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アルツハイマー型認知症にならないために

20-3 高齢医学科|教授 森本茂人

1.認知症とは

年をとると物の名前がすぐに思い出せず、「あれ」「これ」「それ」などの代名詞が多くなりますが、ほとんどは加齢に伴う生理的な現象で健忘と呼ば れ、日常生活に支障をきたすことはありません。しかし、何度も同じことを聞く、今摂った食事を忘れる、お金の勘定ができないなど、日常生活に支障をきたす ような知的機能低下がおこると、認知症と呼ばれます。認知症が進むと記憶障害に加え、物盗られ妄想、うつ状態、昼夜逆転、介護に対する拒否、徘徊、興奮状 態など、周辺症状よばれる言動を起こすようになります。認知症外来では、記憶や計算の力などを確かめる長谷川式簡易知能検査などの質問形式の検査でその有 無を診断し、CTやMRIなどの画像検査により脳の障害部分を確かめ、血液検査などにより内臓やホルモン、電解質の異常、ビタミン不足で起こってくる他の 認知症を除外します。これらを除外したものの大半は動脈硬化性認知症とアルツハイマー型認知症に分類されますが、後者では画像検査で両耳の奥上の脳の中心 に近い海馬(かいば)と呼ばれる部分の萎縮が特徴的です。この海馬は生涯の経験を言葉の形で記憶している部分で、健常な人では何かしようとするとき常に海 馬に蓄えられている過去の記憶と照合して、的確な言動を選び出しています。ところがアルツハイマー型老年期認知症の人では、規範として照合すべき記憶その ものが希薄となり、突拍子もない言動になってしまうのです。

2.認知症患者さんへの接し方

小さな子供もしかられてばかりいると人を非難する人に育ちます。認知症のご老人も突拍子のないこれら言動を非難されると、感情のしこりから周辺症 状と呼ばれる介護者にとって対応の難しい言動に走りがちです。子供には子供の世界があり、この世界を認められ、思いやりやはげましを受ければ、感謝するこ とを知り、自信を持った人に育ちます。認知症のご老人にも、過去の体験の記憶を失った特有の世界があり、この世界を認め、安心できる環境を作ることこそご 本人の協力を引き出せる秘訣です。大人の常識による「説得」よりも、本人の「納得」が大切なのです。

3.アルツハイマー型認知症の予防法

近年の大規模疫学調査は、アルツハイマー型認知症にならないための様々な知恵を教えてくれました。まず生活習慣としては運動、社交性、魚の摂取が 重要です。運動では毎日の散歩、ジョギング、ハイキングなどの定期的な運動習慣がある人では無い人に比べてアルツハイマー型認知症に陥る率は半減します。 またおしゃべり好き、団体やクラブの会員、世話好き、新聞をよく読む、手紙をよく書く、電話をよくかける人では、この確率は二分の一から十分の一と激減し ます。さらにお魚をよく食べる人では摂らない人に比べこの確率は三分の一程度と低下します。次に、中年期の生活習慣病の治療・予防は、動脈硬化性認知症の みならずアルツハイマー型認知症の予防にも極めて重要です。健常な人と比べ、高血圧例では4倍、糖尿病例では2倍、喫煙者では3倍、アルツハイマー型認知 症になる確率が増し、またこれら生活習慣病の確実な治療、あるいは禁煙によりこの確率は健常な人と同等に戻ることが知られています。毎日の運動を習慣付 け、社交好きで、お魚をよく摂り、さらには健康診断を積極的に受け、食塩過多や肥満が原因となる高血圧や糖尿病に陥らない普段の努力が、人生80年の長寿 の時代にアルツハイマー型認知症を予防する新しい教養といえるのです。金沢医科大学高齢医学科では月曜~金曜まで「もの忘れ外来」を開いており、認知症患 者さんの診断・治療は無論、認知症が心配な方に対する積極的な生活習慣指導、情報の提供を行っています。ご利用いただけましたら幸いです。

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