2014年4月

金沢医科大学 教えて!ドクター 第25回

今できる健康長寿の近道

“抗老化遺伝子”の働きがカギ

日本では、総人口に占める65歳以上の割合が昨年、25%を超えました。超高齢社会を迎えた今、介護を受けずに自立して生活できる「健康寿命」を延ばすことが、生き生きとした老後を過ごすうえで大切です。そのカギを握るのが“抗老化遺伝子”です。この遺伝子を日常生活の中でいかに働かせるかについて金沢医科大学病院内分泌・代謝科の北田宗弘講師に聞きました。

 

【今月の回答者】

北田 宗弘

金沢医科大学病院内分泌・代謝科講師
日本内科学会総合内科専門医
日本糖尿病学会専門医
日本腎臓学会専門医

 

介護を必要とせず
健康に生きる

古くから人間は一日でも長生きしたいと思い、食事や運動などの面でさまざまな努力を重ねてきました。現在、日本人の平均寿命は、女性が86・30歳、男性が79・55歳で、世界でもトップクラスの長寿国と言えます。

しかし、せっかく長生きしても、寝たきりになってしまえば、旅行に行ったり、友達に会ったりすることは不自由になり、誰かの手助けが必要な介護生活を余儀なくされます。

そこで大切なのが「健康寿命」です。健康寿命とは、介護を必要とせずに自立して元気に生きられる期間のことで、実際に生きた寿命から介護を必要とした期間を除いたものを指します。

健康寿命の平均は、男性で70・42歳、女性で73・62歳と言われ、実に男性で9・13年、女性で12・68年、介護を必要とする期間を過ごしている計算になります。

老化は身体機能が衰えるだけでなく、さまざまな病気の引き金となります。この健康寿命と老化に密接に関係しているのが生活習慣病です。生活習慣病を発症すると、健康寿命を縮め、老化が進む要因になります。

生活習慣病を発症する原因としては、食べ過ぎや運動不足が挙げられます。ですから、生活習慣病を予防するには、食事内容の見直しやカロリー制限など食生活の改善と、適度な運動習慣が大切となります。

 

飽食は寿命縮め
老化を早める

現代は飽食の時代と言われて久しく、カロリーの高い食事を取る傾向にあります。また、食の欧米化が進み、肉を中心とした高脂肪食を多く摂取するようになったため、糖尿病の患者数も増加の一途をたどっています。このように食生活の変化が、日本人の寿命や老化に大きくかかわっていると考えられています。

その顕著な例が、沖縄県と言えるでしょう。かつて日本一の長寿県と言えば沖縄県でしたが、近年は長野県にその座を明け渡し、特に若い男性の死亡率が高い傾向が見られます。その背景には、米軍基地の影響で食生活の欧米化がいち早く進み、ファストフードを中心としたカロリーの高い食生活に変わったことが影響を及ぼしていると推測できます。

食事のカロリーを制限すると寿命が延び、老化が遅れるという研究結果があります。20年間、通常の食事を与えたサルと、カロリーを30%制限した食事を与えたサルを比較した場合、後者のサルのほうが、生存率が30%高く、老化に伴うがんや心血管病が少ないというデータが出ています。

 

1日のカロリー
摂取量25%オフ

カロリーを制限すると、寿命が延び、老化が遅れるのはなぜなのでしょうか。それは、抗老化遺伝子(SIRT1)が活性化されるからです。

SIRT1は、長寿にかかわると見られるサーチュイン遺伝子の一つです。この遺伝子が働くことで、細胞の活動に欠かせないエネルギーを生み出すミトコンドリアを増やしたり(図1)、老化した細胞を分解して新たな細胞に再生したりします。

細胞が活性化することによって、老化を食い止め、老化に起因する動脈硬化や糖尿病、認知症といった病気にかかるリスクも低減すると考えられています。

このSIRT1という遺伝子は、人間だけでなくすべての生き物に存在します。摂取するカロリーが低下し、細胞が飢餓状態となった時に、この遺伝子が働くと推測されています。

つまり、生物は少ないカロリーを効率よく使い、老化を遅らせて健康な状態を保つことによって、飢餓状態を乗り切り、生命を守ろうとするわけです。飽食の時代である現代は、SIRT1が働きにくい環境にあります。実際にメタボリック症候群や糖尿病予備群の人たちは、SIRT1の働きが悪いことが分かっています。

SIRT1を活性化させるには、カロリーを減らして人為的に細胞を飢餓状態にするしかなく、1日のカロリー摂取量を25%程度制限すれば遺伝子が活動すると考えられています。

一般に、20~64歳までの成人が1日に必要とするエネルギーは、男性が2400キロカロリー、女性が2000キロカロリーであり、男性なら1800キロカロリー、女性なら1500キロカロリーでクリアします。

ただし、BMI(肥満指数)が18・5未満でやせている人や、食事の量が少ない人は、カロリーを制限しないほうがよいでしょう。

カロリーを制限すると、最初は空腹感があると思います。しかし、この空腹感によってアンチエイジングが進んでいるのだととらえてください。

 

夕食は早めに
食べ方にも工夫を

夕食を早めに食べることも大切で、朝食までの絶食時間が長くなり、SIRT1が働きやすくなります。また、夜遅くに夕食をたくさん食べると、脂肪として体内に蓄積されるので注意が必要です。

老化を遅らせるには、食べ方にも工夫が必要です。食後に急激に血糖値が上昇すると、老化と肥満が進行します。そこで、砂糖やブドウ糖、果糖の摂取はできるだけ避けてください。

白米やパンは糖質が高いため、玄米や五穀米、全粒粉パン、ライ麦パンを選ぶことも大切で、うどんよりもパスタやそばの方が血糖値は上がりにくいといえます。そして、野菜などの副菜を先に食べ、炭水化物の主食は最後に食べると血糖値は上がりにくくなります。脂質については、魚のほかに、ベニバナやオリーブなどのオレイン酸から取るように心がけてください。

 

1週間に150分
以上の運動を

SIRT1を効率的に働かせるためには、適度な運動も重要です。運動によって血糖値が下がり、インスリンの働きが高まります。肥満、高血圧、脂質異常の改善の効果も期待できます。少なくとも1週間に150分以上の運動を目安にしてください。そして、週に1回、まとめて運動するよりも、毎日少しずつ運動したほうが効果が高まります。

最近では、「ロコモティブ症候群(ロコモ)」という言葉が聞かれるようになりました。加齢や生活習慣が原因で足腰の機能が衰え、人が移動するために使う筋肉や関節、骨などの運動器官に障害が生じることによって、日常生活で人や道具の助けが必要な状態、またはその一歩手前の状態を言います。

筋力が低下したり、関節に疾患を持っていたり、骨粗しょう症などで骨がもろくなっていたりすると運動機能が低下し、日常生活に支障が出てしまいます。自分がロコモかどうかは、日本整形外科学会のロコチェック(図2)で判断してください。一つでも当てはまる項目があれば、ロコモが心配されます。

ロコモを予防するには、ロコモーショントレーニングを始めてみてください。日本整形外科学会のホームページにトレーニング方法が掲載されたパンフレット(http://www.joa.or.jp/jp/public/locomo/locomo_pamphlet_2012.pdf)があります。自分の体の状態に合わせて無理をせず、マイペースで行うことが大切です。ストレッチやラジオ体操、ウオーキングなども併せて行うとよいでしょう。

健康寿命を延ばすには、一にも二にも本人が自覚して食生活を見直し、適度な運動をする習慣をつけることが肝要です。充実した老後を過ごすためにも、今日から取り組むことをおすすめします。

 

 

【月刊北國アクタス2014年4月号】

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