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【論文発表】病院病理部 寺内 利恵 技師の論文「Intracytoplasmic Lumen in Urine Cytology Predicts Worse Prognosis in Non-muscle-Invasive Bladder Cancers」がACTA CYTOLOGICA誌に 掲載されました。

「予後不良を予測し得る非筋層浸潤尿路上皮癌における尿細胞診中の細胞質内小腺腔」
 
 細胞質内小腺腔(以下ICL)は乳癌に出現することは良く知られているが、尿路上皮癌にも出現する。私たちは、高異型度尿路上皮癌が低異型度の癌より多くICLがみられ、異型度とICLの関連性について報告している(臨床細胞学会誌、2009年)。ICLと予後の関係についての報告はほとんどなく、私たちは、少数例での検討ではあるがICLが膀胱癌の生存率に影響することを発表した(寺内ら、泌尿器細胞診カンファレンス、黒部、2018年)。尿細胞診標本中のICLが膀胱尿路上皮癌の予後不良因子であるとの仮説を基に、さらに検討数を増やし膀胱癌尿細胞診におけるICL(cICL)と予後との関係について明らかにする。
 対象は2003年から2007年の5年間に膀胱癌と組織学的に診断され、その3か月前までに尿細胞診材料のあった87例である。尿細胞診でのICLの定義を明確にし、ICLのカットオフ値を定め、パパニコロウ染色退色標本は再染色を施しICL数を算定するとともに、泌尿器細胞診報告様式2015に沿った細胞診断の見直しを行った。組織診標本はHE染色標本とともに、ムチカルミン染色などの特殊染色、ムチンについても免疫組織化学を用い検討した。ICL数の算定、亜型を含めた組織分類、異型度、深達度、脈管侵襲、TNM分類について再評価した。臨床事項としては再発、転移、死亡、膀胱全摘の有無について調べた。
 cICLは、高異型後尿路上皮癌、筋層浸潤や転移のある膀胱癌患者、癌死患者に多く認められた。さらに、非筋層浸潤膀胱癌患者において、cICL陽性患者はcICL陰性患者より有意に生存率の低下がみられた。また、免疫組織化学的にICLはMuc-1とMuc-4に陽性となる特徴を示した。cICLは非筋層浸潤膀胱癌患者の生存率低下の予測因子と考えられた。尿細胞診でICLを観察することは、予後不良な高異型度尿路上皮癌を診断するうえで有用な因子であることが示唆された。
 
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