シェーグレン症候群
16-1 血液・リウマチ膠原病科|准教授 正木康史
1.シェーグレン症候群の病態と症状
シェーグレン症候群は口腔乾燥症(ドライマウス)や眼乾燥症(ドライアイ)をきたす免疫の病気です。乾燥症状以外に内臓の病気(肺、肝臓、腎臓、 リンパ腫など)をともなうこともあります。男女比は1:14と女性に多い病気で、50歳台に発病のピークがあります。日本の患者数は10~20万人程度と 言われており、リウマチ性疾患のなかでは関節リウマチに次いで患者数の多い病気です。
2.シェーグレン症候群の診断
シェーグレン症候群の診断は、口腔検査、眼科検査、血液検査、病理組織検査の4つから総合的に判断されます。
口腔検査は、ガムテスト(ガムを10分間噛む)やサクソンテスト(ガーゼを2分間噛む)により、唾液がどのくらい出るか調べます。また唾液腺 MRIで唾液腺の構造を調べることができ、唾液腺シンチグラフィーで唾液の出方を詳しく知ることができます。眼科検査は、5分間にろ紙がどのくらい涙で濡 れるか調べ(シルマーテスト)、眼の表面を特殊な色素で染色して眼の表面の荒れ具合を調べます。血液検査では、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体というこの 病気に特徴的な自己抗体を調べます。組織検査では、口唇小唾液腺生検(こうしんしょうだえきせんせいけん:下唇の内側より小唾液腺という小さな唾液腺を採 取し顕微鏡にて判定)を施行します。
3.シェーグレン症候群の治療
シェーグレン症候群は、症状に合わせて治療を行います。眼の乾燥症状に対しては涙の分泌を補い、眼の表面を保護する目的で保湿剤(コンドロイチン 硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムなど)の入った点眼薬を使用します。また口腔乾燥症状に対しては、塩酸セビメリン、アネトールトリチオンなどの唾 液分泌促進薬、漢方薬、人工唾液(当院独自の製剤もあります)などを使用します。内臓の病気がある場合は、軽症であれば消炎鎮痛剤や少量の副腎皮質ステロ イド剤を投与しますが、重症の場合は、中等量以上の副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤を使用し、入院が必要になることもあります。
4.シェーグレン症候群国際臨床協力連盟(SICCA)
金沢医科大学病院は、世界5カ国(アメリカ、日本、アルゼンチン、中国、デンマーク)が協力して行っているシェーグレン症候群国際臨床協力連盟 (SICCA)における日本で唯一の参加施設です。SICCAはシェーグレン症候群患者を国際的に登録することにより、この病気に関する研究を世界的に促 進するために作られた組織で、アメリカ国立衛生研究所から助成を受けているプロジェクトで、本部は米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校に置かれてい ます。
シェーグレン症候群は、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなど他の膠原病とは異なり、国際的に標準とされる診断の基準がありません。このため プロジェクトの第一の目的は、シェーグレン症候群の標準的/国際的な診断基準を確立することであり、その他に検査データと涙液、唾液、血液、口唇小唾液腺 組織などを収集し保管します。保管されたサンプルを用いることにより、シェーグレン症候群の研究を促進し、この病気の原因を解明し、新しい治療法の開発に つなげるというまったく初めての試みです。このような国際的プロジェクトに日本代表として金沢医科大学病院が選ばれたのは、これまでこの病気の診療や研究 に熱心に取り組んできたことが世界的に認められたからと考えています。本プロジェクトに関連する医療費は原則的に研究費より支払われます。
登録に同意された方には、問診、眼の検査、口腔の検査、口唇小唾液腺生検を受けていただき、血液を提供していただくこととなります。初診時に シェーグレン症候群の明らかな所見が認められた参加者には、2年後に同様の検査を受けていただきます。また、この病気の遺伝的な調査のため、ご家族のうち のお二人もしくはご友人お一人に健康状態に関する質問に答えていただき、血液の提供ができるかについてお尋ねすることになります。
5.シェーグレン症候群患者会
血液リウマチ膠原病科では1986年より、シェーグレン症候群の患者会のお手伝いをさせていただいております。この会はシェーグレン症候群の患者 さんと当科の医師ら有志の方々により設立された会であり、シェーグレン症候群の患者会としては我が国で唯一の組織です。会員数は年とともに増加しつつあ り、現在も精力的に活動を続けています。活動内容は、年に一度の総会の開催をはじめとして、会報の発行、支部会の開催などとなっています。当科外来にて入 会のパンフレットをお渡ししております。またお電話によるお問い合わせも可能です。



