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金沢医科大学 教えて!ドクター 第27回

大腸がんの最新検査法

身体的、心理的負担の少ない
カプセル内視鏡を臨床に導入

がんの部位別死亡数で、男性3位、女性1位となっている大腸がん。内視鏡による精密検査は、苦痛や恥ずかしさを伴いますが、今年1月、そうした負担を感じなくて済む大腸カプセル内視鏡が保険適用となり、注目を集めています。金沢医科大学病院消化器内科の有沢富康教授に同内視鏡について聞きました。

 

【今月の回答者】

有沢 富康

金沢医科大学病院 消化器内科科長(教授)
日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医
日本内科学会認定内科医・指導医
日本消化器病学会専門医 など

 

今年1月から
保険適用に

国立がん研究センターが発表したデータによると、2012(平成24)年のがんの部位別統計で、大腸がんによる死亡数は、男性で2万5529人、女性で2万1747人でした。

数あるがんの種類の中で、男性は肺がん、胃がんに次いでワースト3位(がん死亡全体の11・9%)、女性ではワースト1位(がん死亡全体の14・9%)となっています。

07年の大腸がんによる死亡数は、男性で2万3010人、女性で1万9162人でしたので、明らかに増加が見て取れます。

死亡数と同様に大腸がんの罹患率も近年増加傾向にあり、背景には食の欧米化、すなわち動物性脂肪の摂取量の増加があると考えられています。罹患率は40歳を過ぎてから年齢を重ねるごとに増しています。

カプセル内視鏡による大腸がん検査が健康保険の適用となったのは、急増する大腸がんに対する国の危機意識の表れと言えるでしょう。

現在のところ適用には条件があり、▽大腸内視鏡検査が必要であるが、過去に施術した際にスコープが盲腸まで到達できなかった▽大腸内視鏡検査が必要であるが、腹部の手術歴などで癒着が想定される―に限られています。

しかし、全国的にカプセル内視鏡を使用する症例数が増え、蓄積されたデータによって有用性が確認されれば、適用条件の幅は広がると考えられます。

 

カプセルの両端に
超小型カメラを内蔵

カプセル内視鏡はそもそも、口やお尻からスコープを挿入する従来型内視鏡では観察できなかった小腸の画像診断用に開発されたもので、小腸用をベースに新しく大腸用が開発されました。先駆けとなったイスラエルのギブン・イメージング社製と日本のオリンパス社製が多く導入されており、金沢医科大学病院では前者を採用しています。

長さ26ミリ、直径11ミリで、一般的なカプセル薬より一回り大きいサイズです。両端に超小型カメラ、腸管内を照らすLED光源、バッテリー、無線送信機を内蔵し、それぞれのカメラが毎秒2枚ずつ撮影していきます。

一方、患者さんは撮影した画像を受信するセンサーをおなかと背中に計8カ所張り付け、画像データを記録するレシーバーを専用のポシェットに入れて携帯します。

水と一緒に飲み込んだカプセル内視鏡は、腸管の中でさまざまな方向に回転しながら、腸壁を撮影していきます。レシーバーには小型液晶画面が付いており、患者さんはリアルタイムで自分の大腸内の画像を見ることもできます。

カプセル内視鏡を飲み込んでから排泄するまでに要する時間は、個人差がありますが、通常8時間前後で、早い人で6時間、長い人で10時間ほどです。一部の病院では1泊2日の入院をしていただくところもあるようですが、金沢医科大学病院では外来でカプセル内視鏡の検査を実施しています。

検査のおおよその流れは、①前の晩から絶食(水はよい)と下剤服用②朝、消化器内科外来に来院していただき、下剤を含んだ水と一緒にカプセル内視鏡を服用③積極的に歩くなど、なるべく体を動かすようにして病院内で待機。この間、下剤入りの水を適宜服用④トイレでカプセル内視鏡の排泄を確認したら検査終了―となっています。

カプセル内視鏡は再利用しませんので、トイレで水に流していただければ結構です。ピカピカ光っているので、排泄されたかどうかは目視ですぐに分かります。

 

従来とは逆方向からの観察が可能に

カプセル内視鏡は、管状の内視鏡で大腸内を調べる時のような苦痛がなく、「怖い」「恥ずかしい」といった心理的な負担もほとんどありません。また、医師の立場からすると、従来型では肛門側からの一方向でしか見られなかった大腸内を小腸側からの方向でも確認でき、腸のひだの陰に隠れている病変を見つけやすい利点があります。

ただ、こうしたメリットがある半面、カプセル内視鏡には従来型と比べ機能面で劣る点があることも知っておいてください。

管状の内視鏡は、操作する医師が「おや?」と思ったところで挿入を止めて、念入りに調べられる自由さがありますが、カプセル内視鏡は大腸内を消化管特有のぜん動運動や飲み込んだ水分の流れなどによって移動しますので、ピンポイントでの撮影・観察はできません。小さな米粒大以下の病変では撮影されていても画像にくっきり映らないケースもあります。

また、カプセル内視鏡でもし病変が見つかった場合は、正確に診断をつけるために後日、あらためて管状の内視鏡で大腸内を調べる必要があり、検査が二度手間になります。

管状の内視鏡では、ポリープなど病変と思われる個所を見つけたら、器具を使ってその場で切除・採取して、組織ががん細胞かどうかを顕微鏡で調べる細胞診にまわすことができます。

従って、大腸がんの発症確率の高い60代以上の方の場合は、従来型内視鏡での検査がベストです。他方、発症の確率がまだ低い40~50代の方では、保険適用の条件に合致するか否かの問題はありますが、カプセル内視鏡が適した検査方法であるのは確かです。

 

安心を得るために
内視鏡検査を

大腸の内視鏡検査を受診するきっかけは、大半が職域検診や地方自治体のがん検診で実施される便潜血検査での陽性反応です。ところが、そこから精密検査を受ける人の割合は50~60%ほどにとどまっており、本人に自覚症状がないことや大腸内視鏡による苦痛や羞恥心がその理由に挙げられます。

集団検診の種々の報告によると、便潜血検査での陽性率は5~7%、陽性者がそこからさらに精密検査を受けて大腸がんが発見される率は2~3%です。便潜血陽性者が身体的、心理的な負担を押して精密検査を受けても、50人中49人が「異常なし」となることも、多くの人が精密検査を避けてしまう一因と考えられています。

しかし、精密検査を避けた人の50人中1人は大腸がんであると言えるわけで、早期発見のチャンスをみすみす逃しているとも言えます。精密検査を受けていないことによる不安も当然、残ります。

今年1月の保険適用以降、金沢医科大学病院では、この4月までに大腸カプセル内視鏡検査を7例実施しています。幸運なことにがん発見には至っておらず、患者さんが苦痛なく「安心」を得られる効果を発揮しています。

大腸の内視鏡検査は一度受診すれば、次まで3年ほど間を置いても問題はありません。患者さんの意思だけでカプセル内視鏡の使用を指定できませんが、便潜血に異常があった場合は、この安心を得るためにも大腸の内視鏡検査を強くおすすめします。

従来型でも、患者さんが希望されれば鎮痛剤や麻酔を用いて、苦痛なく内視鏡の挿入検査を終えることも可能です。

 

 


大きさは人の指先よりも小さく、飲み込みやすい


患者は携帯レシーバーでカプセル内視鏡の画像を確認できます

 

画像を説明する有沢教授

 

【月刊北國アクタス2014年6月号】

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