お知らせ

金沢医科大学 教えて!ドクター 第14回


良質な睡眠を取るには

静かな夜を楽しんでください

 

 春は進学や就職、転勤など生活環境の変化で、緊張やストレスが高くなりがちです。不眠を訴える人も多く、良質な睡眠が取れないために、イライラが募ったり、うっかりミスの原因になったりすることが珍しくありません。どうすれば心地よい睡眠が取れるのか、金沢医科大学病院睡眠医学センター副センター長の堀有行教授にうかがいました。

 

【今月の回答者】


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堀 有行(ほり ありゆき)    

金沢医科大学医学教育学教授
金沢医科大学病院睡眠医学センター副センター長


大人に限らず子どもたちにも、睡眠にかかわる悩みが増えています。「眠りが浅くて体の疲れが残る」「寝つきが悪く、昼間眠くてたまらない」など、人によって悩みはさまざまです。

睡眠の問題、すなわち「眠れない」と「眠い」には社会の環境変化が大きく影響しています。24時間営業や昼夜の交替制勤務などが一般的となり、街や家庭には音や光があふれ、人間の体内リズムが乱れがちです。こうなると、睡眠リズムも崩れてしまい、その結果、「夜眠れない」とか「昼間眠い」などの症状が生じます。

当病院を受診される患者さんで、近年、多くなっているのが10代~20代前半の若者です。日中、集中力の低下や猛烈な眠気に襲われるからと来院され、調べてみると深夜までゲームやインターネットに熱中し、睡眠時間の不足が原因というケースがよく見られます。40代~50代の中高年も以前に比べて増えています。就労時間の不規則化や非正規雇用の増加など、厳しくなっている労働条件を反映したものと思われます。


4つに分かれる不眠症のタイプ

睡眠障害で一番多いのが不眠症で、長期間続くと倦怠感や意欲低下、集中力低下、抑うつ、頭痛、めまい、食欲不振などの体調不良が現れます。この不眠症はタイプによって、「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」の4つに分けられます。

 「入眠障害」は、布団に入ってから眠りにつくのに30分~1時間以上かかり、それを苦痛と感じる状態です。「中途覚醒」は、夜中に何度も目がさめ、その後、なかなか寝つけない状態です。「早朝覚醒」は、起床予定時刻より早く目がさめてしまう状態です。「熟眠障害」は、眠りが浅く、睡眠時間は十分でもぐっすり眠った満足感が得られない状態です。

原因はさまざまです。生活習慣の乱れのほかに、ストレスや体の病気、心の病気、薬や刺激物、加齢の進行などがあります。特に、熟眠障害を引き起こす睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動異常症、早朝覚醒が見られるうつ病などは、専門施設での検査と診断が必要で、通常の睡眠薬では治りません。

一方、眠りが浅く感じられても、昼間の仕事や生活に支障がなければ、不眠症と考えなくてもよいでしょう。また、健康な人でも高齢になると中途覚醒や早朝覚醒が増えます。睡眠時間が短いことや目覚め回数に過敏になりすぎないことが大切です。

 

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同じ時間帯に眠り体内時計を整える      

不眠の背後に心身の病気が潜んでいない場合、生活習慣を見直し整えることで症状は随分と改善できます。基本は、就寝と起床時刻を一定にし、体内時計のリズムを崩さないようにすることです。そのためには、休日前の夜更かしや休日の寝坊、昼寝のしすぎは避けたほうが賢明で、夜更かしはせいぜい週1晩にとどめてください。

太陽光を浴びることも体内時計の調整に効果的です。人間は光を浴びてから14時間目以降に眠気が生じるため、早朝に浴びると寝つく時間が早くなり、朝も早く起きられるようになります。逆に夜、強い照明を浴びすぎると体内時計が遅れて入眠が遅くなり、早起きがつらくなります。

適度な運動も心地よい眠りを生み出してくれます。午前中に軽く汗ばむ程度の運動を習慣化するとよいでしょう。激しい運動は刺激となって寝つきを悪くすることがあります。

明るい照明、テレビや携帯端末は、脳に「起きろ」との指令を与えます。眠る1時間前にはテレビを消し、静かな音楽を楽しんでください。子どもたちに「早く寝なさい」と怒鳴るより、節電を理由に家中の明かりを落とし、大人も静かな夜を楽しんでください。きっと目覚めの気分の良さを体験できると思います。

 

体調不良の陰に生体リズムの乱れ


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上のグラフは、睡眠障害を訴えた患者さんの睡眠日誌。黒く塗りつぶした部分が睡眠で、○は食事、×は服薬を示しています。生体時計の周期と自然界のリズムが同調できなくなり、眠る時刻と起きる時刻が次第に遅れ、毎日1~2時間ずつずれています。その結果、周期的に昼夜が逆転して体調不良となり、仕事や就学など社会生活にも大きな支障が生じます。

ここまでのリズムのずれでなくとも、リズム形成に重要な幼小児期、思春期にゲームやインターネットで明るい光を夜遅くまで浴びたり、大人でも交代勤務で生活リズムが強制的に混乱させられる状況が長期間続くと、リズムは容易に崩れるので要注意です。

下のグラフは治療後の睡眠日誌で、リズムを取り戻して規則正しい生活が送れるようになりました。

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睡眠日誌をもとに生活習慣の改善をアドバイスする堀教授

 

快眠のポイントは深い〝ノンレム睡眠〟   

人に必要な睡眠時間は、年とともに短くなります。ですから高齢者が無理に長時間眠ろうとすると、かえって睡眠の質を低下させることがあるので注意しましょう。また、眠りには「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」があります。眠りに落ちた直後の約3時間の間に深いノンレム睡眠が集中的に発生し、体の疲れをほぐしてくれます。

一方で、休日に普段の寝不足を解消しようと、午前中いっぱい眠っても、明け方以降の睡眠は自律神経が活発になるレム睡眠が多くなり、寝汗を書いたり、夢ばかり見たりして、「寝疲れる」という現象が生じやすくなります。

ですから良質な睡眠を得るためには、深いノンレム睡眠が現れやすい入眠時がポイントで、さらに、体内のリズムを考えると、入眠する時刻と起床する時刻をできるだけ決めておくことが大切です。

 

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睡眠薬の服用は医師の指導受け適切に   

当病院の睡眠医学センターでは、必要に応じて患者さんに睡眠日誌をつけてもらいます。これは、毎日の起床・就寝時間や食事、入浴時間などを記録するためのもので、日々の生活リズムを把握します。合わせて、アクチグラフと呼ぶ小型の加速度センサーを手首などに取り付け、連続的に活動量を記録します。これにより、睡眠と覚醒のリズムを客観的に調べることができます。

この2つを3~4週間続けることで、原因を推定できることが多いです。病気が睡眠障害を引き起こしているケースは全体の約5%にとどまっています。つまり、大半は不規則な就寝時間や慢性的な睡眠不足などが原因となっており、生活習慣の見直しなどの指導を行います。

最後に睡眠薬について紹介しておきます。睡眠薬は、「一度使い始めると手放せなくなり、副作用が怖い」との先入観が根強くあります。確かに、以前の睡眠薬にはそういう面もありましたが、現在は副作用の少ない薬が普及しています。不安や緊張、興奮を和らげ、自然に近い眠りに導いてくれるので、安心して使うことができます。ただし、使用に当たっては、医師の指導をしっかり受けてください。

近年、市販の睡眠改善薬が店頭で手に入りますが、お薬に関してはやはり医師の指導のもとで適切に行うよう気をつけてください。


 

【月刊北國アクタス2013年5月号掲載】


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