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金沢医科大学 教えて!ドクター 第16回

 

夏は感染症にご用心

重症化が怖い食中毒や手足口病

 

  高温多湿の夏は食中毒が発生しやすい季節です。小児がかかる咽頭結膜熱(プール熱)、手足口病(HFMD)、ヘルパンギーナなどの感染症も夏に流行します。腸管出血性大腸菌による食中毒や手足口病などは重症化する例もありますので注意が必要です。夏の感染症対策について金沢医科大学臨床感染症学の飯沼由嗣教授に教えていただきました。


【今月の回答者】


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飯沼 由嗣(いいぬま よしつぐ)    

金沢医科大学臨床感染症学教授

金沢医科大学病院感染症科教授(科長)

 

腸管出血性大腸菌で
溶血性尿毒症行群も

食中毒は細菌やウイルスなどの微生物をはじめ、フグやキノコなどに含まれる自然毒、あるいは化学物質などが食物に混入して起こる疾患を指します。一般的には食品中に含まれる微生物により集団感染を起こした場合に食中毒と呼ばれることが多いようです。

発生件数が圧倒的に多いのはカンピロバクターやノロウイルスを病原体とする食中毒です。かつてはサルモネラや腸炎ビブリオによる食中毒も多かったのですが、近年は減る傾向にあります。また、発生件数は少ないものの、O157、O111など腸管出血性大腸菌による食中毒は重症化しやすいので注意が必要です。

カキなどの二枚貝が感染源になることが多いノロウイルスによる食中毒は冬場が流行シーズンです。夏場に特に注意したいのはカンピロバクター、サルモネラ、腸管出血性大腸菌など。気温や湿度の高い梅雨から夏にかけては、これらの細菌が発育しやすくなります。

カンピロバクターは鶏肉の中に生息し、少量の菌で感染します。刺し身はもちろん、表面をあぶっただけのたたきでも感染することがあります。症状はおう吐、下痢、血便、発熱など。また、サルモネラは鶏卵や生クリームなどの卵加工食品が感染源になります。症状はカンピロバクター同様、おう吐、下痢、血便、発熱などです。

腸管出血性大腸菌は牛肉や牛レバーの表面に付いています。少量の菌で感染し、激しい腹痛、出血性下痢のほか、小児を中心に重症者は腎不全や脳症などの溶血性尿毒症症候群(HUS)になることがあります。一昨年、北陸地方で大人も死亡する食中毒事件が発生したことは記憶に新しいところです。

食中毒は何を食べたかによって原因菌がほぼ推測できますが、患者の便を採って菌を培養して確かめることで確定診断となります。治療の基本は有効な抗生物質の投与ですが、投与しない場合もあります。菌や毒素を体内に停滞させる恐れがあるため、基本的に下痢止めは用いません。気温が高い夏場は脱水になりやすいので、十分な水分補給が必要です。

 

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食中毒予防の基本は
「内部まで火を通す」

ほとんどの菌は熱に弱いので、予防の基本は内部までしっかりと火を通すこと。特に牛肉のミンチ肉は注意しなければなりません。表面にしかいない腸管出血性大腸菌が、ミンチにする段階で内部に混ざってしまうからです。レアのハンバーグなどは極めて危険ですので、中まで十分に火が通ったものを食べるようにしてください。

まな板や包丁などの調理器具はきれいに洗って使いましょう。肉を切った後に、同じまな板や包丁でサラダ用の野菜を切るなどはもってのほか。熱湯消毒するか、肉用と野菜用を使い分けることが必要です。

帰宅時や調理前に必ず手洗いすることも習慣づけておきましょう。また、肉などの食材を購入してから冷蔵庫に入れるまでの時間を短くすることも大切です。気温が20度、30度という環境だと菌は短時間で繁殖してしまいます。買い物を済ませたら寄り道せずに帰宅し、すぐ冷蔵庫に入れるようにしてください。

菌を身の回りから完全に除去することはできません。しかし、体内に入る菌が多いほど感染リスクが高まり、重症化しやすくなりますから、できるだけ菌を減らすことで安全性は格段に高まります。

 

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咽頭結膜熱の予防は
洗眼よりゴーグル      

夏に流行する代表的な子どもの感染症の一つがアデノウイルスによる咽頭結膜熱です。例年6月ごろから増え始め、7~8月に流行のピークを迎えます。迅速に診断できる診断検査キットが普及していますので、10~15分程度で診断がつきます。

アデノウイルスは感染力が極めて強く、塩素消毒が不十分だと感染者がプールに入っただけで、目や口から排出されたウイルスで水が汚染されます。実際、かつてはプールで感染が広がるケースが多かったことから「プール熱」の別名がつけられました。

症状はのどの強い痛み、目の充血(結膜炎)、発熱など。他のウイルス性感染症と同じく特段の治療法はありません。発熱と、のどの痛みが強いので、水分補給と刺激の少ない食事を心掛けましょう。学校保健法では症状が改善してから2日間は出席停止とされていますので、一般的に発症後1週間ほどは通学できなくなります。

塩素消毒が徹底されるようになったため、プールで直接的に感染することはほとんどなくなりました。ただし、タオルを介して感染することがありますので、タオルの共有は避けましょう。また、プールを出た後、目からの感染を防ぐために洗眼をする習慣がありますが、やりすぎると目の粘膜を傷つけ、かえって感染しやすくなることがありますのでほどほどにしておくべきです。塩素消毒が徹底されているプールなら洗眼はほとんど必要ないと考えても差し支えありません。

むしろ、塩素やさまざまな病原体から目を保護するためにゴーグルを着用することをお勧めします。お子さんをプールで泳がせるなら「洗眼よりゴーグル」を心得ておきましょう。

 

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飛沫感染で広がる
腸管ウイルス性感染症   

咽頭結膜熱よりも夏の発症頻度が高いのが手足口病とヘルパンギーナです。手足口病の原因となるのは腸管ウイルスのコクサッキーウイルスA型やエンテロウイルス。手のひら、足の裏、口内の水疱、のどの痛みなどの症状が現れます。また、ヘルパンギーナの原因はコクサッキーウイルスA型で、口内の水疱、のどの強い痛み、発熱などが主な症状です。

どちらも原因が腸管ウイルスで、病態も似ていますが、ヘルパンギーナはほぼ口とのどにしか症状が出ないので区別がつきます。診断検査キットはありませんが、小児科であれば診断がつきます。

のどの痛みが強い場合は刺激の少ない食事を心掛けることと、発熱がある場合は脱水症状が出ないように水分補給をしっかり行ってください。学校保健法の規則はありませんが、せきなどの飛沫で広がる恐れがありますので、症状が改善してからもしばらくは感染させないよう注意が必要です。

エンテロウイルスによる手足口病はまれに髄膜炎を発症することがあります。重症化すると後遺症が見られたり、場合によっては死に至ったりする例もありますので、高熱が続くような症状がある時は早めに専門的な治療を受けるようにしてください。

風疹や麻疹は原因となるウイルスが1種類なので、一度かかれば免疫ができます。しかし、咽頭結膜熱、手足口病、ヘルパンギーナなどの病原体ウイルスは類似のタイプが何種類もありますので、繰り返しかかる可能性があることを覚えておきましょう。

 

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「エンテロウイルスによる手足口病は髄膜炎を発症することがある」と語る飯沼教授

 

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培養した病原体について検討する飯沼教授(手前)と馬場尚志准教授

 

 

【月刊北國アクタス2013年7月号掲載】


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