症例6解説

1.会話の中から問題点をリストアップし、業界用語で表現しましょう。

腹痛
発熱
体重増加---肥満

2.身体所見について
@振り子様に移動する臓器はなんでしょう---胆嚢

A右季肋部痛、発熱、黄疸から考える徴候はなんでしょう。

Charcotの3徴:腹痛、発熱、黄疸

Raynoldsの5徴:腹痛、発熱、黄疸、
ショック、意識障害

3.問診と身体所見をとった時点で行わなければならない検査はなんでしょう。

腹部超音波検査---必須

4.画像検査上の特徴的所見を何といいますか。

結石の存在
strong echo、acoustic shadow
閉塞性黄疸
肝内胆管:parallel sign、shot gun sign
→拡張した肝内胆管と門脈が平行して走行する

5.血液検査所見をどう理解したらいいのでしょう。
@黄疸のタイプは?

閉塞性黄疸
肝内胆汁うっ滞
→この症例では閉塞性黄疸

A赤沈亢進とCRP陽性の違いは?

赤沈亢進
アルブミンの低下
フィブリノーゲン、γグロブリンの増加
貧血
CRP上昇
急性相蛋白:炎症に伴ない早期から上昇

Bこの症例で赤沈とCRPに乖離がある理由はなんでしょう。

DICの合併のため
DICではフィブリノーゲンが消費されて減少するため赤沈は改善する

赤沈亢進とフィブリノーゲン


6.この症例で高アミラーゼ血症をきたす原因・機序はどう推定されるでしょう。

共通管説:commn channel theory
総胆管と主膵管の合流部で結石が嵌頓し共通管となって、感染胆汁が膵管に入って、膵酵素を活性化するため、急性膵炎を併発。

7.血液凝固検査から考えられる病態を説明しなさい。

DICの合併
内因系、外因系の凝固因子活性の低下
フィブリノーゲンの減少とFDPの増加

8.この症例の治療方針について説明しなさい。

急性閉塞性化膿性胆管炎---まずこれ!
→PTC-Drainage(超音波ガイド下穿刺)で閉塞機転の解除
抗生剤投与
膵炎・DICに対し、蛋白分解酵素阻害剤
場合によっては、血漿やATVを補給

黄疸をみたら必ず思い浮かべる・・・

閉塞性
肝細胞性
溶血性
肝内胆汁うっ滞
体質性

鑑別のためまずやることは・・・

胆管拡張の有無を検索
--腹部超音波検査
総胆管のサイズ
肝内胆管:parallel sign、shot gun sign
溶血を検索
--貧血、尿中ビリルビンとウロビリノーゲン
それ以外は肝に異常

閉塞性黄疸なら・・・

まず胆道ドレナージを考える
Percutaneous transhepatic cholangiography and drainage: PTCD
Endoscopic retrograde biliary drainage: ERBD

でもその前に確認・・・

胆道ドレナージをする時には出血が最も危険
出血傾向の有無を確認したい
出血時間、血液凝固時間をチェック
それが出来ない時でも、ビタミンKは投与したい

なぜ閉塞性黄疸で出血傾向?

腸管への胆汁分泌が障害されると、脂溶性ビタミンの吸収障害が起こる
脂溶性ビタミン---K、D、A、E
その中でも---Kに依存した血液凝固因子はrapid turnover proteinと呼ばれ、半減期が3〜7日ときわめて短い

つまり血液凝固因子は・・・

胆道閉塞によって黄疸が顕性化してくる頃、つまり、3日以上胆汁分泌障害が続けば、凝固因子の減少に伴なう、出血傾向を念頭においておかなければいけない

Prothrombin timeは何の検査?

肝臓での蛋白合成能の指標のひとつで、 Rapid turnover proteinと呼ばれる
急性肝炎などでの肝細胞壊死の程度を反映する検査と考えられている
だから、劇症肝炎の診断基準にもなっている・・・PT40%以下、かつU度以上の肝性脳症

脂溶性ビタミン欠乏症として・・・

ビタミンKの欠乏症は比較的短期間で出現しうる---出血傾向
ビタミンDの欠乏症は、長期にわたる胆汁うっ滞で出現する--- PBCにおける骨粗鬆症、病的骨折