2012年12月

年末年始の休診についてお知らせいたします。

『12月29日(土)~1月3日(木)』は年末年始のため、外来診療は休診し、病院バスも運休となります。

休診期間は、緊急を要する患者さまを対象とした診療体制となります。

緊急以外は待ち時間が長くなりますので、近隣の医療機関をご利用くださいますようお願いいたします。

金沢医科大学 教えて!ドクター(第8回)を掲載しました。

医科大病院特集ページに「金沢医科大学 教えて!ドクター」を掲載しました。
掲載記事は「月刊北國アクタス(北國新聞社)」で紹介されているもので、
毎月、最新の治療法や医療に関するトピックスを本学の医師が分かりやすく説明します。

「金沢医科大学教えて!ドクター」はこちらです。

金沢医科大学 教えて!ドクター 第9回

 

脳卒中リハビリの新潮流 

脳刺激する「ニューロ・リハ」に脚光

 

従来の脳卒中リハビリは、障害のない側の手足などを訓練し、日常生活動作を改善するという考え方でしたが、近年は脳にさまざまな刺激を与えることで、麻痺している側の機能回復を図る「ニューロ・リハビリ」が脚光を浴びています。脳卒中リハビリの新潮流について、金沢医科大学リハビリテーション医学科の影近謙治教授に教えていただきました。

 

【今月の回答者】


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影近 謙治(かげちか けんじ)  

金沢医科大学リハビリテーション医学教授     
金沢医科大学病院リハビリテーション医学科教授(科長)         


画像診断の進化で脳の可塑性明らかに

かつては死亡原因のトップだった脳卒中ですが、現在はがんや心疾患を下回るようになりました。しかし、命が救われても、手足などに麻痺が残ることが多いため、寝たきりになる原因では相変わらず第1位となっています。

こうした後遺症がある場合、日常生活への支障を少しでも減らすためにリハビリが行われます。従来のリハビリは不自由になった手や足の機能回復は期間を決めて行い、麻痺していない側の手や足の機能訓練を行って、ある程度の日常生活動作ができるようにすることを目的としていました。

ところが近年、脳にさまざまな刺激を与えることで麻痺のある手足の機能回復に努める、より積極的な脳卒中リハビリ法がいくつも開発され、実践されています。これらは「ニューロ・リハビリテーション(ニューロ・リハ)」と呼ばれています。

脳の血流スキャンや機能的MRIなど画像診断技術の著しい進化により、脳に「可塑性」があることが明らかになってきました。死滅した脳神経細胞は生き返りませんが、脳に特定の刺激を与えることで、周辺の脳神経細胞が再構築され、死んだ細胞の機能を補ったり、代償したり、別の神経回路を構築したりするのです。この可塑性を活用したリハビリが「ニューロ・リハ」なのです。

 

患者さんごとに最適な組み合わせで

具体例を紹介しましょう。まず、「磁気刺激療法」は大脳に反復的に磁気刺激を与え、手の麻痺の改善や言葉の障害の改善を目指します。「ミラーセラピー」は麻痺していない手の動きを鏡に映し、それを見つめることで脳に錯覚を起こさせ、麻痺している手を動かせるようにする治療法です。

 「CI療法」は動かせる手を強制的に使えないようにして、麻痺側の手だけで集中的に作業し、麻痺手の改善を促します。治療的電気刺激法や「川平法」は麻痺した手足を繰り返し刺激することで麻痺の回復を促進する治療法です。

食中毒の原因となるボツリヌス菌のタンパク質を筋肉に注射する「ボツリヌス療法」もあります。脳の障害で筋肉が異常に緊張し、ひじが曲がったままになったり、手指が握り込まれたりしている状態を、緊張を緩和することで改善する方法です。脳の障害や麻痺自体を治すわけではありませんが、脳卒中を発症してから5年後、10年後でも効果が期待できます。

もちろん、「ニューロ・リハ」はすべての患者さんに適用できるわけではありませんし、効果も患者さんによって異なります。金沢医科大学病院では「ニューロ・リハ」を導入しており、従来からのリハビリ療法と併用しながら、個々の患者さんにとって最適な組み合わせを選択して治療に当たっています。

 

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「ボツリヌス療法」の治療前(上)と治療後

 

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「ミラーセラピー」の様子

 

大学病院初の一般病棟リハも

金沢医科大学病院の特色の一つは、38床の回復期リハビリ病棟があることです。本体病院に回復期リハビリ病棟を有する大学病院は全国に3つしかありません。急性期を脱した患者さんに短期集中でチームリハビリを施し、早期に自宅に戻っていただくことを目指しており、実際に80%以上の患者さんが自宅復帰を果たしています。

ここでは専従の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士などのセラピストがいるだけでなく、看護師もリハビリ知識を持っており、1年365日無休で、リハビリテーションセンターの訓練室や病棟内でのリハビリを実施しています。

2年前からは大学病院では全国で初めて、神経内科・脳神経外科の一般病棟にも6人の専門スタッフを配置して、集中的な脳卒中リハビリを始めました。脳卒中に限らず、リハビリはなるべく早期に開始した方が合併症を招きにくく、在院日数も短くなることが分かっていますので、超急性期の段階から本格的なリハビリを開始するようにしたわけです。

訓練室だけがリハビリの場所ではありません。ベッドでも、廊下でも、洗面所やトイレでも機能訓練はできます。病棟全体をリハビリ訓練室として活用し、患者さんが1日でも早く退院できるように後押ししています。将来的にはこのシステムを全病棟に広げたいと考えています。

 

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回復期リハビリ病棟における手のリハビリ

 

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回復期リハビリ病棟における歩行訓練

 

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一般病棟における急性期早期からのリハビリ

 

障害は「プラスの個性」希望持って挑戦を

脳卒中を発症して障害が残ってしまった現実を受け入れるのは簡単ではありません。苦しいリハビリに挑戦する意欲がなかなか湧かない患者さんがいるのも事実です。

しかし、障害はマイナスではありません。リハビリに取り組むことで、少しずつかもしれませんが確実にプラスに改善していくのです。ましてや「ニューロ・リハ」の登場によって、リハビリの選択肢や可能性が大きく広がりました。希望を持ってリハビリに挑戦していただきたいと思います。

 

画期的な脳梗塞治療薬「t-PA」◉長山 成美

(金沢医科大学神経内科学講師、金沢医科大学病院神経内科講師)


血栓そのものを溶解
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脳血管障害である脳卒中には脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などがあります。この中で最も発症数が多い脳梗塞は、脳の血管が血栓によって詰まり血流が止まる疾患です。その結果、詰まった先の脳細胞が死んでしまい、生命がおびやかされるだけでなく、命が助かっても多くは片麻痺などの障害が残ります。

従来の治療法は「病状を悪化させない」という考え方を基本とし、抗血小板療法、抗凝固療法、抗浮腫療法、脳保護療法などが行われてきました。

しかし近年、薬によって血栓そのものを溶かして血流を回復させる画期的な治療法が実践されるようになりました。「t-PA」という血栓溶解薬を投与する血栓溶解療法です。2005年10月に厚生労働省から使用が承認されました。


「3時間以内」が要件

「t-PA」の投与により迅速に血流が回復して、劇的な効果が得られる例もあります。ただし、この治療法を適用するにはいくつもの要件があります。最大の要件は「発症3時間以内の治療開始」です。それを超えると効果が期待できないばかりか、脳内出血を招くリスクが高くなるからです。

脳梗塞の検査には30~40分必要です。診断を行い、治療方針を決定する時間も考えると、発症後1時間半以内に病院に到着できるかどうかが分かれ目になります。この「3時間の壁」に阻まれるケースが多く、実際に「t-PA」を投与できる患者さんは2、3%にしかすぎません。

日本脳卒中学会では「t-PA」の適応を4時間半まで延ばす方向性を打ち出しています。しかし、一刻も早く投与するに越したことはありません。

他の治療法でも、できる限り早く治療を始めることが後遺症を軽くするうえで重要です。脳梗塞の前兆である一過性脳虚血発作と診断された場合も、「1、2日は大丈夫だろう」と高をくくらず、すぐに専門医のいる病院を受診してください。

 

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血栓溶解薬「t-PA」による脳血管血流の改善例。
(a)が投与前、(b)が投与後



 

【月刊北國アクタス2012年12月号掲載】


金沢医科大学病院

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