劇症肝炎

T. 定義

急激に起きる肝広汎壊死に基づいて、急速に肝不全症状が現れる肝炎で、臨床像の上で肝萎縮、進行性の黄疸、なんらかの精神神経症状を伴うものを指す。なかでも肝性昏睡は疾患の重篤度を知る上で有用で、発病前に健康であった症例では特に重視されるべき症状である。したがって肝機能面では発病する前は正常にあり、重篤な肝障害に基づく肝不全症状が8週以内に現れる場合とする。(原文 日消誌 69:855, 1971)

U. 病因

ウィルス性肝炎および薬剤性肝障害

V. 診断

劇症肝炎とは肝炎のうち症状発現後8週以内に高度の肝障害に基づいて肝性昏睡U度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示すものとする。そのうちには発病後10日以内に脳症が発現する急性型とそれ以後に発現する亜急性型がある。

●理学的所見:肝性脳症、黄疸、肝萎縮(肝濁音界の消失)、腹水

●生化学的検査所見:肝の合成機能障害@プロトロンビン時間、Aヘパプラスチンテスト(凝固因子U、Z、\、])、BRapid turnover protein(プレアルブミン、a 2 heat stable glycoprotein(a 2HS))、C総コレステロール

トランスアミナーゼ値は重要でない。

●画像診断:CT、Echoで肝萎縮の確認

W.鑑別診断

1. Late onset hepatic failure(LOHF):症状発現後8週以降、6ヵ月未満に肝性昏睡U度以上の脳症をきたし、プロトロンビン時間40%以下を示すものをいい、肝再生が極めて乏しい病態。

0

10日

8週

6ヵ月

劇症肝炎急性型

劇症肝炎亜急性型

LOHF

 

 

 

 

 

 

 2. Acute-on-chronic(AOC):代償された慢性肝疾患の経過中に新たな原因が加わって意識障害を主体とする急性肝不全症状を呈したもの。

X.予後

劇症肝炎の救命率は30%前後であって、その予後はきわめて不良である。しかし、劇症肝炎肝炎を急性型と亜急性型に分けると、急性型の救命率は60%と改善されているが亜急性型では10%にも満たない。

Y.治療

1. 全身管理:循環器系の管理、脳圧亢進、痙攣、消化管出血、腎不全、低血糖、感染、栄養管理

2. 特殊療法:血漿交換療法、グルカゴンーインスリン療法、アンチトロンビンV投与、ステロイド療法、インターフェロン療法