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【採択】 精神神経科学 大井 一高講師/武田科学振興財団 2017年度医学系研究奨励

研究課題名「統合失調症非罹患近親者における包括的中間表現型解析 –Imaging Genetics-
 
 近年、脳構造やIQを統合失調症の中間表現型として用いた遺伝子解析は多くなされるようになってきています。しかし、その他の中間表現型と言われる表現型については、長期安定性や非罹患近親者における障害についての検討がいまだ十分とは言えないまま、ゲノム研究に用いられているのが現状です。統合失調症の分子遺伝基盤を解明するために、このような検討不十分な表現型を中間表現型として遺伝子研究に用いることは、統合失調症のゲノム研究を複雑化してしまう懸念があります。発端者の約半分の遺伝的リスクを有する非罹患近親者(特に同胞)は、患者と年齢が近く年齢を患者群と合わせることができ、中間表現型に対する加齢による影響を最小限にして評価できるというメリットがあります。また、非罹患近親者は、罹患期間、障害重症度および服薬の影響を受けないことから、中間表現型との関連の検討に有用です。
 本研究では、脳構造、認知機能、神経生理機能、性格傾向などの中間表現型の中で、脳灰白質・白質や白質走行といった脳構造及び安静時や表情認知課題における脳機能など脳構造/機能を中心に、統合失調症患者と健常者のみではなく、統合失調症の非罹患第1度近親者も対象とした包括的中間表現型解析を行い、有望な中間表現型を同定します。本邦では情報収集の難しさから非罹患近親者を用いた中間表現型ゲノム研究は行われていません。特に都心部では親族が遠方のため患者と共に受診することが難しく情報収集が困難であるのに対して、北陸地域では親族と患者が近くで生活していることが多く情報収集のし易い環境にあります。次に、統合失調症患者、非罹患近親者および健常者において脳画像/機能の中間表現型と108座位のリスク多型との関連や遺伝子発現との関連についても検討し、統合失調症における分子遺伝学的基盤を解明します。
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