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糖尿病内分泌内科学 金崎啓造「Placental Growth Factor(PlGF)不全は、マウスにおいて妊娠高血圧腎症を改善する」を J Clin Investに発表

 妊娠高血圧腎症(PE)の病態は完全には解明されておらず、しばしば「The Disease of Theory」と言われます。PE母体における血管新生シグナル異常(PlGF抑制とVEGF可溶型受容体sFLT1増加)をバイオマーカーとしてのみならず、この異常によって病態そのものを説明しようと試みられていますが、十分な根拠は得られていません。私はボストンから帰る直前にこのPlGF不全とそれに関連して増加するsFLT1は本当に病態意義があるのかという疑問を持ち、自分が確立したPE表現系を呈するCOMT不全マウスとPlGFのダブルノックアウトマウス(DKO)を解析しました。結果としては、PlGFを抑制することによりCOMT不全により生じるPE表現系は消失することが分かりました。またPlGF不全マウスはsFLT1が非常に高レベルであることもわかりました。PlGF抑制は胎盤におけるグリコーゲン蓄積と関係しており、グリコーゲン蓄積が胎盤虚血に対して防御機構として働く可能性も考えております。
 これらの結果は、PlGF抑制とsFLT1増加はPEバイオマーカーとしての意義は概ね問題ないと考えますが、病態生理的意義に関しては慎重に考える必要があることを示しています。

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