動脈硬化・高血圧班
生活様式の欧米化と高齢者人口の急増により動脈硬化性心血管疾患は増加、重症化、そして複雑化の一途をたどっています。しかしその病態の解明は不十分で、よってその1次予防(発症予防)ならびに2次予防(再発予防)は大きな社会課題となっています。
高コレステロール血症などの脂質異常症と動脈硬化症の関係について研究してきた梶波を中心として、高血圧や肥満など他の動脈硬化危険因子を総合して、複合的な視点からアプローチしています。
その成果として、男性冠動脈硬化症患者における女性ホルモン測定の意義(Coronary Artery Disease 2004)、女性における骨密度と動脈硬化の定量的逆相関(日本循環器病学会総会発表)など、
性ホルモンに着目した研究は性差医療を先取りしたものとして注目されました。
また抗動脈硬化作用メカニズム解明を目指し、脂質低下療法や降圧療法といった薬物療法の効果とメカニズムを検討するとともに(Am J Cardiol 2003)、Tufts大学との共同研究として、欧米で行われた大規模臨床研究であるPROSPER studyに加わり、スタチンの脂質低下効果ならびに心血管イベント予防効果を左右する新しい遺伝子多型を見出し欧文論文として最近公表されました(Atherosclerosis 2012, 2012)。
一方、新しい研究の方向性を探索すべく、経済産業省NEDOプロジェクト共同研究として、東京大学大学院薬学研究科(杉山雄一教授)とともにマイクロドース法を用いて実臨床例においてスタチンの薬物動態が取り込みトランスポータ遺伝子多型により有意に異なることを明らかにしました(日本循環器学会総会発表)。
副作用を含む治療反応性を規定する素因の探索を研究のひとつの柱とし、薬物をはじめとする各種治療手段が有効である症例の特徴を明らかにする多施設共同研究を進めています。
(文責 梶波康二)
カテーテルグループ
現代社会の高齢化や生活習慣の変化とともに動脈硬化により発症する狭心症・心筋梗塞・閉塞性動脈硬化症の増加および重症化が認められます。
当班は、循環器の中でもこの様な冠動脈や末梢血管の病気の患者様を中心に診断と治療にあたるスペシャリストのグループです。
主な仕事は、狭心症・心筋梗塞に対する心臓カテーテル検査とカテーテル(バルーンやステント)を用いたインターベンション(治療)を行っています。又、最近増加している下肢血管の閉塞性動脈硬化症や腎動脈狭窄に対するインターベンションにも積極的に取り組んでいます。
心臓カテーテル検査症例数は、昭和60年から平成23年12月までの22年間で総数として25,519例を行ってきました。冠動脈形成術においては、この期間中に6,622例の治療を行い、平成19年1年間では、冠動脈形成術405例・閉塞性動脈硬化症を中心とした末梢血管に対するインターベンションを52例に行っております。
当施設でのインターベンション(治療)の目玉は、ロータブレーターであります。ロータブレーターとは、金属バーの先端に人工ダイヤモンドが付いた小さなドリルです。動脈硬化で硬くなり、通常のバルーンやステント療法では治療の難しい血管の治療に用います。ロータブレーター使用は、スタッフの技能はもちろん施設の整備状況などを含めた厳しい条件をクリアした施設に限定されており、当施設では、平成9年8月に日本で認可された当初より使用しています。
近年、透析患者様の増加に伴い他施設からの紹介も増加しており、年間50症例以上、昨年までの累計でも1,000症例以上にロータブレーターを用いて安全に実り多い治療を行ってきました。この治療に関しては、北陸地区では最も多い症例数を経験しており、今では国内でも有数な施設の1つに数えられる様になっています。
現在、重症心臓疾患を集中治療する、ハートセンター内にある心臓カテーテル検査室では、シーメンス社製のフラットパネルディテクターを装備した最新のシネアンギオ装置2台が設置されており、24時間体制で急性心筋梗塞をはじめとする、緊急性の高い心臓血管疾患の診断と治療にあたっています。
このように、経験症例数のみならずその内容も高度かつ先進的であり、名実ともに北陸を代表する施設となっています。
(文責 北山道彦)
不整脈グループ
不整脈グループでは、ペースメーカーをはじめとする植込型デバイスの移植術、カテーテルを用いて不整脈を根治させる経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)、他、難治性不整脈に対する薬物治療や失神の精査を行なっています。
心臓の洞結節の働きが悪くなり徐脈をきたす洞不全症候群、心房と心室間での刺激の伝導が障害される房室ブロックなど、症状の重い徐脈性不整脈の患者さんにはペースメーカーを移植しています。
ペースメーカーは本体とリード線で構成されていますが、リードレスという新しいコンセプトのペースメーカーも利用可能となっています。リードレスペースメーカーはカプセル型で、本体を皮下に植え込むのではなく、カテーテルを用いて心臓内に本体を送り込み、小さなフックで右心室に留置し、直接、ペーシングを行います。従来のペースメーカーと違って、リードの断線、静脈閉塞、皮下ポケット感染など合併症がなく、ポケット手術痕がないなど美容上メリットもあります。
左右の心室の収縮タイミングがずれて血液をうまく送り出せない状態である心臓同期不全を伴った重症心不全例に対しては、右室、左室の両方からペーシングを行う心臓再同期療法(CRT)を積極的に導入し、薬物療法とともに心不全治療の一役を担っています。
心室頻拍や心室細動など重症心室性不整脈が原因でおこる突然死を予防目的としては植込型除細動器(ICD)の移植を行い、予後改善に貢献しています。
原因不明の失神や原因不明の脳梗塞(潜因性脳梗塞)に対しては植込型心電図記録計(ICM)の移植を積極的に行っています。前者から、徐脈性不整脈や心室頻拍、心室細動など致死性不整脈が、後者から発作性心房細動が検出されることがあり、早期に適切な医療の介入が実現できます。
2000年(H12年)より、WPW症候群、発作性上室性頻拍症、心房粗動、心房頻拍、一部の心室頻拍などの頻脈性不整脈に対し、数本の心臓カテーテルを用いて不整脈の起源となる異常な回路や発生源を探し、高周波で焼灼する経皮的カテーテル心筋焼灼術(カテーテルアブレーション)を導入し、ほとんどの症例を根治させています。
また、近年増加している心房細動に対しても、2007年(H19年)からアブレーションを適応し、同側拡大肺静脈隔離術を基本とした手技により良好な成績を治めています。
これには、最新鋭のカテーテルナビゲーションシステム
心臓電気生理学的検査・・・・・・・・・・・・・170人
ペースメーカー移植術/交換術・・・・・・・・・52人/33人
(うちリードレスペースメーカー移植術・・・・・5人)
両心室ペースメーカー(CRT-P) 移植術/交換術 ・2人/3人
植込型除細動器(ICD) 移植術/交換術 ・・・・・7人/1人
(うち皮下植込み型除細動器(S-ICD)移植術・・2人)
両室ペーシング機能付き植込型除細動器(CRT-D)移植術/交換術・・・11人/5人
植込型心電図記録計(ICM) 移植術 ・7人
経皮的カテーテル心筋焼灼術・・・・154人
(うち心房細動・・・・・・・・・・117人)
- Eiichi Ueno, Kosuke Fujibayashi, Jun Sawaguchi, Yushi Yasuda, Nakaba Fujioka, Yasuyuki Kawai, Harumi Fujita, Yoshi Tanaka, Kouji Kajinami
Monitoring the roles of prothrombin activation fragment 1 and 2(F1+2)in patients with atrial fibrillation receiving rivaroxaban and apixaban
Journal of Thrombosis and Thrombolysis 50(2):371-379 - Kosuke Fujibayashi, Yasuhiko Saeki, Jun Sawaguchi, Yuushi Yasuda, Eiichi Ueno, Shintaro Takano, Nakaba Fujioka, Yasuyuki Kawai, Kouji Kajinami:A case of cardiac resynchronization therapy in a patient with coronary sinus ostial atresia and persistent left superior vena cava Journal of Cardoology Cases 21(2020) 101-103
(文責 藤岡央)
心不全・心筋症
(文責 )