小児の食物アレルギー
21-1 小児医学科(小児科)|准教授 中村常之
1.近年増加傾向の食物アレルギー
ここ数年、小児科外来で食物アレルギーと診断されるお子さまが増えています。その理由として、診断方法の進歩もありますが、最近の食生活の影響に よるものも少なからずあると思われます。妊娠中や、授乳中のおかあさんの食事も関係しており、離乳食が始まっていないあかちゃんであっても血液検査(アレ ルギー検査)を行うと、すでに卵、小麦、大豆などに対するアレルギーを有しているケースが多くみられます。
食物アレルギーと診断される患児の、外来診察における症状の多くは皮膚症状であり、湿疹・蕁麻疹が主なものです。その他に下痢・嘔吐などの消化器 症状、喘鳴などの呼吸器症状のほか、発熱や肝機能障害を呈するケースもあり、場合によっては急激に血圧が低下し生命をおびやかすような危機状態に陥るアナ フィラキシーショックをきたし、救急搬送されることもあります。
2.診断方法
小児科では、食物アレルギーが強く疑われる場合、まず血液検査にて白血球分類の好酸球の比率、非特異的IgE抗体の値を確認し、アレルギー体質を みます。また特異的IgE抗体、特に卵白、ミルク、大豆、小麦、米など代表的な食物の抗体について精査をします。卵白やミルクのIgE抗体が高い場合には 卵黄及びオボムコイド(加熱しても変性しない成分)、ミルク中の各成分(カゼイン、βラクトグロブリン、αラクトアルブミン)による分析も行います。
しかし、上記検査は絶対的なものではありません。仮に陰性であっても、食物アレルギーの疑いが濃厚な場合、プリックテスト(皮膚反応)や便中好酸 球の存在を確認することにより更なる精査を行います。ただし、これらの検査には時間がかかるので、予約制で行っています。
3.治療
以上のような検査により食物アレルギーと診断したのち、治療を開始します。内服薬、外用剤(軟膏)、制限食が主な治療の柱となります。内服薬の代 表が抗アレルギー剤で、さまざまな種類があり、症例に応じて使い分けます。また軟膏にもステロイド剤、非ステロイド剤、保湿剤等があり、部位や症状にあわ せて選択し、使用法の細かい指導を行い、例えばステロイドによる副作用を家族に十分理解してもらった上で使用しています。
制限食については、以前のように、アレルギーを有している品目は全てだめと禁止するわけではなく、例えば卵白に反応している場合、オボムコイド (卵白の加熱しても変性しない成分)へのアレルギーを調べて、陰性ならば、しっかり加熱したものを与えるように指導します。また、年齢、月齢に応じた食事 制限を行っています。おおむね、1歳半までは消化機能が未熟で様々な食物を十分分解できないまま吸収してしまう事が多く、アレルギー反応を呈しやすくなり ます。したがって、食品や症状の程度によって異なりますが、離乳食が完了し、消化管が成熟するまでは比較的厳しく制限します。その後は検査の値を参考に二 次製品を少しずつ回転食(同じ食材が続かないように摂取)にて開始し、症状をみながら解除していきます。反応があまりに強く家での解除が危険な場合は外来 や入院の上、医師が付き添い、少しずつ食べさせ症状がでないか観察(経口負荷試験)した上で、食べても大丈夫かどうか判断します。
アレルギーをおこす食品は、患児にとっては栄養ではなく毒であるため制限するわけです。しかし、小児期の栄養は成長の過程でたいへん重要ですか ら、制限食には食べられない食品を除去するだけでなく、それに代わる代替食品が必要です。このため当科では多種食品にアレルギーがあり、制限食が難しい方 には栄養士による栄養指導を行っています。どんなものにアレルギーを起こす物質が含まれているのか、現在の食事内容がバランスのとれたものかどうかなどに 加え、各種代替食品の紹介など個々の症例にきめ細かく対応しています。
4.診療体制
当科では予約制で毎週金曜日にアレルギー外来(中村利美医師)を行っています。それ以外でも毎日の一般外来においてアレルギー疾患に対処していま す。診察後、血液検査を行い、必要に応じてアレルギー外来を受診していただくようにしています。



