CONTENTS MENU


脳血管障害を理解していただくためには、脳はちょっと変わった臓器なんだということを理解していただく必要があります。

いくつかの特徴がありますがこれをまとめてみます。

1.再生しない。
皮膚や肝臓と違い、いったん死んでしまった脳細胞は再生しません。一度脳梗塞になってできてしまった傷は一生残ります。MRIやCTを行いますと10年前、20年前の脳梗塞でも見つけることができます。また一旦生じてしまった症状も基本的には元に戻りません。つまり手足の麻痺が出てしまった人は一生治らないことになります。ところがリハビリをがんばって行うと、私たちが予測した以上に麻痺が改善する人がいらっしゃることも事実です。脳の全てが分かっているわけではありません。我々が知っていることは脳のごく一部といっても過言ではありません。あきらめずにがんばりましょう。

2.栄養は酸素とブドウ糖のみで、細胞内に蓄えることができない。
脳には絶えず新鮮な血液が必要です。脳の中には酸素とブドウ糖の備蓄が無いため完全に血液が途絶えると、脳の神経はわずか4分で死んでしまう=脳梗塞になってしまいます。では本当に4分間血流が途絶えただけいで脳梗塞になってしまうのなら、ならどんなに治療を急いでも治らないことになるのでしょうか。脳の主要な血管の1本がつまってしまっても、ほとんどの場合隣の血管から血液が回りこんできます。この回り込んでくる血液(側副血行といいます)が多いか少ないかによって運命がきまるのです。一般に血流が途絶して3時間以内に再開通が得られれば、症状が劇的に改善することがあります。一昔前、佐藤首相は料亭で倒れましたが、脳卒中は動かしてはいけないという古い言い伝えがあったため、緊急搬送されることはありませんでした。これでは3時間以内に再開通させることはできません。小渕首相は直ちに搬送されたようですが、間に合わなかったようです。3時間で治療を終了させる為には、倒れてから病院に運ばれるまで30分、脳梗塞と診断できるまで1時間、治療の準備に30分と理想的に進んでも残り1時間しかありません。一刻も早い対応が必要です。1晩様子を見てからでは治るものも治りません。

3.脳の重さは1200から1400gで体重の2%を占めるにすぎないが、全酸素摂取量の20%を消費する。ブドウ糖は100〜150g消費する。
脳にはたくさんの血液が必要です。たくさんの血液を脳に送る為、頚動脈を流れる血液は、手足の動脈を流れる血液より早く流れます。頚動脈での血液は1秒間に50から100cm流れます。ところが動脈硬化症で頚動脈が細くなってしまった時には、ちょうどホースの先をつまんでつぶした時のように、勢いよく細くなった部分を流れます。金沢医科大学病院での記録は500cm/秒が最高です。頭に血液を送るだけではだめで、頭の血液を早く心臓に戻すことも必要です。手足の静脈には弁があって逆流しない構造になっていますが、脳の静脈には弁がありません。すなわち心臓より頭が高い状態では、脳の静脈血は重力によりストンと心臓に戻るのです。人類は、立位歩行ができるようになったため脳が発達しやすい環境になったのかもしれません。ちなみに脳が腫れている時に手っ取り早く脳圧を下げるには心臓より脳を高くすると効果があります。

4.脳脊髄液に保護されている⇒浮いている。
体の中で水に浮いている臓器は脳のほかにはありません。脳の周りにはくも膜と呼ばれる薄い膜があり、脳全体を覆っています。細胞が1層か2層の透けて見える薄い膜ですが水を通しません。この中を脳脊髄液が満たしており、この脳脊髄液に脳は浮いています。脳とくも膜の隙間をくも膜下空といいますが、太い動脈と静脈は全てこのくも膜下空に存在します。ですからこの脳脊髄液の中で出血が起こるとくも膜下出血となるのです。

5.脳自身は痛みを感じることができない。
脳は神経細胞のかたまりですが、自身には痛みを感じる細胞がありませ
ん。よって脳の細胞が少し死んでしまっても頭痛は起きないのです。
外来に頭痛で来られる患者様の中に、『血管が詰まったのではないか、
心配になって来たんや。』とおっしゃる方が結構いらっしゃいます。
心配要りません。詰まっても痛くは無いのです。




 ページのトップへ戻る



脳血管障害の詳細を検討してみましょう。

ところで脳血管障害と脳卒中はどう違うのでしょうか。

脳血管障害の代表は脳梗塞などの脳虚血と脳内出血、くも膜下出血などの頭蓋内出血があげられます。卒中を国語辞典で引いて見ますと『脳出血などのため突然倒れる発作性の症状(岩波辞書)』とあります。中風を引いて見ますと『脳出血などによって起こる半身不随、手足の麻痺などの症状(岩波辞書)』とあります。脳軟化症は『脳の血管が閉塞され、脳の一部に栄養障害が起こる病気(岩波辞書)』とあります。脳軟化症は病名ですので脳梗塞とほぼ一致しますが、脳卒中や中風はいずれも症状ですので、脳血管障害によって起こる症状のことを言っているのだと理解すればいいでしょう。

脳血管障害は大きくは出血と梗塞に分けられます。
脳梗塞を細かくみてみますと、

1.一過性脳虚血発作 
24時間以内、多くは5分以内症状消失が消失します。手足の麻痺や、片方の目が見えなくなるなどの症状が多いのですが、症状が無くなったからといって安心してはいけません。大きな脳梗塞の前触れであることが多いからです。症状が治っても直ぐ病院を受診してください。

2.ラクナ梗塞
楽な梗塞ではありません。脳の表面(くも膜下空)を走る太い動脈の詰まりではなく、動脈から枝分かれする髪の毛ほどの細い動脈(穿通枝と言います)がつまる小さな脳梗塞です。無症状である場合もありますが、場所によっては手足の麻痺がでたり、たくさん起こると脳血管性の認知症を起こすことがあります。予防のためには血圧の管理が重要です。

3.脳血栓症
動脈硬化によって血管内空がだんだんと細くなり、最終的に完全に閉塞し脳梗塞を起こします。たばこや糖尿病、高血圧、高脂血症が動脈硬化の原因です。徐々に細くなりますので、ある程度細くなった状態で発見されれば予防的に血管を広げ脳梗塞を予防することができます。

4.脳塞栓症
心臓や頚動脈に血液のかたまりができて、血流に乗って血液のかたまりが飛んでいって脳の血管を閉塞し脳梗塞をおこします。抗凝固剤や抗血小板剤の内服で血液が固まることを予防します。


脳梗塞は予防できる病気であるということができます。つまり血圧をきちんと管理し、脱水を避け、症状が出る前に心臓の検査を受け、薬を予防的に飲むことによって危険を回避することができます。




 ページのトップへ戻る



次に頭蓋内出血をみてみましょう。

1.くも膜下出血 
くも膜下空に存在する脳動脈に瘤ができて徐々に大きくなり破裂し、出血を起こします。働き盛りの人の突然死の原因の1つです。男性では40代、50代に発症のピークがありますが、女性ではピークはなく高齢者でも多いことが最近の研究で分かってきました。突然今まで経験したことがない頭痛が起こることが特徴です。バットで後頭部を殴られたようなとか、雷が後頭に落ちたようだと表現されます。治療は開頭クリッピング術とコイルを用いた瘤内塞栓術があげられます。当院ではどちらの手術も可能ですので、動脈瘤の大きさ、場所を考慮し患者様にあった方法で治療を行います。
破れる前に予防することはできないかと思われる方は多いでしょう。出血する前に動脈瘤を見つけることが、脳ドックの最大の目的と言っても過言ではありません。通常MRIの検査で動脈瘤の有無を検討しますが、2mmから3mmの大きさの瘤であればMRIで見つけることが可能です。破れる前の動脈瘤も開頭手術、瘤内塞栓術となりますが、年間の出血率は2%前後ですので経過を見るだけの患者様もいらっしゃいます。

2.高血圧性脳内出血
高血圧が原因で穿通枝と呼ばれる脳内の細い動脈が切れて起こる出血です被殻出血、視床出血、小脳出血が代表です。ある程度の大きさの血腫は、全身麻酔下で開頭血腫除去術を行う必要があります。予防は血圧の管理につきます。高血圧に対するよいお薬が普及するようになってから、高血圧性脳内出血は少なくなっています。しかし一旦飲みだした高血圧の薬を自分の判断でやめてしまって、脳出血で緊急搬送される方が昔から少なくないのです。血圧の薬は飲んでいても自覚的にはなんらいいことはありませんが、続けるようにしてください。




 ページのトップへ戻る



臨床へ 臨床-脳腫瘍へ 臨床-脳血管障害へ
臨床-脊椎脊髄疾患へ 臨床-小児脳神経外科へ 臨床-末梢神経疾患へ


金沢医科大学
脳神経外科学


TEL(代表): 076-286-2211
内線(医局): 6503
E-mail:
neurosur@kanazawa-med.ac.jp


金沢医科大学へ

金沢医科大学病院へ
Copyright(C) 2008 Department of Neurosurgery, Kanazawa Medical University. All rights reserved.