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【論文発表】電子顕微鏡の真空環境下で、生きたままの生体の観察に成功

Observation of live ticks (Haemaphysalis flava) by scanning electron microscopy under high vacuum pressure. Yasuhito Ishigaki, Yuka Nakamura, Yosaburo Oikawa, Yasuhiro Yano, Susumu Kuwabata, Hideaki Nakagawa, Naohisa Tomosugi, Tsutomu Takegami  (PLoS ONE, 2012年3月14日公開)

 

 電子顕微鏡において生きたままの生体試料を観察することは不可能と考えられてきた。その理由としては、電子線を利用する電子顕微鏡観察では試料を真空状態に保つ必要があることが挙げられる。しかし、生きた状態に近い、あるいは生きたままの観察が可能になれば、光学顕微鏡では観察できない’超微細な’生体の動きを見ることが可能になる。

 そこで、真空に耐えうる生物を探索することにより、この難題を突破することを試みた。様々な処理条件や生物種を検討していく中で、キチマダニ(学名:Haemaphysalis flava (H. flava))が真空に耐性であることを見出した。このH. flavaを走査型電子顕微鏡内に導入し、これまで不可能とされてきた生きたままの個体の運動を電子顕微鏡内で捉えることに初めて成功した。この成果は従来の試料作製法に大きなインパクトを与えるとともに、電子顕微鏡観察が静止画から動画へと転換する節目をきざむことになる。今後は生きたままの細胞の観察や生体内分子反応の解析へ研究を発展させていきたいと考えている。

 本研究は総合医学研究所の石垣靖人准教授、中村有香研究員、中川秀昭教授、友杉直久教授、竹上勉教授と医学部医動物学・及川陽三郎講師および福井大学、大阪大学との共同で行われ、電顕室の竹原照明技術員と本学奨励研究の支援を受けた成果のひとつである。

 

PLoS ONE

 

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