症例3解説

1.会話の中から患者さんの問題点を医学用語でリストアップしましょう。

    疲れやすい ---易疲労感

    肝臓が悪い ---肝機能障害 

    汗をかきやすい ---発汗過多 

    2ヵ月で5kgやせた---体重減少

2.甲状腺の触診所見から考える疾患はなんでしょう。

    び漫性に腫大した甲状腺を触知、弾性硬、圧痛は認めない。

         →慢性甲状腺炎:無痛性甲状腺炎 

    鑑別 

        Basedow病---び漫性で柔らかく表面平滑

        亜急性甲状腺炎---硬く、圧痛がある 

        Plummer病---腺腫、つまりび漫性ではない

3.甲状腺機能亢進症の症状を挙げましょう。

    頻脈、動悸、易疲労感、発汗過多、暑さに弱い。手指振戦、皮膚湿潤、体重減少、 軟便、下痢・・・

4.この症例で調べる甲状腺機能の血液検査は何でしょう。

    抗サイログロブリン抗体
    抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体 (抗マイクロソーム抗体)

5.膠質反応の臨床的意義は何でしょう。

    免疫グロブリンの増加
    TTTはIgM、ZTTはIgGの増加をより強く反映している
    ⇒多くの場合肝機能検査に分類されている
    ⇒ではいったい膠質反応が異常を示す肝障害ってなんだ・・・

    膠質反応が異常高値を示す肝障害

        自己免疫性肝炎・・・肝硬変でなくても
        肝硬変
        なぜ肝硬変で膠質反応が高値となるか?        
            肝硬変では門脈圧が亢進している
            門脈系の短絡が形成されている
            →腸内細菌の菌体成分であるエンドトキシンや食物由来の外来抗原が肝内で処理されずに大循環系に入るため、そのことが抗原刺激となって免疫系を刺激する
            →多クローン性高γグロブリン血症

6.この症例の肝障害の診断に必要な血液検査は何でしょう。

    自己抗体の検索
        抗核抗体(ANA)、抗平滑筋抗体
        免疫グロブリンないしIgGの定量

7.この症例で考えられる肝障害の診断のポイント(診断基準)はなんでしょう。

      肝組織像:ウイルス性慢性肝炎と区別できない
      原則的には肝炎ウイルスは陰性
      自己抗体陽性---抗核抗体(ANA)、抗平滑筋抗体
      高γグロブリン血症---免疫グロブリンないしIgGが2g/dl以上(1996)

8.この症例の肝組織生検所見はどうなっているのでしょう・・・図示しましょう。

    new_pa22.jpg (26013 バイト)

9.診断確定後の治療はどうするでしょう。

    ステロイド:プレドニゾロン30〜40mg/日から開始し、肝機能の改善とともに漸減し、5〜10mg/日の維持量に持っていく。
    Azathioprineなどの他の免疫抑制剤やウルソデオキシコール酸を併用してステロイド維持量をできるだけ少なくする努力をする。

自己免疫性肝炎に合併しやすい疾患・・・
慢性甲状腺炎
Sjogren症候群:SS-A抗体、SS-B抗体
慢性関節リュウマチ:RF
強皮症:U3-RNP抗体