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【採択】免疫学 小内 伸幸 教授/第33回 北國がん基金研究活動助成

 研究課題「低分子化合物を用いたダイレクトリプログラミングによる樹状細胞樹立と新規がん免疫療法の創生」
 がんは我が国における死亡原因1位の疾患であり、年間100万人が罹患し、35万人以上が死亡している。このように、もはやがんは国民病であり重大な社会問題である。従来から、がん撲滅を掲げ、基礎・臨床研究が推進され、様々な治療方法が開発されてきた。近年、免疫チェックポイント阻害剤による抗腫瘍効果は免疫療法の有効性を再認識した。しかし、同阻害剤を用いた治療でも奏功率が低い問題があり、新たな免疫治療方法の創出が期待されている免疫システムにおいて樹状細胞は強力な抗原提示能力を有し、がんや病原性微生物を排除するために獲得免疫を始動させる重要な免疫担当細胞である。この特徴を生かし、樹状細胞にがん抗原を加え、生体に戻し、がん特異的免疫反応を誘導する方法は代表的な免疫細胞療法である。しかし、現行の方法では癌患者から樹状細胞を誘導する際に、患者の個人差や分化効率の問題のため、治療に十分な細胞数が得られない場合がある。この問題を克服するために無限増殖能を備えたES細胞やiPS細胞から樹状細胞を誘導する方法が報告されているが培養時間が長く、費用もかかる点など問題が多く、臨床応用までには程遠い状況である。近年、低分子化合物を用いると前駆細胞から樹状細胞への分化が増強したり、樹状細胞の機能が向上する報告がある。さらに、低分子化合物を用いると増殖能を失った肝細胞が増殖能と分化能を獲得した肝前駆細胞にリプログラムした報告がある。そこで本研究では、低分子化合物を用いて、優れた機能と増殖能を有し、臨床応用可能な樹状細胞を分化誘導可能な細胞培養システムを樹立し、安全且つ効率的な新規がん免疫療法への基盤技術を開発する。また、低分子化合物による分化誘導機構を解明し、新たな化合物の発見を試みる。最終的にはがんを標的とした新規樹状細胞免疫療法の創出を目的とする。

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