2013年1月

金沢医科大学 教えて!ドクター(第9回)を掲載しました。

医科大病院特集ページに「金沢医科大学 教えて!ドクター」を掲載しました。
掲載記事は「月刊北國アクタス(北國新聞社)」で紹介されているもので、
毎月、最新の治療法や医療に関するトピックスを本学の医師が分かりやすく説明します。

「金沢医科大学教えて!ドクター」はこちらです。

金沢医科大学 教えて!ドクター 第10回

 

体にやさしい酒の飲み方 

おいしく、楽しく、ほどほどに

 

忘新年会をはじめ、お酒を飲む機会が多い季節です。「百薬の長」ともいわれるお酒ですが、長きにわたって大酒を続けると肝臓に障害をきたし、死に至る場合もあることは呑兵衛ならご存じのはず。どのようにお酒と付き合えば体に害が少ないのか。アルコールと肝臓との関係について金沢医科大学消化器内科学の堤幹宏特任教授に教えていただきました。

 

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【今月の回答者】

堤 幹宏(つつみ みきひろ)    

金沢医科大学病院肝胆膵内科教授(科長)

 

適量のお酒は死亡率を下げる

「Jカーブ効果」という言葉をご存じでしょうか。飲酒と死亡率との相関関係を調べた疫学調査の結果に基づいて、縦軸を死亡率、横軸を1日のアルコール摂取量とするグラフを作成すると、図のように「J」の字のようなカーブを描きます。全くお酒を飲まない人よりも一定程度まで飲む人の方が死亡率は低く、その閾値を超えると、飲酒量の多さに比例して死亡率が急速に高まることが示されています。

これはアルコールがHDLコレステロール(善玉コレステロール)のレベルを上げ、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)のレベルを下げる働きがあるため、動脈硬化を予防し、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが低くなるからだと考えられています。つまり、適量のお酒は体に良い影響を与え、まさに「百薬の長」という言葉が当てはまるわけです。

では、適量とはどれくらいを指すのでしょうか。一般的にはアルコール量で1日20~40グラム、日本酒に換算すると1~2合程度ということになります。もちろんアルコール耐性をはじめ、さまざまな要因による個人差がありますし、肥満の人だと1~2合でも多すぎるとされています。

 

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毎日5合飲めば2週間で脂肪肝に
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体内に入ったアルコールの90%以上は肝臓で代謝されます。小腸から肝臓に送られたアルコールは、アルコール脱水素酵素(ADH)とCYP2E1という2種類の酵素によって毒性のあるアセトアルデヒドに分解され、さらにアセトアルデヒド脱水素酵素(ALDH)によって無毒な酢酸に分解されます。最終的には二酸化炭素と水に分解されて体外に排出されます。日本酒1合分のアルコールを代謝するには3時間程度かかります。

お酒を飲みすぎると顔面紅潮、頭痛、吐き気、嘔吐などの中毒症状をきたすのはアセトアルデヒドのせいです。二日酔いもアセトアルデヒドが朝まで残っているために起こる現象です。仮に午後8時から日本酒5合分のお酒を飲めば、アルコールが分解されるまでに15時間かかりますから、朝7時に目覚めた時は二日酔いになっていて当然なのです。

少し専門的になりますが、この代謝の過程でNADという補酵素がNADHに変わり、常習飲酒を続けると肝臓のNADHが増えていきます。そうすると脂肪酸分解メカニズムのバランスが狂い、肝細胞に中性脂肪が貯まっていきます。これがアルコール性脂肪肝です。

1日5合の日本酒を飲み続ければ2週間で脂肪肝になってしまいます。1日に日本酒3合分のお酒を5年以上飲んでいる人なら、ほぼ間違いなく脂肪肝だと言えるでしょう。

脂肪肝は繊維であるコラーゲンを増やして肝線維症を引き起こし、さらに進行すると肝硬変に至ります。肝臓は本来、再生力の強い臓器で、1カ月間、禁酒すれば脂肪肝は治ります。肝線維症までであれば、禁酒により回復は可能です。

しかし、肝硬変まで進んでしまうと肝機能は回復できませんし、死に至ることもあります。お酒を飲むことは肝細胞の線維化を促す行為であることを自覚しておきましょう。

 

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がんリスク高めるCYP2E1の増加                                   

アルコールのもう一つの大きなデメリットはがんになりやすいということです。常習飲酒者には肝臓がんはもとより、食道がん、胃がん、大腸がんなどになる人が多いことが分かっています。

その原因は先ほど触れたCYP2E1にあると考えられています。お酒を飲めば飲むほどCYP2E1が増加します。もともとお酒をあまり飲めなかった人が“修業”を積んでいくことで次第に飲めるようになるのはCYP2E1が増えていくからです。

それだけなら問題はないのですが、このCYP2E1には前がん物質をがん物質に変える働きがあります。だから酒を飲めば飲むほどがんになるリスクが高まるわけです。

お酒に強い体質か、弱い体質かはALDHの遺伝子で決まっています。①分解能力が非常に高い②分解能力が低い③全く分解できない、の3パターンの遺伝子があり、欧米人のほとんどが①であるのに対して、日本人は①と②が各約45%、③が約10%となっています。

アルコールはどれだけ飲んでも満腹感がないため、過剰摂取に陥りがちです。そこに大きな危険性が潜んでいます。お酒に強い人はもとより、元来あまり飲めない人も長年にわたって飲み続けているうちに次第にお酒に強くなり、やがてアルコール依存症になりやすい傾向がありますので安心できません。


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長く飲みたいなら節酒と休肝日を                                   

日本酒4合分のお酒を毎日飲む生活を20年間続けると、ほとんどの人が肝障害を起こします。1日に飲む量を3合に減らせば、肝障害が起きるまでの期間が6~7年延びますし、2合に減らせば20年延びます。お酒を長く飲み続けたいのであれば、節酒を心掛けることがカギになるわけです。

休肝日を設けることも大切です。1日3合飲む人が週1回の休肝日を設ければ、1日平均約2・6合に減る計算になります。それだけで肝障害が起きるまでの期間を約4年延ばすことができます。

 「体にダメージが少ないのは焼酎」などといわれますが、こと肝臓への影響に関する限り嘘だと思ってください。あくまでも摂取アルコールの絶対量の問題であって、日本酒、ビール、ワイン、ウイスキーといった酒の種類は関係ありません。

肝臓の負担をやわらげ、悪酔いしないためには空酒を避け、肴をつまみながら飲むようにしましょう。アルコールの吸収が遅くなり、酒の回りもゆっくりになります。また、炭酸は胃の動きを速くするため、肝臓にアルコールが早く吸収され酔いが早くなります。チューハイやハイボールは口当たりが良いので、ついつい飲みすぎてしまいがちなので気をつけましょう。

二日酔い防止には早めの時間に酒を切り上げること。遅くとも午後11時ごろまでに飲み終えれば、よほど飲み過ぎない限り二日酔いにはなりません。アルコール分解には多くのエネルギーを消費しますので、睡眠をしっかりとることも必要です。

適度に飲むお酒は体に良いだけでなく、ストレスを解消し、人の垣根を取り払うなどさまざまな効用があります。「酒礼五戒」を参考にして、おいしく、楽しく、ほどほどに飲みたいものです。

 

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【月刊北國アクタス2013年1月号掲載】


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