講演概要
「ピロリ菌検査・除菌により胃がん死は激減できる」

富山大学医学部 第3内科 教授 杉山敏郎

胃がんは過剰な塩分などが原因と言われてきましたが、今日ではピロリ菌が胃がんの原因であり、日本人胃がんの99%はピロリ菌が原因であることがわかってきました。ピロリ菌は幼少期に感染、中高年になってから胃がんを発症します。陰性者は中高年になっても胃がんになりません。日本人は約5000万人が感染しており、2013年から感染者は保険診療で除菌治療を受けることが出来ます。若年時に除菌すると胃がんにはなりませんが、感染後、ある期間を過ぎてからの除菌では胃がんリスクは少なくとも30%以下に減少しますが、ゼロにはならず、リスクが残ります。ピロリ菌感染と個々人のリスクを考慮した検診を構築し、除菌を推進すると10年後には胃がん死は10分の1以下になると予測されます。本講演ではこれらの根拠と将来像をわかりやすく解説いたします。

「胃切除後障害の克服に向けて -患者さん、外科医そしてチームができること-」

東京慈恵会医科大学 外科学 講師 中田浩二

胃の病気を治すために胃切除術を行うと、しばしば胃切除後障害と呼ばれる後遺症が現われて患者さんの日常生活に支障をきたします。私たち外科医は胃切除後障害を減らすために手術法の工夫(機能温存・再建手術)に取り組んでいますが、いまだ十分とは言えません。患者さん自身が胃切除後障害を正しく理解しある程度の自己対処を行うこと、そして患者さんを支えるチームを構築することが重要です。本講演では胃切除後障害の概要と手術法を工夫することの有効性、胃切除後患者さんを支援するツールと胃切除後障害を克服するためのチームについてお話しします。

「がんの治療とリハビリテーション」

金沢医科大学病院 リハビリテーション科 教授 影近謙治

がんの治療の中で、リハビリテーションの目的は、患者さんの回復力を高め、今までと変わらない生活を取り戻すことによって、患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(QOL:生活の質)を大切にすることにあります。がんの治療中は安静を強いられたり、後遺症や副作用などから患者さんはさまざまな身体的・心理的障害を受けます。がんのリハビリテーションではたとえ無菌室の中でも機械を使ったりセラピストが筋力強化を行ったりして、筋力が低下せず歩行能力が維持でき、治療の終了と同時に歩いて在宅復帰できるようチームで取り組んでいます。がんと診断された時から、障害の予防や緩和、できるだけその人らしく楽しく生きられるよう対応する医療です。

「知っておきたい術前・術後の栄養管理」

金沢医科大学病院 栄養部 主任 左古ひとみ

胃がんの症例では、腫瘍の進行に伴う術前からの慢性的な栄養障害と手術による高度侵襲が原因で、急性的な栄養障害のリスクが加わる為、術前からの積極的な栄養療法の実践が、周術後期の栄養状態の維持や改善に欠かすことができません。術前に効果的な栄養補助食品として免疫腑活栄養剤を紹介します。免疫腑活栄養剤の適応と効果について、術後の小胃症状に伴う食事の工夫、化学療法中の副作用(食欲不振・味覚異常・下痢等)に応じた食事の対応について、体重減少の原因に合わせた食事の工夫などについて講演します。