人工内耳医療
41-2 耳鼻咽喉・頭頸科|教授 鈴鹿有子
1.人工内耳とは?
ヒトとしてのコミュニケーションに重要な聴覚を失った場合、あるいはこれに重大な障害をきたした場合、私たちは社会生活を営む上で大きなハンディ キャップを持つことになります。中等度の聴覚障害に対しては補聴器で補うことができますが、高度障害や聾に対してはこれまで手話や筆談による手段しかあり ませんでした。今から30数年前にアメリカで人工内耳という、耳の中に電極を埋め込み音を電気信号に変えて脳を刺激する方法が成功し、聴覚を失った人に聴 覚をよみがえらせる方法が可能になりました。今日までに人工内耳の手術は、世界で6万例以上、国内では3千例以上に行われ、多くの患者さまに音がよみがえ り、元気な社会生活をされています。
人工内耳システム(Cochlear社)

2.どのような人に適応があるのでしょうか?
成人の場合は、髄膜炎や突発性難聴など内耳の障害を起こした方が適応です。小児の場合は、先天聾に多く行われています。今では、生まれてすぐに聞 こえるかどうかのスクリーニング検査ができるようになりました。
人工内耳をつけると平均40dBの軽度難聴レベルまで回復し、周りの人との会話やテレビを見たり、また電話で話ができるようになります。
わが国の人工内耳の適応基準(日本耳鼻咽喉科学会1998)
小児例
- 2歳以上とする。ただし先天聾では就学期までに手術されるのが望ましい
- 両側とも100dB以上の高度難聴者で、かつ十分な観測期間、補聴器を装用しても音声による言語聴取、表出の面でその効果がほとんどみられな い場合
- リハビリテーションおよび教育のための専門のスタッフと施設が存在すること
成人例
- 両側とも90dB以上の高度難聴者で、かつ補聴器の装用効果がほとんどみられない場合
禁忌
- 画像(CT,MRI)で蝸牛に人工内耳が挿入できるスペースが確認できない場合
- 活動中の中耳炎、重度の精神障害、聴覚中枢の障害、その他の重篤な合併症など
附記
- プロモントリーテストの成績は参考資料にとどめる
- 先天聾の成人例は非使用者となる可能性があることを十分理解させておく必要がある
3.安全性、費用は?
コクレア社製の機器は、すでに20年の実績があり、2年後の故障率は0.05%です。多くの場合は部品交換などで対応できます。
スポーツも頭をぶつけたりしないかぎり安全です。
かかる費用は、人工内耳そのものは高いものですが、健康保険の適応があり患者さまの負担は非常に少なくなりました。詳しくは医療機関でご相談くだ さい。



