腎・尿路結石による疼痛発生のメカニズムとその緊急除痛法
金沢医科大学 泌尿器科 鈴木孝治
はじめに

腎疝痛の発作時には、突然の差し込むような激痛に患者は冷汗をともなって顔面蒼白となり患側を下にしてうずくまる。体動により増強し、安静時軽減することもある。発作は数分間から数時間持続し悪心・嘔吐、腹部膨満など消化器症状を訴える場合もあり、しばしば救急外来を受診し、泌尿器科医以外の医師により治療を受ける機会も多い。この際同様の症状を呈する他疾患との鑑別を早急に行う必要があり、腹部の注意深い診察の後、検尿、KUB、超音波検査を実施する。既往歴も重要で、再発性結石の場合は患者自身が疝痛発作であることを医師に告げる場合もある。体外衝撃波結石治療(SWL)後には20〜30%に疝痛を見るとされている。尿酸やシスチンを主成分とする結石の場合にはKUBでは写らないため注意する。この際超音波検査が有効であり、水腎症が認められれば尿路の通過障害と考えられる。ただし水腎症の時に腎盂破裂および尿溢流が合併すれば超音波検査で発見は困難である。造影剤を用いたCT検査で判明する。

疝痛発生のメカニズム

腎結石では尿管・膀胱・尿道に放散痛をしばしば認める。尿管結石では疝痛のほかに結石の存在部位に応じて自発痛や圧痛がある。また、尿管結石の下降にともない痛みの部位は下降し、精管交叉部では陰嚢内容の痛みを訴えることがある。尿管口付近では血尿、排尿痛、頻尿など急性膀胱炎と同様な症状を引き起こす。

疝痛は1)上部尿路の急激な閉塞により、腎盂内圧が上昇し、壁の緊張が増加するため、および2)嵌頓した結石による尿管の痙攣性収縮によって引き起こされるとされている。この腎盂内圧の上昇はプロスタグランディン(PG)の合成・放出を促進し、腎血流量の増加、糸球体毛細管内圧の上昇をみるほか、ADH分泌を抑制し尿量が増加することも関与して、さらに腎盂内圧を上昇させる。緊急除痛にあたりPG阻害剤や鎮痙剤を使用する理論的根拠となる。

緊急除痛法

1)薬物療法 
a) 鎮痛剤
非ステロイド坑炎症剤(NSAID)がよく使用される。PG合成を抑制することから理論的にも有効な薬剤である。indimethcin(インダシンメ)、diclofenac sodium(ボルタレンメ)の座剤や内服薬が有効である。鎮痛と同時に尿管の浮腫や炎症反応を抑制することから効果が期待できる。通常座剤として5〜6時間毎に投与する。非麻薬性鎮痛剤ではpentazocine(ソセゴンメ)15mg筋注が使用されるが、同時にhydroxyzine pamoate(アタラックスPメ)25〜50mg筋注のような精神安定薬も投与すると効果が増強される。麻薬は上記の薬剤が無効の場合にpethidine hydrochloride(オピスタンメ)などが使用されるが、ほとんど使用しないですむ。

b)鎮痙剤
scopolamine butylbromide(ブスコパンメ)やfloprpione(コスパノンメ)の筋注や静注も行なわれるが、発作時には効果は薄い。痛みが緩和された状態で外来観察中には尿管の平滑筋に対して的坑攣縮作用をもつtriquizium bromide(チアトンメ)の内服薬が有効である。
薬物療法においては薬物のもつ副作用も考慮する。大半の薬剤は繰り返し使用されることが多いため、ショックなどの既往歴を正確に把握しておく必要がある。

2)尿管鏡+レーザー治療
下部尿管にある小結石の場合、硬膜外麻酔下に尿管鏡で結石を観察しレーザー治療する。外来治療も可能である。治療後尿管ステントを短期間留置する。

3)体外衝撃波結石破砕術(extracorporeal shock wave lithotripsy;SWL)
嵌頓した結石を映像として観察できる機種であれば、SWLで結石を微細片に破砕することで尿流を確保、腎機能の改善をみることができる。小結石なら1回の治療で終了し、疝痛も消失するが、比較的大きい結石の場合や長期に嵌頓している場合は数回の治療が必要である。尿管鏡による治療も考慮する。

4) 尿管内ステント留置
閉塞の解除、水腎症の改善を目的に尿管内に尿管カテーテルやダブルJステントを留置することで疝痛発作は緊急に解除できる。通常ガイドワイヤーを結石の上部できれば腎盂まで挿入しこれに被せてカテーテルを留置する。そのままで後日排石する場合もあるが、結石が不動の場合はESWLで治療する。

5)硬膜外麻酔
疝痛の解除のみならず、輸液にて利尿をつけ排石促進を期待することもできるほか、尿管鏡やSWLによる治療も追加できる。

6)指圧療法
疝痛発作時第2、3腰椎概則に圧痛点があり、ここを両側同時に母指で継続して10分間ほど指圧することで疝痛を緩和することができる。指圧のメリットは薬剤投与で見られるような副作用がなく、家族の協力があれば夜中でも繰り返し実施できるところにある。
また、この痛点に局所麻酔を追加すればさらに効果はあがる。

実際の治療例

疝痛発作にて外来受診時、緊急に所見差を実施しながら、まず薬物療法を試みる。
indimethcin(インダシンメ)、またはdiclofenac sodium(ボルタレンメ)の座剤(50mg)を投与する。激痛が繰り返す場合はpentazocine(ソセゴンメ)15mg筋注とhydroxyzine pamoate(アタラックスPメ)25mg筋注を併用する。
この間に結石成分の推定と患者の状態に最も適切な治療法を選択する。結石を探査できるようであればSWLにより治療する。SWLで効果がない場合や期待できない場合は尿管ステントの留置や硬膜外麻酔下に尿管鏡を実施して結石を観察しレーザーで砕石する。
結石が小さく尿管を下降する傾向にある場合は、triquizium bromide(チアトンメ)錠を内服し、入院治療なら輸液もしくは多量飲水で利尿をつける。外来通院でも多量飲水を心掛ける。また、なわとびなどの運動も下降を促進する。自宅で疝痛発作が起こった場合は指圧療法のほか、座剤を投与し、軽減しない場合は外来治療となる。激痛によって不安状態にある患者を適切な処置と指導で安心させることも肝要である。
結石が下降し排石が近くなると膀胱刺激状態が出現するので、排尿時には必ず尿中の結石を確認することを義務づける。この時結石の色は赤褐色、黄色、灰白色であったりすること、結石が凝血塊の中に混在することもある旨指導する。得られた結石は成分分析によりその患者にとって貴重な情報になることも知らせておく必要がある。