大学院・研究業績

大学院・博士号

 当教室では可能な限り短期間での大学院卒業・博士号取得を目指します。大学院入学1年目は研究課題の設定と基本的実験手技の確立を行うとともに、必修の講義の終了を目指します。2年目~3年目に研究の実施と結果をまとめ、4年目に論文作成・報告を行い、大学院の卒業を目指します。直近では、二ッ谷 剛俊医員、山口 礼門医員が大学院卒業・博士号を取得しています。また、必要に応じて研究日の設定なども考慮いたします。

研究課題

真菌と真菌症について

 当教室では皮膚真菌症について長年にわたり研究を行ってきました。当教室は全国で数少ない臨床と基礎とを兼ね備えた真菌研究機関です。皮膚真菌学は、治療や情報提供のニーズは非常に多い分野にもかかわらず、近年皮膚科医の真菌症への関心は低く、それを研究している皮膚科の教室は全国で稀少です。そのような状況の中で当教室の研究実績は高く認知され、特筆すべき存在となっています。真菌の臨床分離の依頼検体が全国から集まり、 研究室では分子生物学的な研究がすすんでいます。

論文
Taketoshi Futatsuya, Tsuyoshi Ushigami, Fumie Nomura, Kazushi Anzawa, Takashi Mochizuki, Otomi Cho, Takashi Sugita. Scalp microbiota in members of a Japanese high school judo team including Trichophyton tonsurans carriers. J Dermatol. 47: 171-172, 2020.
Sakata Y, Ushigami T, Anzawa K, Mochizuki T. Molecular Epidemiology of Trichophyton tonsurans, the Causative Dermatophyte of the Tinea Gladiatorum Epidemic in Japan between 2011 and 2015. Jpn J Infect Dis 71: 140-144, 2018.
Kazushi Anzawa, Takashi Mochizuki, Akiko Nishibu, Hiroshi Ishizaki, Katsuhiko Kamei, Toko Takahashi, Machiko Fujihiro, Hidekazu Shinoda. Molecular epidemiology of Trichophyton tonsurans strain isolated in Japan between 2006 and 2010 and their susceptibility to oral antimycotics. Jpn J Infect Dis 64: 458-462, 2011.

創傷治癒について

 当教室では本学臨床病理学(山田 壮亮 教授ら)と連携し、酸化ストレスと高齢者の創傷治癒遅延に関する基礎研究に取り組んでいます。

加齢による創傷治癒遅延の病態解明と新規治療法の開発

 高齢化は我が国のみならず、世界的な問題となりつつあります。高齢者の代表的な皮膚疾患として、加齢による創傷治癒遅延に伴う難治性皮膚潰瘍(褥瘡、糖尿病性潰瘍、手術創の治癒不全など)が挙げられます。これらは、様々な合併症や死亡率の増加を引き起こし、また医療費の高騰にも繋がるため、疾患メカニズムの解明と新規治療法の開発が求められています。創傷治癒には適切な酸化還元バランスが必要であり、創傷治癒過程では幾つかの抗酸化酵素が重要な役割を担っています。また高齢者では生体内の酸化ストレスが劇的に増加しており、これは加齢に伴う創傷治癒遅延の主要な要因の一つと考えられています。

これまでに新規抗酸化酵素Peroxiredoxin (PRDX)4*遺伝子改変マウスを用いた創傷治癒動物実験により、本酵素が高齢マウスの過剰な酸化ストレスと炎症反応を抑制し、皮膚線維芽細胞の増殖・遊走能およびアポトーシス耐性を促進することにより、高齢マウスの創傷治癒遅延を有意に改善することを明らかにしました。本研究は高齢者の難治性皮膚潰瘍に対するPRDX4の治療応用、ならびに抗酸化療法という新規治療分野の開拓の可能性を示しています。更なる病態解明を行い、高齢者の創傷治癒遅延に対する効果的な治療法の開発に貢献することを目指しています。

*Peroxiredoxin (PRDX) 4:PRDX抗酸化酵素ファミリーに属する分泌型酵素の一つ。近年、生活習慣病(糖尿病、動脈硬化、脂肪肝炎など)や癌に対する抑制作用が明らかとなり、その生体保護作用に注目が集まっている。

論文
Yamaguchi R, Guo X, Zheng J, Zhang J, Han J, Shioya A, Uramoto H, Mochizuki T, Yamada S. Peroxiredoxin 4 improved aging-related delayed wound healing in mice. J Invest Dermatol, 2021 May 21. (Online ahead of print))

HPVと皮膚腫瘍について

 HPVは200種類以上のtypeが同定されており、typeによって部位親和性や疾患特異性、発癌リスクの特徴がみられます。病理組織HE染色でも一部のHPVは特徴的な封入体を呈します。HPVはこれまでの多くの皮膚腫瘍との関連が言われていますが、当科ではHPV DNAを生標本、パラフィンブロック双方からの検出が可能です。抗HPV抗体による免疫染色による局在の確認も行っています。皮膚癌とHPV typeによる相関性や新たな特徴について多くの業績があります。また他院からの診断目的のHPVウイルスの検出やタイプの同定にもご協力させていただいております。最近では爪部ボーエン病とHPVの関連を報告しました。

論文
Shimizu A, Kuriyama Y, Hasegawa M, Tamura A, Ishikawa O. Nail squamous cell carcinoma: A hidden high-risk human papillomavirus reservoir for sexually transmitted infections. J Am Acad Dermatol 81: 1358-1370, 2019.
Kuriyama Y, Shimizu A, Ohnishi K, Ishikawa O. Detection of human papillomavirus in actinic keratosis. J Dermatol. 45: e183-e184, 2018.
Kuriyama Y, Hattori M, Mitsui T, Nakano H, Oikawa D, Tokunaga F, Ishikawa O, Shimizu A.Generalized verrucosis caused by various human papillomaviruses in a patient with GATA2 deficiency. J Dermatol. 45: e108-e109, 2018.