お知らせ

金沢医科大学 教えて!ドクター 第15回


北陸で唯一

全国でも数少ない専門外来 

嗅覚・味覚外来

 

金沢医科大学病院は北陸で唯一、全国でも数少ない嗅覚・味覚外来
があります。「においが分からない」「嫌な味がする」などで悩む患
者さんに寄り添い、原因を突き止めて治療から生活習慣の改善を指導
するまできめ細かくサポートしています。


 【今月の回答者】


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三輪 高喜(みわ たかき)    

金沢医科大学医学部耳鼻咽喉科学教授

 

嗅覚障害に潜む危険

嗅覚や味覚のトラブルを抱えていても、医者にまでかかるという人はそれほど多くないのが実情です。2009(平成21)年6月、嗅覚・味覚外来ができた当病院でも、受診される方は嗅覚で年間100~200人、味覚で同30~50人程度です。

原因のひとつとして、目や耳が不自由だと日常生活に大きな支障をきたすのに対して、嗅覚や味覚の障害では「こんなものか。仕方ない」と受け止める方が多いからだと思います。しかし、嗅覚障害では火災の発見が遅れたり、ガス漏れに気づかなかったりするなど、命にかかわる危険を伴うので、異常を感じたら速やかに受診されることをお勧めします。

実際、嗅覚・味覚外来を併設する医療機関は全国で五指にも満たないことから、当病院には北陸はもとより東海、近畿、関東から受診される方も珍しくありません。

 

風邪引き後に発症も

近年、嗅覚外来で増加傾向にあるのは高齢者の患者さんです。加齢に伴う嗅覚の衰えもあるでしょうが、アルツハイマー型認知症など脳神経疾患の前症状として嗅覚障害が現れやすいので注意が必要です。

原因で最も多いのが副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎で、年齢や性別を問いません。また、風邪を引いた後、急ににおいが分からなくなることがあります。この理由はまだ解明されていませんが、発生比は男性1:女性5と圧倒的に女性で、しかも中高年に多いのが特徴です。

副鼻腔炎やアレルギー性鼻炎に起因するものは、ステロイド剤の投与や手術で約70%の方が治ります。3~4年前から嗅覚に異常があり、いろいろ治療したものの効果が出ず、当外来を訪ねてこられたある患者さんは、1週間の投薬治療で以前の嗅覚を取り戻し、「まるで魔法にかかったみたい」と喜ばれていました。

一方、風邪引き後の嗅覚障害は漢方治療が中心で、当帰芍薬散を処方します。やはり、約70%の方が改善します。

 

検査設備と機器が充実      

このほかの原因では、交通事故や転倒などで頭部を強打し、脳に障害が残ることで起こります。投薬治療を行いますが、治癒率は約40%にとどまります。このため、患者さんには毎日の生活で嗅覚に関して気をつけるべきことをアドバイスし、注意を喚起しています。

適切な治療にはまず原因の特定が重要なため、当外来では精密な嗅覚検査を行います。基準嗅覚検査キットを使う「T&Tオルファクトメーター」、アリ ナミンなどにおいの強い物質を注射する「静脈的嗅覚検査」などのほか、頭部異常の有無を調べるCT検査を実施します。これらの検査設備や機器類の充実も、 当病院の特徴のひとつです。

そして、検査結果を総合的に判断し、治療法の決定や治療期間のめど、予後の推測などをします。治療中も約3カ月ごとに検査をし、治療効果の確認と経過観察をします。

 

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嗅覚検査に使われる「T&Tオルファクトメーター」

 

亜鉛欠乏で味覚障害に

味覚障害は舌の一部や片側、全体が味覚を感じないなどさまざまです。そして、濃い味でないと感じない(味覚減退)、全く味を感じない(味覚消失)、本来とは異なる味に感じる(錯味)があります。ですから、「味を感じにくくなった」「嫌な味がする」「食べ物の味が変わった」「食事がおいしくなくなった」と思ったら、早めに医師や薬剤師に相談されたほうがよいでしょう。

味覚障害は嗅覚以上に原因の特定が難しいと言えます。一般には、亜鉛が欠乏すると発生しやすくなります。また、降圧剤や消化性潰瘍治療薬、抗うつ剤、抗がん剤など、亜鉛の吸収を抑制する作用や唾液の分泌を抑える作用のある薬で起きることもあります。特に、複数の薬剤投与を受けている患者さんの場合、原因の特定が難しくなります。

このほか、精神的なショックやうつなど心因性の味覚障害もあります。女性に多く見られ、味覚障害全体では嗅覚障害と同様、高齢者の増加が目立ちます。

 

持病治療のため代替薬も   

味覚外来の受診の流れも、まず障害の有無と重症度を判定するための検査から始めます。陽極の電流で舌を刺激する電気味覚検査と、「甘味」「酸味」「苦味」「塩味」の4つの液を垂らした、ろ紙ディスクを順に舌に置く検査でチェックしていきます。

原因が純粋に亜鉛の欠乏によるケースなら、食事と栄養指導を行うとともに、必要に応じて亜鉛を含む薬やサプリメントを服用することで、50%以上の方がよくなります。薬物性味覚障害では、原因となる薬剤の服薬を中止、減量するとともに、亜鉛製剤を処方します。服薬中止で持病が悪化する恐れのある方には、同様の効能を持ち亜鉛の抑制作用のない代替薬を使用します。

 

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電気味覚検査を行い味覚障害を調べる

 

食べる環境も大切  

人間がおいしいと感じるのは味覚だけではありません。においや見た目、かむ音、歯ざわりなどに加えて、食べる雰囲気や会話、健康などが複雑に組み合わさっています。中でも嗅覚と味覚は関係が深く、嗅覚が衰えると味覚も鈍くなりがちです。

味覚障害の放置は食欲の減退につながり、特に高齢者は体力が急激に落ちて寿命を縮める危険性もあるので、早期治療が肝心と言えます。そして、治療では食生活を中心とした生活環境の改善も大きなポイントです。

牡蛎や煮干し、豚レバーなど亜鉛を多く含む食品をとるのに加えて、口腔内の清掃や入れ歯の調整、“孤食”にならないよう家族や友人との食事を勧めています。

嗅覚や味覚の健康は、生活の質を維持する上でとても重要です。少しでも不安や不都合があるようなら、一度、専門外来を受診され、早期発見と早期治療で健やかな毎日をお過ごしいただきたいと思います。

 

 

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【月刊北國アクタス2013年6月号掲載】


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