金沢医科大学 医学部案内2022
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認知症をはじめ幅広く研鑽を積んだ母校での日々性差医療に着目した石川県初の女性外来卒業後12年間、母校の精神神経科学教室に在籍し、統合失調症、うつ病、認知症、高次脳機能障害、睡眠、地域精神医療について研鑽しました。当時は認知症に対する理解も知見も少なく、能登地区の在宅認知症患者さんの訪問や療養病床での診療は、とても貴重な経験でした。故郷の岐阜県に戻ってからは、精神障害者の地域移行や認知症患者の地域連携などに取り組んできました。統合失調症やうつ病といった精神障害を患う人は、健常人より平均寿命が短いことが知られています。その原因の約6割は生活習慣病。さらに精神障害や生活習慣病は認知症のリスクファクターであることも明らかになっています。これからの精神科医に求められるのは「こころ」だけでなく「からだ」の健康も担うことです。患者さんが老年期まで健やかに過ごすために、病診連携を含めた地元のネットワークづくりに努めたいと思っています。これからはAIの時代。知識を詰め込むのではなく、どう活用するかが問われるようになるでしょう。私自身も、推理力や判断力といった臨床センスに優れた医師を目指したいと思っています。皆さんは入学まで相当の勉強をし、さらに入学後も学び続けなければなりません。でも皆さんなら大丈夫。卒後教育も熱心な本学なら、多くのことを学べるはずです。心から応援しています。2002年、金沢医科大学病院に石川県で初めての女性外来が開設されました。性別を考慮した性差医療の考え方が日本に導入されたことがひとつのきっかけでした。時代のニーズに対応しながら現在の女性総合医療センターとなり、生涯を通じた女性の健康をテーマに女性特有の症状や病気に悩む患者さんの診療を行っています。私自身、現在も3人の子育て中です。出産・育児とキャリアアップが重なる時期をどう乗り切るか。自己実現と家庭と仕事の悩みはつきません。実は女性外来開設の背景には、今でいう「イクボス」の走りの経営陣がいて、そうした女性医師を応援する部署づくりの初期モデルでした。「キャリアを中断することなく仕事を続けられるよう、当直や夜勤がない職場を」と、理解のある先生方が力を尽くしてくださったのです。今日までさまざまな波乱万丈がありましたが、今の私があるのは上司や仲間に恵まれたからこそ。周囲の支えに甘えるのではなく、自身も精一杯努力することが大切だと思っています。本学では女子学生が増え、時代の変化を感じています。当院では、男女の区別なく医師としてキャリアアップを目指せる環境整備も進んでいます。ダイバーシティ時代に理想とするのは、金子みすゞの詩の一節「みんな違ってみんないい」。一人ひとりが活躍できる場で力を発揮し、互いを補い、組織全体で大きな目標へと向かえる職場を、これからも目指したいと考えています。地域の連携で患者の健康を支える女性医師がキャリアを継続できる環境を現在の努力が未来をつくる自信を持って歩んでほしいライフステージに合わせて柔軟に働ける職場づくり勘とセンスを磨きこころとからだの健康を守る精神科医に女性にやさしい医療と女性医師の環境改善に力を尽くしたい医療法人静風会大垣病院 理事長・院長田口 真源医師(1981年卒業)Profile日本精神神経学会専門医・指導医・評議員、日本時間生物学会評議員、日本老年精神医学会専門医、日本精神科医学会認知症臨床専門医、日本睡眠学会認定医、医学博士金沢医科大学病院女性総合医療センター長金沢医科大学総合内科学准教授赤澤 純代医師(1992年卒業)Profile日本抗加齢医学会理事・専門医、日本内科学会認定医、European Society of Cardiology fellowship、日本医師会認定産業医、医学博士、日本医師会認定健康スポーツ医、石川県女性医師支援センターコーディネーター・メンター37Kanazawa Medical University School of Medicine

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