多発性骨髄腫

血液・リウマチ膠原病科(特任教授 福島 俊洋

 

1. 多発性骨髄腫とは

細菌やウイルスなどの異物がわれわれの体の中に入ってきたとき、それを排除する働きが「免疫」です。免疫を担当する重要な蛋白に「抗体」があります。抗体は「免疫グロブリン」とも呼ばれ、主として骨髄に存在する「形質細胞」が作ります。この形質細胞が悪性化(がん化)したものが「多発性骨髄腫」です。毎年、人口10万人当たり2-3人が発症すると言われています。また、高齢の方におこりやすい病気として知られています。

 

2. 症状

異常な形質細胞が作った抗体(「M蛋白」と呼びます)は、異物を攻撃する能力がありません。したがって、感染症をおこしやすくなります。骨髄の中で異常な形質細胞が増えた分、正常な造血が抑えられるため、貧血を来しやすく、動悸や息切れを感じる、疲れやすい、顔色が悪いなどの症状が出ます。異常な形質細胞からは、骨を作る細胞の働きを抑え、かつ骨を壊す細胞を増やそうとする物質が出されるため、骨が溶けてもろくなり、しばしば骨折を起こします。特に背骨や腰の骨など、体重のかかりやすい場所は骨折を起こしやすく、患者さんは「背中や腰が痛い」と感じます。骨が溶けると血液中のカルシウム濃度が上がり、多尿、便秘、食欲不振、吐き気、意識障害などを起こしやすくなります。また、M蛋白が腎臓にたまることや血液中のカルシウム濃度が上がることにより「腎臓」の障害を来します。そのほか、血小板という出血を止める細胞の数が減ったり、M蛋白が血小板の表面に付着して働きを抑えるため、血が止まりにくくなることがあります。M蛋白が増えると血がドロドロになって血管の中を流れにくくなり、頭痛や目が見えにくいといった症状を引き起こすこともあります。

3. 治療

異常形質細胞が骨髄の細胞の10%を超え、M蛋白が3g以上あれば多発性骨髄腫と診断されます。ただし、それ以外の検査値異常や自覚症状がない場合は治療の必要はなく、3か月に1回程度の通院で経過観察します。貧血、骨の病変、腎臓の異常、血液中のカルシウム濃度が高いなど、多発性骨髄腫に関連する症状があれば抗がん剤と副腎皮質ステロイドによる治療を行います。

治療は65歳以上の方とそれ未満の方で異なります。これまで65歳以上では「メルファラン」と「プレドニゾロン」による「MP療法」が広く行われてきました。ただし、MP療法の3年生存率は50%程度で効果が十分とは言えませんでした。一方、65歳未満では「ビンクリスチン」「アドリアマシン」「デキサメタゾン」による「VAD療法」で病勢を抑えたうえで、患者さんご自身の造血幹細胞を移植する「自家造血幹細胞移植」を併用した「メルファランの大量療法」を行ってきました。

近年、「ボルテゾミブ」「サリドマイド」「レナリドミド」の3つの「新規薬剤」が保険診療の中で使用できるようになり、治療成績は飛躍的に向上しています。

65歳以上では、MP療法やデキサメタゾンに新規薬剤を加えた治療により、MP療法に比べて効率的にM蛋白を減らして症状が改善されること、生存期間が1年以上延長することが明らかにされています。65歳未満では、VAD療法にかわり、デキサメタゾンに新規薬剤を加えた治療を最初に行ったうえで自家造血幹細胞移植を併用したメルファランの大量療法を行うことが推奨されています。さらに自家造血幹細胞移植後にも新規薬剤を長期間用いることによって、再発しにくくなることも明らかにされています。

血縁の方、あるいは骨髄バンクや臍帯血バンクをとおして非血縁の方から造血幹細胞の提供を受ける「同種造血幹細胞移植」はあまり多くは行われていませんが、移植の前に体内に残っている異常形質細胞をできるだけ減らす強力な化学療法や全身放射線照射(「前処置」といいます)を緩やかにした「ミニ移植」の導入により、今後多発性骨髄腫においても積極的に行われるようになる可能性があります。

骨の病変や高カルシウム血症に用いる「ゾレドロン酸」という薬には骨を壊す細胞を抑える働きに加え、異常形質細胞を抑える働きもあることが知られており、上記の抗がん剤治療としばしば併用されています。

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