先進医療研究部門へ

松井 忍
Shinobu Matsui

e-mail:matsui@kanazawa-med.ac.jp


[研究組織]

金沢医科大学総合医学研究所 先進医療研究部門 教授
            (医学部 循環制御学教室 併任)


[研究内容]

拡張型心筋症の一部が心筋膜受容体に対する自己免疫疾患であるとする更なる確証を得ること、および、拡張型心筋症患者血清中に存在する抗受容体抗体を選択的に除去することにより心筋症の発症・進展が抑えられるか否かを実験的に検証し、確証を得られれば、臨床応用を視野に入れて自己抗体吸着療法の開発を進めることを目的としている。

(研究成果)
1)
抗心筋膜受容体抗体吸着療法の開発:β1受容体の第2細胞外ループに対する自己抗体の選択的吸着体を開発し、選択的抗β1受容体抗体に対する吸着療法を検討した。予備実験では、一回の吸着実験(120分間)で約50%の抗体の吸着が可能との成績を得ている。この吸着体を用い、8ヶ月間β1ペプチド免疫にて作成した実験的自己免疫性心筋症家兎を用い、選択的自己抗体吸着実験を施行した。その結果、一回の120分間の体外循環による吸着で抗β1抗体は約50%吸着された。吸着3ヶ月後には有意な心肥大の退縮と心内腔の縮小と心機能の回復をみた。この結果は、抗心筋膜受容体抗体吸着療法が拡張型心筋症の治療法として有用であることを示唆した。

2)
自己免疫機序による心筋障害の発症メカニズムの解明:β1ペプチドで免疫された家兎血清の初代培養ラット心筋細胞に対する細胞障害作用を検討した。培養ラット新生児心筋細胞培養液中に免疫家兎血清を2日毎に添加することにより初期には心筋細胞拍動数増加が見られたが、数日後には逆に減少した。血清添加後数日後には光顕にて培養細胞質に多数の液胞が、電顕にて同様の2重膜や内部に細胞構造体を含んだ液胞が多数認められた。また、Oil Red-O染色にてこれらの培養心筋細胞質に多数の脂肪滴がみられた。一方、培養細胞数は免疫家兎血清添加数日後には減少し、かつ、死細胞の割合が増加した。この変化は、精製された抗β1受容体抗体やイソプロテレノールでは誘発されなかった。以上の成績は抗β1抗体による細胞障害はオートファジィーによる可能性が高いこと、および、抗体自体が直接心筋細胞にはたらくためでない可能性が示された。

[研究業績]

Transfer of immune components from rabbit autoimmune cardiomyopathy into severe combined immunodeficiency(SCID) mice induces cardiomyopathic changes. Autoimmunity 39:121-128, 2006

Specific removal of β1-adrenoceptor autoantibodies by immunoabsorption in rabbits with autoimmune cardiomyopathy improved cardiac structure and function.
J Mol Cell Cardiol
 41:78-85, 2006

Pathological importance of anti-G-protein coupled receptor autoantibodies.
Int J Cardiol 112:27-29, 2006

.