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【論文発表】 精神神経科学、総合医学研究所 大井一高講師らの論文"Meta-analysis of physical activity and effects of social function and quality of life on the physical activity in patients with schizophrenia"がEuropean Archives of Psychiatry and Clinical Neurosciences誌に掲載されました

 統合失調症患者では、身体活動量の低下による心血管疾患などの罹患率や死亡率の上昇が認められます。しかし、社会機能や生活の質(QoL)といったどのようなメンタルヘルス因子が身体活動量の低下に関連しているかは知られていません。本研究では、109名の統合失調症患者および69名の健常対象者に対して、国際標準化身体活動質問表International Physical Activity Questionnaire (IPAQ)、社会機能評価尺度Social Functioning Scale (SFS)、統合失調症患者におけるQoL評価尺度であるSchizophrenia Quality of Life Scale (SQLS)を用いて身体活動量、社会機能、QoLを評価しました。金沢医科大学の対象者を含む統合失調症患者および健常対象者間でIPAQにより評価した身体活動量強度 (重度、中等度、軽度)のメタ解析を行いました。さらに、統合失調症患者および健常対象者において社会機能、QoLが各強度の身体活動量に及ぼす影響を調べました。212名の統合失調症患者および132名の健常対象者におけるメタ解析では、患者は健常者に比べて全身体活動量、特に重度の身体活動量が低いことを示しました。患者健常者間でのばらつきなく、全身体活動量の低下は、全社会機能の低下、引きこもり傾向および娯楽活動の低下と相関していました。一方、統合失調症患者のみにおいて、全身体活動量の低下は、自立実行、就労、心理社会関係、動機/活力の低下と相関していました。同様の結果が、重度の身体活動量で得られたのに対して、中等度や軽度の身体活動量では得られませんでした。本研究の結果は、統合失調症患者における重度の身体活動量の低下が、統合失調症に特異的な社会機能およびQoLを介して生じることを示唆しています。これらの因子の理解が、統合失調症患者において身体活動量を改善させるために重要です。

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