皮膚真菌学研究部門(ノバルティス ファーマ)
Division of Dermatomycology (Novartis Pharma)
石川県河北郡内灘町大学1-1,
Tel: 076-286-2211 (ext 3325)
Fax: 076-286-6369
部門紹介
1 寄附講座:
2 研究室:
3 スタッフ:
4 設備 :
5 研究内容:
6 研究業績:
1 寄附講座:
皮膚真菌学研究部門は、これまで皮膚科学教室の中で行って来た皮膚真菌症の臨床および病原真菌の基礎的研究をさらに拡充し、発展させるために、
ノバルティスファーマ株式会社(東京に本社を置き、医薬品の輸入、製造、販売を行っている資本金60億円の会社)の寄付によって総合医学研究所内に
設立された寄附講座です。
2 研究室:
病院本館3階の旧透析センター室を2004年3月にリフォームして、
2004年4月1日からスタートしました。
ここでは微生物の危険度分類2a以下の真菌を扱う事とし、2b以上の真菌はこれまでどおり環境皮膚科学教室の1研究室で扱う事としています。
(3a以上の真菌は扱わない予定です。)
これまで皮膚科医局にあった医真菌学関係の書籍、雑誌もこちらの研究室に引っ越しました。
3 スタッフ:
石崎 宏(客員教授、部門長)
望月 隆(教授、併任)
河崎昌子(講師、併任)
安澤数史(研究員)
4 設備 :
実験台、流し台、冷蔵庫、冷凍庫は病院で廃棄処分となった物を再利用しています。
新しくオートクレーブ、電気泳動装置、ゲル撮影装置、組織破壊装置(安井機械、マルチビーズショッカー)、微分干渉顕微鏡
(ニコン生物顕微鏡エクリプス80i)、バイオハザードキャビネットを購入しました。
5 研究内容:
1)深在性真菌症の一つであるスポロトリコーシスの原因菌、Sporothrix
schenckii の分子疫学。ミトコンドリアDNA(mtDNA)の制限酵素切断片長多型
(RFLP)を用いて、これまでに5大陸の全てをカバーする世界から収集したS.
schenckii の臨床分離株500株以上についてmtDNAのRFLP分析を行い、
30タイプの遺伝子型に分けられる事を報告しています。さらにこれらのタイプは地理的に特徴のある分布を示している事も明らかにしています。
2)白癬(みずむし、たむし等)の原因となる皮膚糸状菌の迅速同定法を次々と開発して報告しています。培養された皮膚糸状菌の分子生物学的手法
による迅速同定法や、爪からの菌の分離培養法、培養なしで検体からの菌の直接検出同定法の開発等を手がけています。
最近では格闘技選手の間で蔓延しているTrichophyton
tonsurans による頭部および体部白癬について、これを日本でも早期に発見し
学会等で警鐘を鳴らしてきました。同時に開業医、運動選手、運動部の顧問教員等に対する啓蒙活動もしています。
また遺伝子型を調べる事によってわが国で以前から分離されていたT.
tonsuransと最近爆発的に流行して来たT. tonsuransとは株が異なる事を
明らかにしています。
3)皮膚糸状菌の同定に際しては、同定しきれない菌株に遭遇する事は多くの皮膚科医および真菌学者が経験する事ですが、現在の分類体系の
混乱がその原因のひとつと思われるため、分子生物学的手法と従来の同定手法との矛盾を明らかにし、現在の分類体系を見直す作業を始めました。
4)わが国における黒色真菌症の主な原因菌であるFonsecaea
pedrosoi をmtDNA-RFLP、およびリボソームRNA(rRNA)遺伝子のITS領域のRFLP分析
によってタイプ分けし、世界的規模で分子疫学調査を行っています。さらに他の黒色真菌についてもmtDNA-RFLPおよびITS-RFLPのパターンを蓄積し、
全国から依頼のあった菌株を同定しています。
5)4月から新しくスタートした研究テーマでは、健常人およびカンジダ症患者の口腔内から分離されるCandida
albicans について遺伝子多型が見られるか
否かの検討を始めました。現在いくつかの遺伝子多型が検出されて来て、2004年秋に開催された日本医真菌学会に報告しました。今後さらに
このC. albicans 菌叢を明らかにし、その動向およびその意味等を調べていく予定です。この研究は2)の研究と同様に非常に臨床に密着した課題で、
本研究部門ならではのテーマです。
6 研究業績:
2004年発表論文および総説
1) Ishizaki H, Kawasaki M, et al: Mitochondrial
DNA analysis of Sporothrix schenckii from
China, Korea and Spain. Jpn J Med Mycol 45:
23-25, 2004.
2) 望月 隆、河崎昌子、田邉 洋、石崎 宏: 格闘技競技者に流行しているTrichophyton
tonsurans感染症 in特集 最近のトピックス2004 1.最近話題の皮膚疾患 臨床皮膚科 58:
15-19, 2004.
3) Tanabe H, Kawasaki M, Mochizuki T, Ishizaki
H: Species identification and strain typing
of Fonsecaea pedrosoi using ribosomal RNA
gene internal transcribed spacer region.
Jpn J Med Mycol 45: 105-112, 2004.
4) Kawasaki M, Mochizuki T, Ishizaki H, Fujihiro
M: Ascospore-derived isolate of Arthroderma
benhamiae with morphology suggestive of Trichophyton
verrucosum. Med Mycol 42: 223-228, 2004.
5) Watanabe S, Kawasaki M, Mochizuki T, Ishizaki
H: RFLP analysis of the internal transcribed
spacer regions of Sporothrix schenckii. Jpn
J Med Mycol 45: 165-175, 2004.
6) 望月 隆、石崎 宏:7.皮膚糸状菌症 in シリーズ/病原性真菌の今日的意味(14)化学療法の領域 20:
985-989, 2004.
7) 石崎 宏、河崎昌子、望月 隆:8.Sporotrichosis in
シリーズ/病原性真菌の今日的意味(15)化学療法の領域 20:
1135-1139, 2004.
8) 望月 隆、田邉 洋、河崎昌子、安澤数史:リボゾームRNA遺伝子のITS領域の分子型に基づく皮膚糸状菌の菌種同定の実績 日本皮膚科学会雑誌
114: 1763-1767, 2004.
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