お知らせ

金沢医科大学 教えて!ドクター 第23回

「病理外来」の活用を

病理医が診断結果を詳しく説明
治療に対する「安心感」後押し

金沢医科大学病院は北陸で唯一の「病理コンサルテーション(相談)外来」を設けています。病理専門医が診断結果や病気の進行状況について、主治医とは別の立場から詳しく説明し、治療に対する患者の不安や懸念の解消に役立っています。金沢医科大学病院病理診断科の湊宏教授にその詳細を聞きました。

 

【今月の回答者】

湊 宏

金沢医科大学病院 病理診断科科長(教授)
日本病理学会病理専門医研修指導医
日本臨床細胞学会細胞診専門医

 

北陸では唯一
全国でもまだ少数

「病理診断科」という診療科があることをご存じない方も多いのではないでしょうか。独立した診療科として標榜することを国が認めたのは2008年です。全国的にも病理診断科を設置している医療機関はまだ少ないため、認知度がそれほど高くないのは当然かもしれません。

金沢医科大学病院が病理診断科を掲げ、「病理コンサルテーション外来」を設置したのは09年度です。県内はもとより北陸では初めてで、現在も北陸では唯一の外来診療科となっています。

医療機関における病理部門の本来的な業務は、各診療科からの依頼に基づいて患者さんの病巣組織の検査や細胞検査(細胞診)を行い、病気の診断に寄与することです。

主治医は自らの問診や触診などに加え、病理検査、画像検査、血液検査などの情報を総合して診断を下し、治療方針・計画を立てます。特に病理検査は確定診断の根拠となることが多く、重要な役割を担っています。

このように病理部門は診療科を裏で支えるスタッフ的な部署であり、従来は表に出ることはありませんでした。診療科としての標榜が認められたということは、病理の専門家が患者さんやご家族と直接的にかかわれるようになったことを意味しています。

 

モニター画面で
検体画像を見ながら

「病理コンサルテーション外来」は具体的にどんな形で患者さん側とかかわるのでしょうか。基本的には、患者さんやご家族の要望を受けた主治医からの依頼に基づいて、病理診断の結果を治療に入る前の段階で患者さん側に詳細に説明します。

コンサルテーションに際しては、病理診断に用いた切除組織画像、その顕微鏡画像、細胞の顕微鏡画像などの検体画像を患者さん側と一緒にモニターで見ながら、病気の内容や状況、がんの場合は広がり具合や進行度などについて分かりやすく説明していきます。

患者さん本人だけでなく、ご家族、担当看護師、場合によっては主治医が同席してもかまいません。

予約制になっており、主治医に依頼していただければ、日時を調整したうえで相談を行います。公的な医療保険が適用されませんので、患者さん側には1回当たり1万円余りの費用を負担していただきます。

本院を受診している患者さんだけでなく、他の医療機関からの紹介でセカンドオピニオンとして実施する場合もあります。組織標本を提供いただき、それに基づいて私どもの所見を説明することになります。

一例を挙げますと、他の医療機関で腹腔内にがんが見つかりましたが、原発病巣がどこか分からないケースがありました。当該医療機関の紹介により私どもで組織標本を検査して、ご家族同席のもと診断結果を説明、本院の外科医を紹介して治療を受けていただくことになりました。

 

より深く知りたい
患者ニーズに対応

「主治医の診断説明だけで十分。病理専門医があらためてわざわざ説明するのは二度手間ではないか」

こうした指摘はもっともだと思います。主治医は私どもの病理診断や放射線部門の画像診断などに基づいて診断するわけですから、病理外来で主治医の診断と異なる所見を伝えることは基本的にありませんし、実際、主治医の説明だけで治療に入る例が圧倒的多数を占めているのも事実です。

しかし近年、インターネットの普及などにより、患者さん自身が自分の病気に関するさまざまな情報を入手し、知識が豊富になってきており、自分の病気についてより深く知りたいと考える患者さんも増えてきています。

特に大都市圏においてはその傾向が強いとされ、なかには1カ所の診断では満足できず、複数の医療機関を受診するケースも少なからずあるようです。

病理外来は患者さんのそうしたニーズに応えるために設けられた診療科です。主治医の診断説明を補強し、患者さん側の病気に対する理解や治療に臨む安心感を後押しする患者サービスだと理解いただければ分かりやすいかもしれません。

例えば、がんの患者さんが主治医から「全摘出手術が必要」と治療方針を説明されたとします。しかし、患者さんやご家族が「できるだけ温存したい」と希望することも十分あり得ます。

そうした場合に、第三者的立場の病理専門医から詳しい病状の解説を受けることで、主治医の診断と治療方針に納得を得ることができます。「それなら頑張って手術を受けよう」と積極的に治療に臨んでいただける効果もあるでしょう。一般的なセカンドオピニオンと意味合いが異なっているのはこの点です。

もちろん検体の画像を見たところで患者さん側が十分に理解できるわけではありませんが、CTやMRI、エコーなどの画像と同じように、自らの目で状態を確認すれば得心しやすくなるのは間違いありません。

 

がん患者が中心
特に多いのは乳がん

一般論ですが、病理外来の利用が多いのはがん患者さんです。進行度によって治療内容がかなり違ってきますし、場合によっては大きな手術が必要になりますので、関心が高いのは当然でしょう。

とりわけ乳がんの患者さんが多いとされています。女性にとって乳房を切除しなければならない事態は、肉体的にも精神的にもとてもつらいことです。近年は乳房温存療法が主流になってきていますので、できる限り納得したうえで治療を受けたいというニーズが強いのだと思われます。

主にお子さんを対象としている医療機関の一部には、保護者に対する病理外来を積極的に実施しているところもあります。本院ではまだ事例はありませんが、病理解剖の結果についてご遺族に病理専門医が説明している医療機関もあります。本院でも依頼があれば対応することが可能です。

また、医療機関の紹介がなくても、患者さんの判断だけでコンサルテーションを受けていただくこともできます。費用がかかるかもしれませんが、受診医療機関に要望すれば病理標本の提供を受けられます。

本院ではすべてのがんについて病理診断できる体制が構築されていますし、もちろんがん以外の疾患についても対応します。神経系・筋肉系・皮膚系などの疾患で、病理診断の実績が少ないものも一部ありますが、こうした疾患ではより専門的な知識をもつ他の医療機関に診断を依頼して、本院で説明することも可能です。

残念ながら、本院における「病理コンサルテーション外来」の利用はまだ少ないのが現状です。認知度が低いことに加え、主治医を全面的に信頼する患者さんが多いという土地柄のせいもあるかもしれません。

主治医が「病理コンサルテーション外来」の受診依頼を拒否することはありません。もし診断や治療方針に多少なりとも納得できない部分があったり、これから受ける予定の治療への決心がつかなかったりすることがあれば、遠慮なく申し出て、活用していただければと思います。不安や懸念の解消に必ずお役に立てるはずです。

 

病理検体の画像を見ながら病理専門医から詳しい説明を受けられる「病理コンサルテーション外来」

病理標本を顕微鏡で観察する湊教授

 

 

「患者さんの不安解消に役立ちたい」と語る湊教授

 

【月刊北國アクタス2014年2月号掲載】

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