お酒と肝臓
11-3 消化器科(消化器内科)|准教授 土島睦
1.酒は百薬の長、度をこせば万病のもと
『酒は百薬の長』という名言は古代中国の史書「漢書」から出た言葉ですが、『過ぎたるは百薬の長ならず』が続きにあることはあまり知られていない ようです。ではどれくらいお酒を飲むと病気になるのでしょうか。その答は、日本酒3合以上を5年間飲み続けていると、肝臓に障害が生じてきます。日本酒1 合(180ml)には純アルコールで23gが含まれており、他の酒類に換算すると[表1]のとおりです。お酒の種類に関係なく、アルコールの摂取量が肝障 害のめやすになります。
[表1]日本酒1合に相当する酒類の量
- 日本酒:1合(180ml)=純アルコール23g
- ビール:大ビン1本(633ml)
- ウイスキー:ダブル1杯(60ml)
- 焼酎:0.6合(110ml)
2.お酒に強い人と弱い人は生まれつき
摂取したアルコールは肝臓で分解され、最終的に炭酸ガスと水になります。この分解過程においてアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)が働きますが、 この酵素の遺伝子には働きが強い型(ALDH2*1)と弱い型(ALDH2*2)があり、ALDH2*1を●、ALDH2*2を▲とすると、遺伝子の組み 合せが●●はお酒に強い人、●▲はお酒に弱い人(顔が赤くなってもいくらかは飲める人)、▲▲は全く飲めない人(下戸)となります。日本人の約45%は生 まれつき●▲か▲▲です。
3.二日酔いはどうして起こる
体重60kgの人が1時間で処理出来るアルコールの量は6.6gと言われています。したがって日本酒1合のアルコールを処理するには3時間かかる ことになり、日本酒2合であれば6時間程かかることになります。もちろん、お酒に弱い人や女性、ないし健康状態によってはもっと長い時間かかることがあり ます。アルコール代謝物を翌朝まで残すと二日酔いになってしまいます。このことからも1日の飲酒量は2合以内に抑えることが大切といえるでしょう。
4.アルコール性肝障害
今まで飲んできたお酒の総量によって脂肪肝、アルコール性肝炎、アルコール性肝線維症、肝硬変などとなります[表2]。脂肪肝は、アルコール性肝 障害の初期段階で、1日5合以上を1週間程飲み続けていると必ず起こりますが、しばらく禁酒するとすぐに治ります。アルコール性肝炎になると「体がだる い」、「熱っぽい」、「腹が痛い」、「尿が濃い」などの症状が出てきます。何度も肝炎を繰り返していると、肝臓自体が固くなる肝硬変になります。肝硬変に まで進行すると、禁酒をしても肝臓を元の状態に戻すことはできません。血液検査ではγ-GTP、GOT(AST)、GPT(ALT)の値を調べます。 γ-GTPが高い場合はイエローカード、GOTが高い場合はレッドカードと認識し、お酒を控え、定期的に内科を受診することが大切です。(”γ”は”ガン マ”と読みます。)
アルコール性肝障害の主な病型
- アルコール性脂肪肝:肝臓の中に中性脂肪が溜まってくる病気
- アルコール性肝炎:大酒を飲んだことで肝臓に炎症がおこる病気
- アルコール性肝線維症:肝臓に細い線維のスジが広がってくる病気
- アルコール性肝硬変:肝臓が固くなり、働きが低下してくる病気
5.正しいお酒の飲み方
アルコール性肝障害の治療は禁酒が原則です。アルコール性肝炎の場合でも禁酒して1ヶ月程で、血液検査が正常化し肝の働きも改善してきます。ただ し、検査結果がよくなったからと言って、すぐに飲酒してはいけません。元の健康な肝臓に戻るまでには、最低でも数ヶ月の禁酒が必要です。また、この時期に は特に、たんぱく質、ビタミン、ミネラルがたくさん含まれたバランスのよい食事をとるようにします。
アルコールと上手に付き合っていくには、1日に日本酒なら1~2合、ビールなら大瓶1~2本、ウイスキーならダブル1~2杯までが適量となりま す。1週間のうち、2日はアルコールを飲まない休肝日をつくって、肝臓を休ませることが大切です。また、すきっ腹では飲まずに、肝臓がアルコールを処理し やすいように適当なつまみを食べながら飲むようにします。一方、B型肝炎やC型肝炎の人は、お酒を飲むことで肝がんの発生率が高くなるので、禁酒を心がけ る必要があります。



