肝臓がんラジオ波灼熱法
11-1 消化器科(消化器内科)|講師 尾崎一晶
1.肝臓がんの治療
肝臓がんの治療法は大きくわけて外科的切除、経皮的エタノール注入療法やラジオ波焼灼療法などの局所的治療、腫瘍を栄養する動脈から治療を行う経 カテーテル治療があります。どの治療法を選択するかは、がんの大きさ、個数、位置および肝臓の機能を考慮して決定します。
2.ラジオ波焼灼療法とは
ラジオ波焼灼療法(radiofrequencyablation;RFA)とは、直径1.5ミリぐらいの金属製の針を超音波やCTの画像をみな がら腫瘍内に挿入し、針先からラジオ波(480KHz)を放出し、腫瘍を約100°Cの温度で誘電加熱することによってがんを壊死させる治療法です。肝臓 がんの局所治療として当科では今まで腫瘍の内部や周囲にエタノールや酢酸を注入し壊死させる方法をとっていましたが、2000年よりラジオ波焼灼療法を 行っています。
3.適応
肝臓がんは、肝機能が低下した慢性肝疾患に発生することが多く、また早期に治療してもまた別の部位に新たに再発してくることもあるため、肝機能を 温存するという意味で内科的な治療の役割が大きくなっています。CTや超音波検査で肝臓がんが疑われた場合には、右の大腿部の動脈より肝臓を栄養する動脈 に直接カテーテルを挿入し、そこから造影剤を注入しながらCT撮影を行うことで、腫瘍の部位、大きさ、個数、腫瘍周囲に異常な病変がないかを確認できま す。当科ではラジオ波による治療を行う前には全例にこのカテーテル検査を行っています。ラジオ波焼灼療法は腫瘍の大きさが3cm以下で3個までなら、十分 に治療することができます。しかし、一部の症例では腫瘍の存在部位や超音波で確認できない病変は針を刺すことが困難なために施行できない場合もあります。 また、当科では3cmを超える腫瘍であっても経カテーテル治療と併用してラジオ波焼灼療法を追加することも行っています。
4.方法
ラジオ波焼灼療法はある程度の疼痛を伴うために、治療の15~30分前に鎮痛剤や安定剤を注射します。その後、腫瘍を穿刺するライン上の皮膚と肝 臓の表面を十分に局所麻酔します。麻酔が効いてきたら、超音波で確認しながら太さ1.5ミリぐらいの金属製の針を腫瘍内部に穿刺し、その先端からラジオ波 を発生させて腫瘍を焼灼します。1回の焼灼で直径約3cmの範囲が球状に焼けるために、腫瘍が2cm以下であれば1回の焼灼で腫瘍全体を壊死させることが 可能ですが、大きいものは数回に分けて焼灼します。いずれも1回の焼灼時間は最長12分です。焼灼中に腫瘍内の温度が上昇してくると一時的に電源が切れま すが、この直前に疼痛が最も強くなります。この疼痛は「火箸を押し付けられたような痛み」と表現されることが多いのですが、痛み止めの追加投与で対応可能 です。治療が終了しても微熱や穿刺部位の痛みを認めることがありますが2~3時間後にはほぼ消失します。肝臓に針を刺すために術後6時間のベッド上安静 が必要です。その後は食事の摂取も可能です。
5.合併症
治療中の疼痛は全例に認められます。そのほか、出血、胆道感染症、胸・腹水、発熱、肝機能障害、肝膿瘍、胆嚢炎、腸穿孔、門脈血栓症などが報告さ れています。当科で経験した重篤な合併症は門脈血栓症1例と肝膿瘍1例ですが、いずれも内科的治療で改善しています。
6.入院期間
ラジオ波焼灼療法の前に、前述したように動脈カテーテルを用いたCT撮影を行います。この検査は約1時間で終了します。検査後に発熱などが認めら れなければ3~5日後にラジオ波にて肝臓がんの治療を行います。治療後は約1週間の入院が必要です。この間にCTを撮影し、治療効果判定を行います。腫瘍 の残存が認められた場合にはラジオ波を追加します。最近ではカテーテル検査中にラジオ波焼灼を行っていますが、この場合は焼灼できたかどうかの治療効果判 定も同時に行うことができるために診断と治療が1日で終了します。治療後は抗生物質の点滴が必要となるために約1週間の入院が必要です。
7.最後に
肝臓がんは早期に発見し治療することで十分な治療効果が得られます。しかし、治療を行っても同部位の局所再発を認めたり、別の部位に新たな腫瘍が 出現したりすることもあります。3~6ヶ月に1回の割合で定期的な画像診断を行い3cm以下で腫瘍を見つけることが非常に重要です。また当科では局所治療 が不可能な場合でも腫瘍を栄養する動脈を塞栓し、さらに進行した肝臓がんに対してはリザーバーによる肝動注療法を施行することで良好な成績をあげていま す。
治療前の 超音波画像/黒くみえるのが肝臓がんです
治療中の 超音波画像/焼灼中に発生するバブルが白くみえます
治療前の CT/白く染まっている部位(→)が肝臓がんです
治療後の CT/白く染まっていた部位が黒く焼灼されています



