症例1解説

    1.会話の中から患者さんの問題点を医学用語でリストアップしましょう。

全身倦怠感、食欲不振、発熱、褐色尿。脱水時の濃縮尿は泡まで褐色にはならないけど、ビリルビン尿は泡まで褐色になる。「麦100%だと泡までおいしい」なんていうビールもあった。

    2.追加すべき問診事項はどれだろう。

既往歴、手術歴、輸血歴、薬剤服用歴、渡航歴、アルコー ル摂取量、家族歴、最近食べたものについて・・・季節によっては生牡蠣。

    3.バイタルサインてどれだろう。

生きているか死んでいるかを判断する指標ですね・・・体温、血圧、脈拍数、呼吸数、意識状態です。毎年、国試にでます。

    4.結膜の黄疸の見方はどうする。

球結膜を調べる時、患者さんに下を見てもらう・・・「鼻の頭をみて」なんて言え ばわかりやすいと思います。

    5.肝の触診法はどうする。

両方の手を使うので双手診という。右手は少なくとも肋弓下右鎖骨中線あるいは胸骨下正中線において、吸気時に下がってくる肝臓を触知しましょう。もし、肝臓を触知したら、大きさ(形)、辺縁、表面、硬さ、圧痛について記載しましょう。

    6.この触診所見をどう解釈する。

        肝腫大がある・・・どんな時肝腫大を起こすか。

        肝全体の腫大・・・アルコール性肝障害、肝内占拠性病変。

        正中線上では触れるが、右鎖骨中線では触れない・・・肝硬変。

    7.検尿所見をどう解釈する。

        肝細胞性黄疸。

    8.高ビリルビン血症の原因はなんだろう。

        肝細胞性黄疸は急性肝炎と肝硬変非代償期に出現する。この場合は急性肝炎。

    9.急性肝炎と慢性肝炎を区別する指標はあるだろうか。

これはなかなか難しい・・・時間的経過やウイルスマーカー、組織学的所見を考慮して決定することが多い。

    10.プロトロンビン時間てなんだろう。

PT時間は 実は凝固系と言っても肝機能検査に分類されている。ビタミンKに依存して肝細胞が作り出す蛋白質です。肝細胞機能を反映する重要な検査なのだと覚えておきましょう。

    11.肝炎ウイルスマーカーからどういうことがいえるのだろう。

        IgM-HA抗体陽性・・・現在HAVに感染している

        HBs抗原陰性・・・・・・現在HBVに感染していない

        HCV抗体陰性・・・・・・現在HCVに感染していない

    12.この症例の肝組織生検所見はどうなっているのだろう。

肝組織所見:肝実質炎として、@肝細胞壊死、spotty or focal necrosis、A肝細胞索の乱れ、B肝細胞および核の大小不同、C好酸体(Councilman body)の出現、DIto細胞の増生、EKupffer細胞の動員、F門脈域の浮腫状拡大、細胞浸潤、胆管増生などが認められる。

AH H-E.jpg (298521 バイト) 図は急性肝炎の肝生検組織像

    13.今後の経過について注意しなくてはいけないことはなんだろう。

急性肝炎の経過で重要なのは、劇症化と慢性化である。前者は発症後8週以内に@肝性昏睡U度以上の脳症をきたし、Aプロトロンビン時間40%以下を示すものである。後者はHCVに感染しているか否かが問題で、PCR法によるウイルスの核酸そのものを検出する方法が優れている。この症例では劇症化についての配慮が必要であるが、A型急性肝炎ではまれです。