記事のみ印刷する

【論文発表】 精神神経科学 大井 一高助教らの論文"Polygenetic Components for Schizophrenia, Bipolar Disorder and Rheumatoid Arthritis Predict Risk of Schizophrenia"がSchizophrenia Research誌に掲載されました

 統合失調症(SCZ)は遺伝率80%の多因子遺伝疾患である。全ゲノム関連研究(GWAS)では多くの遺伝子多型からなるポリジェニック因子がSCZに関与することを明らかにしている。Discovery GWASサンプルから算出したSCZのポリジェニックリスクスコア(PRS)は、独立のTargetサンプルにおいてSCZのリスクを説明できることが分かっている。PRSが独立のTargetサンプルのリスクを予測できるかどうかの重要な要因はDiscovery GWASサンプルのサンプルサイズである。Psychiatric Genomics ConsortiumのCross-Disorderグループは、大規模なヨーロッパ人サンプルにおいて主要精神疾患[SCZ、双極性障害(BIP)、大うつ病性障害、注意欠陥多動性障害、自閉症スペクトラム]間の成人発症の3疾患(SCZ、BIP、大うつ病性障害)でポリジェニック因子を共有することを見出している。本研究では、SCZのリスクに関わるポリジェニック因子が、様々な精神疾患や非精神疾患と関わるポリジェニック因子とオーバーラップするかを検討した。Discovery GWASサンプルとして、5つの主要精神疾患および5つの非精神疾患の主にヨーロッパ人のGWASを、Targetサンプルとして日本人サンプルのGWASデータを用いた。ヨーロッパ人由来のSCZ GWASから算出したPRSは、日本人Targetサンプルにおいて健常者よりもSCZ患者で高値を示した。さらに、BIP GWASから算出したPRSも、健常者よりもSCZ患者で高値を示した。これらの結果は、SCZとBIPが共通する遺伝素因を保有していること、ヨーロッパ人と日本人のSCZで共通する遺伝素因が関わっていることを示唆している。また、非精神疾患のなかでは、慢性リウマチ(RA)のGWASから算出したPRSが、健常者よりもSCZ患者で低値を示した。これは、SCZ患者はRAを発症するリスクが低いという疫学的なエビデンスを支持する結果である。本研究結果は、SCZ、BIPおよびRA間の共通する遺伝因子がSCZのリスクに寄与していることを示唆している。
Schizophrenia Research


新着一覧へ