2014年8月

「平成25年度入院患者さん満足度調査結果」を掲載しました。

金沢医科大学 教えて!ドクター 第29回

増える「新型」副鼻腔炎

原因不明で完治は困難
喘息と併発するケースも

鼻汁や鼻詰まりが起きてQOL(生活の質)を著しく低下させる副鼻腔炎。感染性の「旧型」の副鼻腔炎が減少を続ける一方で、近年、大人の間で「新型」の副鼻腔炎が拡大しています。金沢医科大学病院耳鼻咽喉科の三輪高喜教授に旧型・新型それぞれの特徴や治療法を聞きました。

 

【今月の回答者】

三輪 高喜

金沢医科大学病院 耳鼻咽喉科科長(教授)
日本耳鼻咽喉科学会専門医・補聴器相談医
日本アレルギー学会指導医
日本気管食道科学会専門医 など

 

顔面の空洞に
細菌性の膿がたまる

副鼻腔とは、鼻の穴(鼻腔)の周囲にある4対の空洞のことで、小さな穴で鼻腔とつながっています。副鼻腔の粘膜が鼻汁(鼻水)を作るほか、この空洞が顔面への衝撃を吸収したり声を響かせたりしていると言われています。

従来の副鼻腔炎は、副鼻腔に膿がたまる病気で、蓄膿症とも呼ばれています。風邪などをきっかけに、鼻腔や副鼻腔の粘膜が炎症を起こして肥大化すると、互いの出入り口をふさぎます。すると、副鼻腔内に鼻汁がたまり、そこに細菌やウイルスが繁殖し、膿ができてたまります。

症状は▽鼻詰まり▽緑や黄色のドロッとした鼻汁が出る▽鼻汁が喉に落ちてたんやせきが出る▽頭が重たく感じるなどです。

また、副鼻腔の一つで鼻の両側にある上顎洞と、上の奥歯の付け根は非常に近い位置にあり、この位置の虫歯から菌が広がり、副鼻腔炎になることもあります。

 

悪循環に陥りやすい
慢性の副鼻腔炎

副鼻腔炎の症状が3カ月以上続くと、慢性副鼻腔炎と呼ぶようになります。慢性化の原因は、粘膜が膿と接触することでさらに炎症して肥大化し、鼻腔につながる穴が狭くなって膿の排出が困難になり、ますます膿ができるという悪循環を起こすためです。慢性化するとおおよそ半数の患者の粘膜にキノコに似た白いポリープ(鼻茸)ができるのも特徴です。

ポリープと呼んではいても腫瘍ではなく、あくまで炎症して肥大化した粘膜です。症状が進行すると嗅覚障害が起き、深刻になるとごくまれに目の炎症や髄膜炎などの合併症を引き起こすこともあります。

 

急激に増えた新型
難治性で原因も不明

一方、2000年を境に、これまでと異なる難治性の新型副鼻腔炎が急拡大しています。罹患者の鼻の粘膜や血液を調べると、白血球の一種である好酸球が増えていることから、01年に好酸球性副鼻腔炎という病名がつけられています。

好酸球性副鼻腔炎の罹患者は類のないペースで増えています。金沢医科大学病院では、05年ごろに慢性副鼻腔炎の患者数を上回り、現在は3倍に達しています。成人がなりやすいのも特徴で、罹患者のほとんどが30代以上です。私も10代の患者さんを診たことはまだありません。

残念なことに、これだけ患者数が増えた理由や病気の原因はまだ分かっていません。好酸球が分泌する化学物質が炎症を起こすと考えられていますが、なぜ好酸球が増えるのか、どんな化学物質か、どのようなメカニズムなのかなどは、解明に向けた研究が進められているところです。

 

ほとんどにポリープ
半数が喘息を伴う

好酸球性副鼻腔炎の症状は、鼻汁が出る、粘膜が炎症して鼻が詰まるという点では、従来の副鼻腔炎と変わりません。

しかし、▽鼻汁は白や無色でつきたての餅のようにネバネバし、鼻をかんでも簡単に出てこない▽両側の鼻に必ずと言っていいほどポリープができる▽初期段階から嗅覚障害になり、鼻詰まりがない時でもにおいが分からない▽罹患者の半数が喘息を併発する▽成人に多く発症するなどの点で大きく異なります。

特に、喘息との関わりは深く、アスピリンが原因で喘息を誘発するアスピリン喘息の合併や、喘息が原因で好酸球性副鼻腔炎になるケースも多数あります。治療で副鼻腔炎が改善すると喘息も改善し、逆に副鼻腔炎が悪化すると喘息も悪化することが報告されています。

 

服薬と外科療法で
ほとんどが完治

副鼻腔炎の検査は、内視鏡を鼻に挿入して粘膜のはれ具合やポリープの有無、鼻汁の性質を目視します。内視鏡では副鼻腔の入り口までしか見えないので、副鼻腔の中の炎症の広がりや膿のたまり具合は、レントゲンやCTスキャンで確認します。

治療法は、旧型の場合、鼻腔や副鼻腔にたまった鼻汁を吸引したり洗浄したりし、マクロライド系抗生物質を服用する薬物療法が基本です。アレルギー性鼻炎や鼻の中央の仕切りが曲がる鼻中隔湾曲症など鼻詰まりを引き起こす病気がある場合は、そちらも同時に治療します。

患者さんの半数は服薬を2~3カ月続けると症状が改善しますが、改善しない残りの半数の方には外科療法を施します。

外科療法は、鼻の中を内視鏡で観察しながら、ポリープや病的な粘膜を切除したり、副鼻腔に通じる穴の周囲の骨を切り取って広げたりして、副鼻腔を開放して鼻汁を外へ排出しやすくします。この外科療法で、ほとんどが完治します。施術時間は片側で1時間、両側だと2時間ほどと短いものの、全身麻酔をかけるため、退院まで1週間はかかります。

感染性の副鼻腔炎は、衛生環境や栄養状態の改善もあって近年減少傾向にあり、治療法も確立された今日では治しやすい病気となっています。

 

新型はステロイド中心
服薬は長期に

これに対して、好酸球性副鼻腔炎は従来の副鼻腔炎と原因が異なるため、治療法も違います。ほぼ唯一、治療効果の認められているのがステロイドです。最初の2週間ほどは内服薬を処方しますが、副作用があるので症状の改善に合わせて点鼻薬、噴霧薬とステロイドの摂取量を少なくしていきます。症状が落ち着けば、アレルギー性鼻炎の治療にも使うロイコトリエン拮抗薬を微量のステロイドと併せて使用します。

薬だけで十分に改善しない場合、外科療法を施す点は従来と変わりません。施術内容も同じですが、好酸球性副鼻腔炎では約半数のケースでポリープが再発します。再発防止には、鼻洗いが効果的です。

このように、好酸球性副鼻腔炎は現時点で完治までの治療法が確立されておらず、解明されていないこともたくさんあります。また、再発性が非常に高く、一見、症状が治まっても、服薬を中断すると悪化します。このため、長期的な服薬管理が必要な厄介な病気と言えます。

副鼻腔炎は命に関わるような病気ではありません。そのためか、何年も鼻詰まりを我慢し、重症化してから治療を始める方がほとんどです。呼吸がスムーズにできなければ、同時に、においも分からなくなり、QOLは極端に低下します。鼻詰まりが1カ月以上続くなら、我慢するのではなく、耳鼻科で一度診察を受けることをお勧めします。

 

副鼻腔炎患者の改善前(左)と改善後のCTスキャン画像。空気の通る部分が黒く写っている

 

副鼻腔の入り口周辺にできたポリープ

 

鼻の構造

 

副鼻腔炎の治療法について説明する三輪教授

 

【月刊北國アクタス2014年8月号】

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