2013年2月

金沢医科大学 教えて!ドクター(第11回)を掲載しました。

医科大病院特集ページに「金沢医科大学 教えて!ドクター」を掲載しました。
掲載記事は「月刊北國アクタス(北國新聞社)」で紹介されているもので、
毎月、最新の治療法や医療に関するトピックスを本学の医師が分かりやすく説明します。

「金沢医科大学教えて!ドクター」はこちらです。

「医科大どおり冬号」を掲載しました。

当院では、年4回(季刊誌)医科大どおりを発行しています。

医科大どおりは、当院の情報やトピックスなどを掲載し、患者さまや地域の先生方と情報交換を行い、病診連携を深めることを目的に発行されています。

今後も、いつでも誰でも安心してかかれる病院をモットーに医療や健康に関する情報を提供させていただきます。

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金沢医科大学 教えて!ドクター(第10回)を掲載しました。

医科大病院特集ページに「金沢医科大学 教えて!ドクター」を掲載しました。
掲載記事は「月刊北國アクタス(北國新聞社)」で紹介されているもので、
毎月、最新の治療法や医療に関するトピックスを本学の医師が分かりやすく説明します。

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金沢医科大学 教えて!ドクター 第11回

 

最先端のうつ病診断法

 光トポグラフィー検査 

近赤外線使い脳機能を「見える化」

 

 判別が難しいとされるうつ病の診断に頼もしい助っ人が登場しました。近赤外線を使って脳血流を測定し、脳機能を「見える化」した「光トポグラフィー検査」です。北陸で唯一、「先進医療」に承認された金沢医科大学病院は、昨年4月からうつ病診断に導入しています。最先端検査手法の仕組みやメリットなどを金沢医科大学精神神経科学の川﨑康弘教授にうかがいました。

 

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【今月の回答者】

川﨑 康弘(かわさき やすひろ)    

金沢医科大学精神神経科学教授
金沢医科大学病院神経科精神科教授(科長)

 

診断を難しくする類似症状疾患

うつ病の増加が大きな社会問題になっています。国内の患者数は300万人以上と推計されていますが、医師の診断を受けて治療をしている人は3分の1にとどまります。自殺につながることもあるデリケートで複雑なこころの病だけに、安易にとらえないで早めに専門的な診察を受けるようにしていただきたいものです。

うつ病が医師にとって厄介な病気である理由の一つは、似たようなうつ症状を示す疾患がいくつもあり、診断が難しいことです。躁状態とうつ状態を繰り返す双極性障害(躁うつ病)、幻覚や妄想などが現れることの多い統合失調症などはその代表的なものです。認知症の初期にも、うつ病とよく似た症状が見られる場合があります。

また、脳腫瘍や脳梗塞が前頭葉にできると脳の神経細胞が破壊され、うつ状態になることがありますし、自己免疫疾患の一部や甲状腺機能低下症、さらには肝臓や腎臓の機能が悪化した場合も、うつ病と同じような倦怠感や無気力に陥る例が見られます。

類似症状を示すこれらの病気と判別するために、うつ病の診断にはさまざまな検査が行われます。入念に問診を行うのはもちろんですが、血液検査、頭部のCTやMRIなどの脳画像検査、心電図検査、心理検査などを併用しながら慎重に可能性を絞り込んでいきます。 


 脳血流の変化を近赤外線で測定

近赤外線で脳の活動を調べる「光トポグラフィー検査」。北陸では金沢医科大学病院が唯一、実施している

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もっとも、これまでは原因となる脳神経の異常を確認する客観的な検査法がありませんでした。最終的には患者本人の訴えをもとに、経験豊富な医師が診断せざるを得なかったわけです。

しかし、最近になって、脳機能を客観的に評価することで高い確率でうつ病などを診断できる新たな検査法が登場しました。国内で開発された「光トポグラフィー検査」です。

この検査法は「光トポグラフィー検査を用いたうつ症状の鑑別診断補助」として、2009(平成21)年に初めて厚生労働省から先進医療に認められました。金沢医科大学病院も12年3月に北陸3県で唯一、先進医療に承認され、同検査をうつ病診断に活用し始めています。全国的にも導入医療機関はまだ少なく、昨年末現在で18施設にすぎません。

 「光トポグラフィー検査」では近赤外線を用いて脳血流量の変化を測定し、脳機能の状態を検討します。患者さんは近赤外線を脳に照射するヘッドギアをかぶり、いすに座って目の前のコンピューター画面から指示される簡単な課題に答えます。

脳が活動を始めると、思考などを司る前頭葉の神経細胞が活発に働いて大量の酸素が必要になるために、脳血流量が増加します。その量がどのようなパターンで変化するかを測定することで、「正常」「うつ病」「双極性障害」「統合失調症」「その他」に判別します。

患者に与えられる課題は、例えば「『あ』で始まる単語を思いつく限り挙げてください」といった単純な内容です。3種類の課題を20秒ずつ計1分間行います。その前後には「あいうえお」の発声を繰り返す課題も与えられます。準備も含めて検査は15分程度で完了します。近赤外線は安全性が高く、人体への危険性は報告されていません。

 

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患者さんに対する説得力も高まる      

脳機能が正常な場合は課題を始めるとすぐに前頭葉が活性化し、考えている間は高いレベルを維持します。これに対し、うつ病の人はすぐに反応はするものの、波形はあまり高くなりません。また、双極性障害の人は血流量が増えるのに時間がかかり、ゆっくりと波形が高くなっていきます。統合失調症の人は思考中の血流量があまり増えない上、考え終わった後に血流量が増加するなど、変化のタイミングが著しく異なります。

こうした波形パターンの違いを評価のモノサシとすることから、うつ病診断を「見える化」した検査法ともいわれています。もちろん「光トポグラフィー検査」だけで診断を確定するわけではなく、あくまでも「診断補助」に位置づけられているのですが、問診などをもとにした診断結果との一致率は約80%と高く、医師にとって大きな助けになることは間違いありません。特に双極性障害の場合、うつ状態の時に受診するとうつ病との判別が難しいため、「光トポグラフィー検査」による評価が役立ちます。

患者さんに診断結果を伝える際も、「光トポグラフィー検査」のデータがあると説得力が高まります。中には自分がうつ病であることを認めたがらない患者さんもいますので、測定結果を示すことで納得いただいた上で治療を行うことができます。

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「患者さんに対する説得力が高まった」と語る川﨑教授

 

的確な治療に向けて短期検査入院を開始    

金沢医科大学病院は12年9月から、「光トポグラフィー検査」を組み込んだ「こころの健康検査入院」を開始しました。対象はうつ病、双極性障害、統合失調症などによるうつ症状が見られ、他の医療機関で治療を受けている患者さんです。

確定的な診断がつかない場合や、現在行っている治療では改善が見られない場合などに利用していただき、的確な治療に役立てていただくことを目的としています。そのため、主治医の紹介状がある患者さんだけに限定しています。

入院は2泊3日で、「光トポグラフィー検査」をはじめ心電図検査、胸腹部レントゲン検査、採血検査、頭部MRI検査、脳波検査、心理検査、状態評価などを集中的に行います。検査結果は患者さんやご家族に口頭で説明するほか、主治医にも3週間以内に書面で報告します。

公的保険の自己負担が3割の患者さんの場合、費用は先進医療、保険診療を合わせ総額で約6万円です。現在は週1人に限って受け入れています。

詳細は金沢医科大学病院のホームページに掲載していますので、関心がある患者さんや医療機関はご覧になっていただければと思います。申し訳ありませんが、電話によるお問い合わせは受け付けておりません。

同じようなうつ症状が見られても、病気が違えば治療法も違ってきます。かつては双極性障害の治療にも抗うつ薬を使うのが常識でしたが、近年は使わない治療法が世界的な潮流になっています。的確な治療を選択するには、正しい診断がより重要になってきています。

私どもも最先端の診断手法である「光トポグラフィー検査」を活用しながら診断精度をさらに高め、こころの病に苦しむ方々を1人でも多く救っていきたいと考えています。

 

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【月刊北國アクタス2013年2月号掲載】


金沢医科大学病院

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