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【採択】糖尿病・内分泌内科学 新田恭子助教/平成30年度学術研究振興資金 女性研究者奨励金

研究課題名「内因性抗線維化ペプチドAcSDKPの臨床応用への基礎研究」
 
N-acetyl-seryl-aspartyl-lysyl-proline (AcSDKP)は内因性抗線維化ペプチドである。我々の研究室では、AcSDKP は血管内皮細胞恒常性と臓器線維化において重要な意味を持つと考えられており、内皮間葉系転換(Endothelial-to-mesenchymal transition:EndMT)抑制効果は腎臓における線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)の正常化と、抗線維化microRNA let-7 family といった既報のEndMT 抑制プログラムの正常化を介していることを明らかにし、ACE阻害薬が発揮する臓器線維化防止効果にAcSDKP 濃度上昇が関与する可能性があることを報告している。また、動物実験において腎線維化が尿中AcSDKP濃度低下と相関があることを報告している。尿中AcSDKPレベルと腎臓線維化の負の関連が実験動物の解析から確認されたことから、ヒトにおいても内因性AcSDKPが抗線維化ペプチドとして腎保護効果を発揮しているのではないかと仮説し、2型糖尿病腎症1期の症例では尿中AcSDKP高値群で有意にeGFRの低下が抑制されていたことを確認、学会発表を行っている。
糖尿病腎症は尿アルブミンとeGFRにて病期が決定されるが、尿アルブミン増加を呈していない腎症1期症例の腎機能低下の予測因子として有用な既存のバイオマーカーは存在しない。腎機能が低下する前の、腎症1期に腎機能低下が予想できれば、早期からの腎保護に特化した集学的治療を開始できる可能性がある。内因性抗線維化ペプチドAcSDKPに着目した、基礎研究から臨床応用できる可能性を持つ研究である。

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