早期消化器がんの内視鏡治療

内視鏡科(教授) 伊藤 透

 

 1.消化器がんの早期発見

本邦の病死分類における第1位は「がん死」です。近年、肺がん、大腸(結腸・直腸)がんの割合が増加しており、部位別死亡率では、肺がんにつづき、胃がんが2位、大腸(結腸・直腸)がんが3位となっています。かつてがん死のトップであった胃がんは、罹患率・死亡率は低下したものの、その実数は減少していません。多額の費用と労力を要するがん検診でも、その必要性を再認識させられるデータが示されています。

がんの多くは進行しても症状がはっきりしないことが多く、まして早期がんでは、症状がほとんどありません。しかし、大学病院、政府、自治体等の啓蒙活動が奏効し、がんに対する一般の認識が高まるにつれ、がん検診の受診者数は増加してきました。また、医療機器の性能と医師の診断技術や治療技術が共に向上した結果、以前より早期のがん(粘膜表層にがんが限局し転移がほとんど認められない状態)が発見されるようになりました。

 

 2.消化器がんの内視鏡治療

北陸の中心的存在である当科では、これらの早期消化器がんの内視鏡治療を積極的に行っております。内視鏡治療の対象は、食道表在がん、胃、大腸等の早期病変ですが、開腹せずに治療が完了すれば、開腹手術より入院日数が短く済み、医療費も安価で、患者さんに優しい治療法といえます。

 

3.内視鏡治療の適応 

内視鏡治療には適応(治療条件)があります。その適応は、食道、胃、大腸等の病変が粘膜内に限局し、リンパ節転移の可能性がない病変に限られています。この条件を越える状態、すなわちリンパ節転移の可能性がある病変には、外科的手術が必要になります。この適応は、先達の消化器外科医が膨大な数の各部早期がんを手術し病理組織検査結果の検討を積み重ねてきた成果として認知されているものです。

 

4.内視鏡治療法の事例

それでは、食道表在がん、早期胃・大腸がんの中で、とくに早期胃がんを例に、本学病院が現在行っている内視鏡治療法について説明します。

まず、病気の状態を詳しく調べるために、通常の内視鏡検査に加え、NBI(Narrow Banding Image)+拡大内視鏡(粘膜表面構造や微少血管の観察が可能)、超音波内視鏡(病変の大きさや深さ、壁内や壁外の状態の観察が可能)、腹部CTスキャンなどを行い、内視鏡治療が可能かを検討します。内視鏡治療は通常内視鏡センターで行われますが、病変の部位や大きさなどの条件により、全身麻酔が必要となる場合があります。この場合は、心電図や呼吸機能検査を行い、全身麻酔が可能かどうかを確認します。

粘膜下層剥離術(ESD)は、フックナイフやITナイフ2といった高周波メスを用いて病変周囲の粘膜を切開し、粘膜下層を剥離し、病変を摘出する方法です。まず、色素散布や
NBI+拡大内視鏡所見を行い、正常と病変の境界を十分に観察後、病変周囲から5mm位の距離をとってマークをつけます。その周囲に粘性の高いヒアルロン酸や、血管収縮作用のあるボスミンを加えた生理食塩水を局注し、病変全体を持ち上げます。持ち上げることで切開を行う時の安全性を高めるのです。次に、フックナイフやITナイフ2でマークを指標に周囲の粘膜を切開します。全周に切開が終わったら、粘膜下層に生理食塩水の局注を追加しながら、病変下の粘膜下層の剥離を行います。切開や剥離の際、出血しないように、血管を焼灼しながら切開・剥離を行います。剥離が完全に終われば終了です。

治療時間は病変の大きさ、部位によって異なります。この剥離操作が最も難しく危険で1mm単位の操作を繰り返して行います。細心の注意を払って行いますが、出血、穿孔等の合併症が起こりうる操作です。出血が起これば止血しながら操作を進めますが、大量の出血や穿孔の場合は治療を中断して、合併症の治療を行わなければならないこともあります。また無事終了しても、時間が経過して同様な合併症が起こることもあり、いずれの場合も内視鏡で治療不可能と判断された場合は、開腹手術が必要な事もあります。しかし、合併症なく完全切除されれば(最終的には病理組織学的に判断します)、術後1週間程度で退院可能です。その後は、切除後の潰瘍に対するお薬を服用していただき、定期的に胃内視鏡検査などの検査を行い、潰瘍の治癒状態、がんの遺残がないかを厳重にチェックして行きます。

当科では、早期胃がん、食道表在がんに加え、早期大腸がんに対するESDも行っております。大腸は壁が薄く、屈曲やひだがあるため、胃や食道と比べ危険性が高く、限られた施設でしか行われていませんが、2010年より高度先進医療として、2012年4月より施設限定の保険診療として行っております。開腹手術と比べ低侵襲での治療が可能となり、入院期間の短縮、肉体的・精神的負担の軽減、QOL(Quality of Life; 生活の質)の向上が期待されます。

早期消化器がんが発見された患者さんは、内視鏡治療についてご相談ください。

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