胎児出生前診断をめぐって
47-1 産科・婦人科|講師 高木弘明
1.出生前診断とは
先天異常は出生数の約1%に存在すると考えられています。外表奇形では口唇裂、口蓋裂、多指症、四肢奇形、鎖肛などが認められます。内臓奇形はし ばしば外表奇形に合併してみられ、心臓、中枢神経系(脳、脊髄)、泌尿生殖器系(腎臓、卵巣)、消化器系(食道、胃、腸管)などの異常があります。また、 染色体異常(18、21トリソミー)を認めることもあります。これらの中には現在の医療をもってしても治療困難で生後まもなく死亡する例や日常生活に大き な支障をきたす疾患も存在します。
出生前診断とは、母体内にいる胎児の状態を正確に把握することです。これにより、もっとも適した分娩時期の選択や分娩後の治療方針をきめることが 可能になり、胎児の生命予後にとって極めて重要なことです。
2.超音波画像診断
妊婦健診のさいに、妊婦さん全員に対して毎回おこなう検査です。
妊娠4週から12週までは、胎嚢(胎児の入っている袋)、胎児心拍、頭殿長(頭からお尻までの長さ)を測定します。妊娠8週ころの頭殿長により分 娩予定日を算出しています。妊娠13週から23週までは、大横径(頭蓋骨の横径)から発育状況を観察しています。妊娠24週以降から分娩に至るまでは、推 定体重を算出して、標準的な発育をしているか確認しています。
臍帯の過度の捻転(ねじれ)があると、子宮内胎児発育遅延、胎児仮死などの異常をおこすことがあります。胎児の頚部(くび)にからんでいると陣痛 のさいに胎児仮死の原因になることもあります。
羊水過多症の(通常よりも羊水量が多い)場合、胎児の食道閉鎖、胃の閉鎖などの上部消化管閉鎖が疑われます。
羊水過少症の(通常よりも羊水量が少ない)場合、胎児の腎機能低下、尿管の狭窄(せまくなっている)や閉鎖、膀胱障害などを認めることがありま す。
3.羊水による染色体分析
妊娠15週ころに超音波下で子宮内の羊水を採取し、その中に浮遊する胎児細胞を培養して染色体検査をおこないます。入院は不要です。検査結果は約 3~4週間後です。また、特定の染色体(18番、21番)を検査する場合には、FISH法を用いれば、3日で染色体異常の有無を確認できます。
本検査の適応は、(1) 両親のいずれかが転座保因者(2) 妊娠時年齢が35歳以上(3) 染色体異常児の出産既往者(4) 重篤な遺伝性疾患(5) 子宮内胎児発育遅延、羊水過少症、羊水過多症、胎児奇形を認めたときなどです。
4.超音波カラードプラ法による血流計測
胎盤機能不全(胎盤のはたらきが低下する)などで胎児が低酸素状態に陥ったときには、中大脳動脈の血流量は正常よりも著しく低下します。帝王切開 にて胎児を娩出し母体外で治療する必要があります。
多発性嚢胞腎や水腎症において腎動脈の血流計測から、腎機能を推定することが可能となり、出生後の予後診断に応用されています。
5.MRIによる画像診断
核磁気共鳴現象によって得られた信号をもとに画像描写します。母児共に影響はなく、入院は不要です。対象は脳脊髄疾患、胎児腹水、胸水などです。 先天性横隔膜ヘルニアの肺成熟を診断するさいに、肺と肝臓の信号比から算出した場合、生命予後ときわめて関連性があることが確認されています。

胎児水腎 症(左図:下行大動脈の血流波形右図:黒く描写されたところが水腎症)



