2012年5月

「医科大どおり春号」を掲載しました。

当院では、年4回(季刊誌)医科大どおりを発行しています。

医科大どおりは、当院の情報やトピックスなどを掲載し、患者さまや地域の先生方と情報交換を行い、病診連携を深めることを目的に発行されています。

今後も、いつでも誰でも安心してかかれる病院をモットーに医療や健康に関する情報を提供させていただきます。

医科大どおり春号はこちらです。

クールビズの実施について

当院では、地球温暖化防止と節電対策の一環として、6月1日から10月31日まで“クールビズ”(ノー上着・ノーネクタイ・ノー長袖)を実施します。

皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。

 

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金沢医科大学 教えて!ドクター 第2回

 

大腸がんの治療法 

早期に発見すれば内視鏡切除で完治

 

 大腸がんは戦後、食生活の欧米化を背景に急速に増加してきました。がんの中で罹患率は2位、死亡率は3位となっています。しかし、早期に発見し、内視鏡による切除治療などを適切に行えば、ほとんどが完治できる「治りやすいがん」でもあります。大腸がん治療の権威である髙島茂樹金沢医科大学副理事長・金沢医科大学氷見市民病院長に最新の治療法をうかがいました。

 

【今月の回答者】

髙島 茂樹(たかしま しげき)

金沢医科大学副理事長
金沢医科大学氷見市民病院長

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増加の背景は食生活の欧米化

大腸がんは発生部位によって結腸がんと直腸がんに分類されます。患者数は結腸がんの方が多く、また女性より男性の方が多くなっています。2008年における大腸がん全体の患者数は約23万5000人、死亡者数は約4万3000人です。

戦後、日本人の大腸がん、特に結腸がんが急速に増えてきた大きな理由は食生活の欧米化だと考えられています。肉類やバター・マーガリン類など動物性脂質の多い食物の摂取量が増えた半面、野菜類などに多く含まれる食物繊維の摂取量が減ったために、がんの発生しやすい腸内環境になってきたのでしょう。

元々、日本人は大腸がんよりも胃がんになる人が圧倒的に多かったのですが、ハワイに移住した日系移民に大腸がんになる人が多いという疫学調査・研究が報告され、食生活の変化が関与しているとの見方が定説になりました。マウスを使った実験でも、動物性脂質を多く与えると大腸がんになりやすいことが分かっています。

分かりやすく説明しますと、食物繊維の少ない消化しやすいものを中心に食べていると大便の量が減り、便意が弱まって便秘になりやすくなります。その結果、大腸の粘膜に発がん物質やがんを誘発する物質が接する時間が長くなります。加えて、脂肪分の多い食事を続けると、肝臓から脂肪を分解・吸収する胆汁酸が多く分泌されます。胆汁酸は発がんを促進する作用があり、大腸がんが発生しやすくなるのです。

厚生労働省の調査では、1955年に1日あたり20・3グラムだった日本人の脂質摂取量は、2000年には57・4グラムと3倍近くに増えています。

 

腫瘍マーカーでは早期発見は難しい

大腸がんは初期のうちは無症状です。したがって、早期発見のためには年に1回程度、大便に血が混じっていないかを調べる便潜血検査を受けましょう。一般的な健康診断で行われている方法で、2日間続けて大便を採取するのが基本になっています。

自分でも大便を観察して、もし血が混ざっているようなら、すぐに専門医を受診して、きちんと調べてもらってください。また、痛みがなくて便に血が付く場合は痔よりも直腸がんを疑う必要があります。

第2段階の検査は大腸内視鏡検査が基本になります。肛門から内視鏡を挿入して直腸から盲腸までを調べます。最近では15~20分程度で終わりますので、患者さんにとってはそれほど苦痛ではありません。もしポリープや腫瘍などが見つかれば、病変部の一部を採取して生検(組織検査)を行い、確定診断となります。

体内に腫瘍ができると、健康なときにはほとんど見られないがんから分泌される特殊な物質が血液中に出てきます。これを腫瘍マーカーと言います。大腸がんの診断でも腫瘍マーカーが使われますが、これは早期発見にはつながりません。大腸がんができていても陽性にならない例が多く、あてにできないのです。ただ、手術後の再発のチェックに有用と言えます。

 

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腹腔鏡手術は患者負担の軽減に

胃がんは潰瘍を伴う症例が多いのに対して、大腸がんは腸管の粘膜にできたポリープから発がんするケースが圧倒的に多いのが特徴です。この場合、早期であれば、内視鏡でポリープを根元から切除するだけで治療は終わります。再発もほとんどありません。

この治療法では、内視鏡の先端に取り付けた細いワイヤーでポリープの付け根を締め付け、高周波電流を流して焼き取ります。隆起した形状のものだけでなく、平べったくて取りにくいポリープでも、粘膜や粘膜下層までにとどまっているがんなら、内視鏡で切除できます。

しかし、がんが粘膜下層を越えて筋肉の層まで達している場合は内視鏡では対応できず、病変部を含めて腸を切り取ってつなぎ合わせる腸切除手術を行わなければなりません。結腸がんで説明しますと、病変部から盲腸側と肛門側のそれぞれ10センチ程度以上、腸を取ってしまいます。併せて、がん細胞が転移している可能性のある病変部周囲のリンパ節も切除します。がんが腹膜に浸潤しているときは、可能な範囲でそれも切除します。

この治療法には開腹手術と腹腔鏡手術があります。腹腔鏡手術はお腹の4、5カ所に小さな穴を開け、小型カメラと切除器具のついた腹腔鏡で画像を見ながらがんを摘出します。開腹手術に比べ体への負担が少ないというメリットがあり、近年、普及が進んでいますが、症例を選んで実施することが大切です。

がん細胞が血液の中に入り、血流に乗って転移する場合もあります。結腸がんは肝臓に転移する例が最も多く、直腸がんは肺に転移しやすいという違いがあります。肝臓や肺に転移していても単発的であれば、切除治療によって50%以上が完治しますので、積極的に治療すべきです。ただし、転移個所が多いときは化学療法に頼ることになります。


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臨床研修医らに大腸がんの症例について指導する髙島副理事長


治療技術の進歩で人工肛門は減少 
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「治せるがんはすべて治す信念で臨んでいる」
と語る髙島副理事長

 

直腸がんは周辺に排尿や生殖をつかさどる器官や神経、リンパ管が集まっており、デリケートな手術が要求されます。かつては、がんに関係しているリンパ節のすべてを切除するのが難しく、予後もあまりよくありませんでしたが、近年は治療技術が格段に進歩し、以前は60~70%だった局所再発率が5%未満にまで減りました。

また、15年ほど前までは、人工肛門を設ける例が多かったのですが、肛門括約筋を温存しながら腸管をつなぐ技術が進歩し、人工肛門造設はめっきり減りました。今では肛門から病変部まで2、3センチ程度以上離れていれば肛門を温存できます。

外科的治療を行った後は補助的に抗がん剤による化学療法を行います。分子標的薬も数多く開発されていますが、当たり外れがあり、全面的に信頼するわけにはいきません。非常に高価なのもデメリットです。


早期治療なら5年生存率100% 

私はこれまでに4000例近い大腸がん手術を手掛けてきました。金沢医科大学病院時代は年間約100例、金沢医科大学氷見市民病院に移ってからも年間約50例の手術を行っています。患者さんの数は増える傾向にあり、富山県内はもとより金沢や小松、能登方面からも訪れています。

治療には「治せるものはすべて治す」という強い信念を持って臨んでいます。それが外科医としての最も大切な心構えだと思っています。診断精度の向上と最適な治療法選択のために、症例ごとに自ら病理解析もやってきました。その積み重ねがあってこそ、治療成績を高められるのです。「難しい手術だから半分成功すれば十分」などという甘ったれた考え方では、残り半分の患者さんに申し開きできません。

ご参考までに、私の金沢医科大学病院時代のステージ(病期)別治療成績をグラフで紹介しておきます。どのステージでも全国平均を上回っていると自負していますが、特に注目していただきたいのは結腸がんならステージ0とⅠ、直腸がんでもステージ0なら5年生存率は100%だという点です。

大腸がんは早期に発見し、適切な治療を行えば、完全に治せるがんだということをぜひ知っておいてください。

 

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【月刊北國アクタス2012年5月号掲載】

金沢医科大学病院

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