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【論文発表】 精神神経科学 大井 一高講師らの論文"Impact of Familial Loading on Prefrontal Activation in Major Psychiatric Disorders: A Near-Infrared Spectroscopy (NIRS) Study"がScientific Reports誌に掲載されました

統合失調症、うつ病、双極性障害といった主要な精神障害は、40-90%の高い遺伝率を示す多因子遺伝疾患であり、病態には多数の遺伝子が関わっている。第2親等以内に精神障害の家族歴を有する非罹患者は一般人に比べ精神障害に罹患する率が2-10倍高くなることから、精神障害において精神障害の家族歴は、発症の重要なリスク因子であることを示している。また、家族歴を有する患者は家族歴を有しない患者に比べ症状の重症化やリスクとなる遺伝子を多く保持していることが知られている。言語流暢性課題中の前頭葉機能の低下はこれらの精神障害において共通して認められる障害であり、同様に66-75%の高い遺伝率を示すことから、疾患と遺伝子間の橋渡しをする中間表現型の一つであると考えられている。近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)は脳活動を高い時間分解能で非侵襲的かつ低コストで計測でき、本邦が中心となり世界に発信している検査法である。本研究では、NIRSを用いて、統合失調症、うつ病、双極性障害といった主要な精神障害を対象に、家族集積性の有無が言語流暢性課題中の前頭葉血流に及ぼす影響を検討し、家族歴を有する患者(特に統合失調症患者)は家族歴を有しない患者に比べ言語流暢性課題中の前頭葉血流が低下していることを見出した。このように、精神障害の家族集積性に着目し、NIRSにて測定する前頭葉機能を中間表現型として用いることで、今後、精神障害の分子遺伝学的基盤を明らかになることが期待される。
Scientific Reports


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