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【採択】 精神神経科学 大井 一高講師/喫煙科学研究財団 若手研究

研究課題名「喫煙行動と統合失調症における遺伝的共通性の解明
 
喫煙やニコチン依存に関連する疾患は、死亡率の上昇に繋がります。統合失調症は生涯罹患率1%のCommon psychiatric disorderであり、一般人口に比べて平均寿命が10-20年短いことが知られています。世界的に、一般人口の喫煙率が20-30%であるのに対して、統合失調症患者の喫煙率は80-90%であり約3倍高いです。統合失調症喫煙患者は喫煙本数が多く‘Heavy Smokers’と考えられていますが、統合失調症と喫煙行動が併存するメカニズムは不明です。統合失調症患者では、認知機能障害や陰性症状あるいは抗精神病薬による錐体外路症状などを緩和するために喫煙行動に至るといったSelf-medicationが示唆されています。一方、統合失調症とニコチン依存の遺伝率がそれぞれ80-85%と50-60%のように高値を示し、統合失調症の非罹患同胞においても高い喫煙率を示すことから、統合失調症と喫煙行動に共通する遺伝素因の関与が想定されています。喫煙行動と統合失調症双方に関わる共通の遺伝子を検索する場合、ニコチン性アセチルコリン受容体(nAchR)遺伝子群が主な候補遺伝子に挙げられます。実際、喫煙本数や喫煙歴などの喫煙行動の大規模な全ゲノム関連解析(GWAS)では、染色体15q25上のnAchRサブユニットα3をコードするCHRNA3遺伝子内の遺伝子多型と喫煙本数の非常に強い関連(P=2.8×10-73)を同定しています。一方、統合失調症の大規模なGWASでは、108個のゲノム座位と疾患の関連を同定しており、その領域内に15q25を含んでいることから、共通遺伝素因の関与を支持しています。しかし、これらは主に欧米人を対象とした研究であり、日本人における統合失調症および喫煙行動双方に関わる遺伝的な関与については不明です。本研究では、日本人統合失調症患者における喫煙率及び喫煙本数を明らかにし、喫煙行動と統合失調症双方に関わる遺伝基盤の解明を目的とします。
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