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熱傷と人工皮膚移植

37-2 形成外科|教授 川上重彦

1.熱傷の重傷度分類

熱傷とは、熱によって皮膚が損傷された状態をいいます。一般的には火傷とかヤケドなどとも呼称されています。熱傷の原因としては、熱湯をかぶっ た、テンプラ油がはねた、火事で火焔を浴びた、など様々なものがあり、日常生活の中で注意しなくてはいけない外傷(怪我)といえます。

熱傷の程度は大きく3つに分類されています。I度熱傷とは皮膚表面の損傷です。皮膚は赤くなりますが、生傷にはならないため、治療の対象にはなり ません。II度熱傷とは皮膚の中層までの損傷で水疱(水ぶくれ)が出来るのが特徴です。生傷になるため、傷が自然に治癒するには7日~14日程度かかりま す。治癒に10日以上かかりますと傷跡(瘢痕)が残ることもあります。III度熱傷とは皮膚の下層、さらには皮下組織に及ぶ損傷です。皮膚は灰白色から黒 色を呈します。傷の大きさにもよりますが、自然に治癒するまでには1ヵ月程度は要し、治癒後は瘢痕が残ります。

II度、III度熱傷の治療は、軟膏や創を覆う特殊なガーゼ類を使って自然治癒させる方法と皮膚移植(自己の皮膚)によって傷を閉鎖する方法があ ります。どちらを選択するかは、熱傷の範囲や深さなどから決められます。

2.熱傷による全身的な影響とその治療

熱傷が小範囲であれば、全身に影響は生じません。しかし、熱傷が広範囲となると全身に影響が及んで、死亡の原因にもなります。一般的には体の表面 の30%以上に熱傷(II度もしくはIII度)が生じると全身に影響が来ると言われます。また、成人では受傷した患者様の年齢と受傷した面積(体表面積) の和が100を越えると死亡に至る割合が高くなると言われています。例えば、70歳の方が40%の熱傷を受傷すると、その和は110となりますので、非常 に危険な、すなわち重症の熱傷ということができます。

熱傷による死亡の原因としては、以前は受傷した数日間に起こる全身性の熱傷ショックが多数を占めていましたが、近年ではショックに対する治療法が 進歩した結果、ショックによる死亡数は著しく減少しました。一方、熱傷を負った傷(熱傷創)に細菌が繁殖して、その細菌が全身に回って生じる敗血症による 死亡例が増えています。したがって、現代の熱傷治療は敗血症との闘いともいえます。敗血症を発症させないためには、その原因となる熱傷創での細菌の繁殖を 防止することです。すなわち、熱傷創に細菌が繁殖し始める前に皮膚移植によって熱傷創を治癒させることが重要な治療のポイントとなります。

金沢医科大学形成外科では、この観点から、重症熱傷を受傷した患者様に対して非常に早期から皮膚移植を行い、熱傷創を早く治癒させることで敗血症 の発症を防止し、重症熱傷を受傷した多くの患者様を救命してきました。しかし以下に述べる問題点があります。

3.熱傷治療における人工皮膚の役割

広範囲に熱傷を受傷した患者様にたいして皮膚移植を行う場合、移植のために採取する患者様自身の健常な皮膚に限りがあります。そのため、一回の手 術で十分な範囲を皮膚移植できないことになり、残った熱傷創に細菌が繁殖し敗血症が発症することになります。

このような敗血症の発症を防止するために人工皮膚が開発されました。人工皮膚を自家皮膚の代わりに熱傷創に移植し、細菌の繁殖を防止しようという ものです。永久的に自家皮膚の代わりとはなりませんので、1~2ヶ月の間に自家皮膚に置き換えていきます。すなわち、自家皮膚を採取した部位が治癒した ら、再度そこから皮膚を採取して移植、これを繰りかえしながら徐々に自家皮膚に代えていきます。人工皮膚にはシリコン膜とナイロン線維からできたものやシ リコン膜と動物のコラーゲンからできたもの、また人の皮膚から作成したものもあります。

金沢医科大学病院形成外科では、このような人工皮膚を用いて重症熱傷患者様の救命を行っています。また、最近では亡くなった人の皮膚を採取し、こ れを保存するスキンバンク制度も日本において充実してきました。熱傷患者様の皮膚移植における人工皮膚に代わるものとして普及し始めています。当病院にお いても1年以内に本制度を導入する予定です。

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