようです。

また、赤ブドウの皮や落花生の渋皮に含まれるレスベラトロールが、カロリー制限をしなくても長寿遺伝子を活性化するのではないかと考えられており、すでに多くのサプリメントが商品化されています。私たちの研究グループでもレスベラトロールと長寿遺伝子とのかかわりを確かめる臨床研究を進めています。最近発表された研究論文と照らし合わせると、「効果あり」と言ってよさそうです。

ただし、飽食生活を続けたままサプリメントを飲んで効果があるのか、多量摂取に副作用はないのかなど、検証が必要な面も多々あります。個人的にはサプリメントに頼りすぎるのではなく、一定の食事制限や運動と併用することが健康長寿を保つ上で大切だろうと考えています。

今年2月に私の著書『老けない人は腹七分め~若返り遺伝子(サーチュイン)が活性化する食べ方』が刊行されましたので、興味がある方はご一読ください。

 

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古家大祐著
『老けない人は腹七分め』
(マガジンハウス)

 

長寿遺伝子を働かせる食生活◉中川 明彦(金沢医科大学病院栄養部課長)

 
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満腹感得たいなら野菜を増やそう
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長寿遺伝子を活性化するには食生活のカロリー制限が必要です。やみくもにカロリーを減らすのではなく、必要なエネルギー量の25%程度をカットするようにしましょう。

推定エネルギー必要量は基礎代謝量(kcal/日)×身体活動レベルで求められます。基礎代謝量は厚生労働省から基準が示されています。例えば、体重55キロの40代女性で、身体活動レベルが「ふつう」であれば、21・7×55×1・75=2089 kcalが推定エネルギー必要量であり、その75%の1567kcalが長寿遺伝子を活性化するエネルギー量になります。計算が面倒なら、働き盛りの男性なら1800 kcal、女性なら1500 kcalを目安にすればよいでしょう。

25%もカロリーを制限すると満腹感を得られにくく、続けるのはかなりつらいかもしれません。そうした場合は野菜を増やすのがコツです。満腹感を得やすいだけでなく、ビタミン、ミネラル、食物繊維が摂取でき、栄養バランス面でも問題はありません。炭水化物を増やすのは最悪の選択です。

金沢医科大学病院の病院食は1日当たりの野菜摂取量を450~500グラムと多くしているのが特徴です。最近はデジカメなどで病院食を撮影して、退院後の食生活の参考になさっている患者さんが多くなってきています。病院食をベースにバランスの良いカロリー制限食に努めてください。

 

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月刊北國アクタス2012年7月号掲載】

金沢医科大学病院

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