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腹部重症感染症の治療

35-3 消化器科(一般・消化器外科)

1.腹部重症感染症とは?

腹部重症感染症とは、色々な原因により腹腔内に細菌などの病原体による炎症が生じ、その病巣から細菌や細菌の毒素が血液を介して全身に至り、色々 な臓器障害を招き、ついには多臓器不全に陥り死の転帰をとる著しく重篤で恐ろしい病態のことをいいます。

例えば、大腸穿孔(大腸に穴があく)により大便が腹腔内に撒き散らされて、汎発性腹膜炎という状態になります。腹腔内に出た便中の大腸菌などが腹 腔内に増加し、細菌や細菌の毒素が腹膜より吸収され全身に回り重篤な状態になる場合や、胆石が原因し、胆道に細菌が充満し、ついには胆道から血中に細菌や 毒素が入り込み重篤な状態になる急性閉塞性化膿性胆管炎などが代表として挙げられます。また、アルコールや胆石が原因となり、急性膵炎を発症し、そのなか でも膵臓が壊死を起こしてしまう重症急性膵炎といわれている病気も同様な状態に陥ります。

これらの疾患は、いずれも細菌による炎症、すなわち感染(化膿性炎症)が原因となり、その細菌達は大腸菌を代表とするグラム陰性桿菌といわれる細 菌達で、菌体の中にエンドトキシンといわれる毒素を持っています。これら細菌達やエンドトキシンに対する生体の防御反応として白血球やリンパ球などが体内 に存在する敵に対して攻撃を仕掛ける色々な兵隊や武器を動員し出動させます。これら兵隊や武器のなかにサイトカインといわれる物質があり、これらは生体の 防御のために迎撃に出向くのですが、数が多すぎると誤って、生体自らの肺、肝臓、腎臓、心臓、血液、脳神経などの重要臓器・器官を攻撃してしまい、ついに は多臓器不全を引き起こし死に至ってしまうのです。このような細菌などの微生物感染による高サイトカイン血症のことを敗血症といいます。

2.診断の方法

極めて迅速な診断が必要となり、それが早期治療につながります。時間との勝負となります。

1) 腹部所見

圧痛はもとより、腹部を圧迫した時より手を離したときが圧迫した時より痛い、すなわち反跳圧痛や力を入れていないのに腹壁の筋肉が板のように硬く なる筋性防御と呼ばれる所見がみられるようになります。

2) 全身状態

当然のごとく細菌による炎症ですから発熱がみられます。重症になると、血圧が下がりショック状態となり、血液が酸性になり、皮膚の色も蒼白にな り、熱も出なくなり、さらに意識状態も悪化します。

3) 血液検査

一般的に白血球増加が起こり、炎症物質の増加がみられます。極めて重篤になると、逆に白血球は減少してしまいます。これは細菌と戦う力が無くなっ てしまった事を意味します。臓器障害や臓器不全に陥っている時は各臓器機能を示す数値が変化します。たとえば肝障害が進むと黄疸が出現し、 AST(GOT)やALT(GPT)などが増加してきます。

4) 画像検査

レントゲン検査をはじめ、超音波検査、CTスキャン検査などを必要に応じて迅速に行います。

3.一般的治療法

診断がつき次第、直ちに緊急手術をはじめとする緊急処置を行います。

1) 大腸穿孔

穿孔した大腸を切除し、肛門側は盲端とし閉鎖し、口側断端は一時的な人工肛門とします(このような時は吻合しても離れてしまうため)。そして、十 分に腹腔内を洗浄します。

2) 急性閉塞性化膿性胆管炎

直ちに緊急胆道ドレナージ(超音波や内視鏡を用い胆管の内腔にチューブを挿入し、感染胆汁を排除します)。

3) 重症急性膵炎

膵臓に流れ込む動脈内にチューブを挿入し、膵炎に対する薬剤と細菌を死滅させる抗生物質を直接膵臓に注入(動注療法)を開始します。

4.特殊療法

金沢医科大学病院消化器外科では一般的治療に加え、さらに血中の細菌毒や多すぎるサイトカインを吸着除去する目的で急性血液浄化療法を積極的に導 入しており、救命率の向上を成し得ております。

1) エンドトキシンの吸着除去療法(PMX-DHP療法)

大腸菌などの感染により敗血症を合併しているような場合に行います。24時間ごとに2時間ずつ2回行います。この方法を全国に先駆けて導入し、全 国でも最も高い救命率を得ており、例として、大腸穿孔性敗血症における救命率ではPMX-DHP療法導入前が21%であったのに対し、導入後は75%にま で向上していることなどが挙げられます。

2) 持続的血液透析濾過・持続的血液濾過(CHDF・CHF)

血中に多すぎるサイトカインの除去を目的に持続的に専用カラムを用い血液を通し、サイトカインを吸着除去します。おもに重症急性膵炎の初期治療や 重症腹膜炎のPMX-DHP療法後の治療として用いています。

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