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【採択】病理学Ⅰ・清川悦子教授(公益財団法人持田記念医学薬学振興財団 第29回(平成23年度)研究助成金)

課題名「活性化型Rasによって引き起こされる内腔浸潤と可動性の亢進の分子機構の解明」

大腸癌外科材料を用いた遺伝子解析により低分子量G蛋白質Rasの恒常活性型変異が高頻度で認められることから、この変異による信号伝達経路の異常 が癌の発生・進行に重要であると考えられている。しかし、この変異で引き起こされる上皮構造の破綻の分子基盤は依然としてわかっていない。それは、これま での実験系では生体内での癌の環境を正しく再現出来ていないからである。例えば、培養細胞を用いて、細胞内情報伝達経路に参加する分子群が同定されてきた が、培養皿のガラス基質の硬度は生体組織より10の7乗倍程度高く、立体的で柔らかい実際の生体環境と比較すると、浸潤能など細胞の動態が異なることが最 近になって指摘されている。また、癌の多くを占める散発癌は、極性が成立した後遺伝子変異が導入されるが、これを再現している例も少ない。申請者はこれら の点を克服し、生体に近い構造を模する類器官培養を用い、更に低分子量G蛋白質群の発現を極性が成立した後に誘導することによって生体内の癌を試験管内で 再現することに成功した。生きた類器官を観察することで活性化型Rasの発現によって細胞が内腔に浸潤し、かつ類器官そのものの可動度が高まることを見出 した。本研究では、この表現型の責任分子を検索・同定し、癌における形態および動態変化を制御する分子機構を解明し、診断・治療に有用な分子を同定するこ とを目的とする。

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