神経内視鏡手術
31-2 脳脊髄神経科(脳神経外科)|准教授 赤井卓也
1.神経内視鏡手術とは
脳神経外科領域においても、細径内視鏡を使用した手術が可能になりました。
神経内視鏡手術は、1)内視鏡を用いての手術(神経内視鏡手術)、2)内視鏡での観察の助けのもとに行う手術(神経内視鏡支援手術)があります。
内視鏡を用いることで、これまで開頭手術(頭蓋骨を大きくはずしての手術)を行っていた治療法に代わり、頭蓋骨に小孔をあけるだけで治療が可能に なりました。また水頭症(頭に水がたまる病気)のなかには、従来の脳室腹腔短絡術に代わり、神経内視鏡を用いて脳のなかにバイパスをつけることにより、短 絡管を留置せずに治療を行うことが可能となるものもあります。顕微鏡手術に際しても、内視鏡で同時に病気の部分により近づいて観察することで、安全・確実 な手術が可能となります。
2.神経内視鏡手術が有効な疾患と手術法
1) 神経内視鏡手術
水頭症
(頭の中に脳脊髄液という水がたまって頭痛、嘔吐、意識障害をおこす病気):頭蓋骨に小孔をあけて、そこから内視鏡を脳室(脳脊髄液がたまってい る部屋)にすすめ、脳室に小孔をあけることで、たまった脳脊髄液を本来の流れのところへ戻します。
脳出血
(脳の中や脳室内の出血のため、突然、意識障害や片麻痺となる病気):頭蓋骨に小孔をあけ、そこから出血している部分に内視鏡をすすめ、出血塊を 吸引除去します。また、出血源を内視鏡下にしらべて止血します。
脳腫瘍
(脳の中のできもので、徐々に大きくなるため、その場所によって麻痺、痴呆、頭痛、嘔吐などさまざまな症状が出る病気):脳室近くにできた腫瘍の 場合、脳室内に進めた内視鏡から腫瘍の一部分を摘出し、どのような腫瘍であるか診断します。水頭症治療と同時に行うこともあります。
クモ膜のう胞
(脳に生まれつきできた余分なふくろ状のもの。この中に脳脊髄液がたまることで、ふくろがまわりの脳を圧迫し、けいれんや頭痛、水頭症の原因とな る):頭蓋骨にあけた小孔から進めた神経内視鏡によりのう胞の壁を開窓することで、のう胞を開放します。これによりのう胞は縮小し、まわりの脳への圧迫が なくなり、症状を寛解させることができます。
2) 神経内視鏡支援手術
脳動脈瘤
(脳の血管にできた瘤、これが破裂するとクモ膜下出血になる):顕微鏡下に脳動脈瘤を手術する際、神経内視鏡を同時に用いることで、顕微鏡だけで は観察できない部分の観察が可能となります。
脳腫瘍
(特に脳の深部にできたできもの):顕微鏡下に腫瘍を摘出する際、脳のすきまから内視鏡をすすめてその部分を観察することで、顕微鏡だけでは観察 できない部分の観察が可能となります。
脊髄腫瘍
(脊髄にできたできもの、大きくなると両足の麻痺、しびれ、両手両足の麻痺しびれをおこす):顕微鏡下に腫瘍を摘出する際、腫瘍と神経の関係、癒 着の有無などを神経内視鏡で観察することで、より確実・安全な手術が可能となります。
顔面けいれん
(顔がかってにひきつれる病気)、三叉神経痛(発作的におこる顔面の痛み):けいれんや痛みの原因となる血管を顔面神経や三叉神経から顕微鏡下に 剥離する際に、内視鏡で神経の裏側を観察することが可能となります。
3.神経内視鏡手術の今後
神経内視鏡手術は、これまでの手術をより安全・確実に、また、より小さな切開で行う脳・脊髄の手術です。今後、新しい手術器具の開発により、本治 療法が有効となる疾患は増えていくことが予想されますが、現在はまだこの治療が有効な疾患は限られています。詳細につきましては、外来Aブロックの脳神経 外科を受診していただき、専門医にお尋ねください。



