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肝胆膵領域の外科治療

35-2 消化器科(一般・消化器外科)

1.肝胆膵領域とは?

消化器系臓器のうち肝臓、胆嚢、胆管(胆嚢と胆管を胆道という。胆汁と膵液が十二指腸内に流れ出る部位を十二指腸乳頭部といい、一般にこれも胆道 に含まれる)、そして膵臓で構成されている領域を「肝胆膵領域」といいます。肝胆膵領域における代表的疾患には「がん」と「結石(胆石)」があります。こ の領域は解剖学的にも機能学的にも複雑な領域であり、がんの診断法や外科治療には多くの知識と経験が必要とされます。

2.肝臓がん

成人では肝臓がんの大部分(90%)が肝細胞がん(以下「肝がん」と記す)です。原因はいろいろありますが、日本ではその多くが(約90%)B型 またはC型肝炎ウイルスの持続感染によるものと考えられています。B型およびC型の慢性肝炎や肝硬変の人は、肝がんになりやすい高危険群者といえます。肝 がんの予防法にはまだ決め手がないのが現状であり、高危険群者に対する早期発見、早期治療が重要と考えられます。

1) 診断の方法

画像診断(腹部超音波検査、腹部CT、MRI検査、腹部血管造影検査など)と血液検査(AFPやPIVKA-IIなどの腫瘍マーカー)があり、ま た診断が困難な場合は肝臓の腫瘍組織を直接採取し診断する肝生検という方法もあります。肝がんの場合は自覚症状が出現した時には進行していることが多く、 早期発見、早期治療のためには肝がんの高危険群に属する人は日頃からの定期検査が非常に重要となります。

2) 治療法

治療の中心は、肝切除、肝動脈塞栓術、経皮的エタノール注入療法などになります。最近では経皮的エタノール注入療法に代わり、マイクロ波凝固療 法、ラジオ波焼灼療法が行われることもありますが、それらは。がんの大きさ、数、部位、肝機能の程度などを十分考慮した上で選択されます。そのほかに放射 線療法、化学療法(抗がん剤投与)がありますが、対象が限られ十分な効果は期待できません。

(1) 肝切除術

がん病巣を含め肝臓を部分的に切除摘出します。しかし、肝機能が著しく低下しているときには不可能な場合があります。

(2) 肝動脈塞栓術

がん病巣を養っている動脈を色々な方法で血行遮断し、がんを死滅させます。

(3) 経皮的エタノール注入療法

超音波装置を用いがん病巣に細い針を穿刺して、エタノールを注入し、がん細胞を死滅させる方法です。

(4) マイクロ波凝固療法、ラジオ波焼灼療法

最近注目され、当院でも盛んに採り入れている方法です。超音波装置を用いがん病巣にニードルという針を刺入しニードルの先端を中心に周囲のがん細 胞を焼灼する方法です。

3.胆嚢・胆管がん(胆道がん)

胆管は肝臓でつくった胆汁(消化液)を十二指腸まで導く管です。胆嚢は胆管の途中に胆管と合流して、胆汁を入れて貯めておく袋です。この胆管と胆 嚢を合わせて胆道と呼んでいます。この胆道にがんが発生すると胆管を閉塞し、黄疸が出現したり、肝機能障害を合併したりします。

1) 診断の方法

超音波検査、CT、MRI(核磁気共鳴画像)、PTC(経皮経肝胆管造影)、ERCP(内視鏡的逆行性胆管膵管造影)、血管造影などを行って、が んの存在部位、周囲組織への浸潤や他臓器への転移の程度を調べます。

2) 胆嚢がんに対する手術療法

最も根治的な治療法ですが、手術で根治できる割合が、胃がんや大腸がんに比べると低いのが現状です。

(1) 腹腔鏡下胆嚢摘出術

最も早期の胆嚢がんに行うこともあります。

(2) 拡大胆嚢摘出術

少し周囲に拡がった胆嚢がんに行われます。胆嚢以外に胆嚢に接した肝臓や、胆管、所属リンパ節を一緒に切除します。

(3) 肝右葉切除術

肝臓や肝門部に拡がったものなどに行います。

(4) 膵頭十二指腸切除術(膵の一部と十二指腸を切除する)

膵周囲リンパ節や膵内胆管に浸潤したものに対して行われます。

(5) 肝切除術+膵頭十二指腸切除術

肝臓への浸潤と膵周囲リンパ節や膵内胆管に浸潤したものに対して行われます。このような拡大手術は、術後の合併症発生頻度が高くなり、リスクも高 くなります。

3) 胆管癌に対する手術療法(最も根治的な治療法)
(1) 肝葉切除(肝臓の右側2区域か左側2区域を切除する)

肝臓より(肝門部胆管がん、上部胆管がん)のがんに対して行われます。

(2) 膵頭十二指腸切除術

膵臓より(中・下部胆管)のがんに対して行われます。切除ができれば長期生存する可能性もあるので、長時間に及ぶハイリスでも行う価値がありま す。

4.膵がん

膵臓は腹部の最も深いところにあり、しかも重要な血管や神経叢、十二指腸、胆管、胃、大腸などに隣接しているため治療が最も困難な臓器です。膵臓 は大きく頭部、体部、尾部と三つの部位に分けられ、それぞれに膵がんが発生した場合、症状、治療法が違ってきます。

1) 診断の方法

超音波検査、腹部CT検査やMRI(核磁気共鳴画像)、ERCP(内視鏡的胆管膵管造影)、PTCD(経皮経肝胆管ドレナージ)、血管造影などを 行い膵がんの確定診断をします。腫瘍マーカー(CEA,CA19-9,DUPAN-II,SPAN-Iなど)も測定し参考にします。

2) 膵がんに対する手術治療

膵がんは診断時にはすでに、がんが拡がりすぎていて根治切除の対象とはならないことが多く、切除できた場合でも顕微鏡レベルでは取り残しがあり根 治的な手術になっていない場合が多くほとんど再発、再燃をおこして2年以内に死亡する予後不良ながんです。よって外科療法だけでなく、放射線療法や抗がん 剤を使った化学療法を併用しますが、依然として現在でも充分な成績を上げていません。

(1) 膵頭十二指腸切除術

主に膵頭部がんに対して行われます。

(2) 膵体尾部切除術

主に膵体部や膵尾部にできたがんに対して行われます。

(3) 膵全摘術

膵の全域に拡がるがんの場合に行われますが、現在、膵臓全体を切除することはその障害の大きさに比べ利益は少ないのでほとんど行いません。

(4) 膵頭十二指腸切除術

主に膵頭部領域がん(膵頭部がん、中下部胆管がん、十二指腸乳頭部がん)に対して行われる手術方法で、膵頭部、十二指腸、胆管、胆嚢、胃を同時に 切除する方法ですが、当科で行っております再建方法は、金沢医科大学消化器外科独特の方法で、腸管に盲管(食餌の通過しない腸管)を造らない、最も生理的 な消化管ループになる様に再建しております。切除終了時に膵、肝側胆管、胃、小腸のそれぞれ切除断端が出来ます。再建は、膵と胃の後壁を吻合し、胃と小腸 を吻合し、最後に胆管と小腸をつなぎます。手術後の合併症はほとんどみられず、術後栄養状態も非常に良好です。

※胆石症に対しては腹腔鏡下胆嚢摘出術を数多く行っており、術後の合併症は殆どみられません。

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